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9025 鴻池運輸

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鴻池運輸 Research Memo(8):2030年に向けた新ビジョンを発表


■中長期の成長戦略

鴻池運輸<9025>は創業140周年に当たる2021年3月期に売上高3,500億円、営業利益200億円を目標とする中期経営計画を発表し、その第1ステップとして、2016年3月期を初年度として2018年3月期に売上高3,000億円、営業利益150億円を目標として掲げてきた。しかし現実には、2018年3月期の予想は前述のようになっており、この中期経営計画目標達成は難しいと言える。

そこで同社では、2030年に向けて新ビジョンを発表した。以下がその概要であるが、ここで注目すべきは、この目標は単に株式市場での投資家だけに向けたものではなく、経営者自身、全社員、取引先等すべてのステークホルダーに対してのメッセージ(決意)でもある点だ。

1. 次のStageに向けて:新しいKONOIKEグループを目指して
同社では、株式を上場した2013年から2017年まででPBR1倍を達成した要因として「上場企業としてのセオリーの確認と実践」を進め、等身大の理解を促進してきた。具体的には、成長戦略の策定、選択と集中の明確化、株主への各種施策、財務成果の創出などを推し進めてきた。

ここから2030年に向けては、「経営ビジョンと経営戦略に基づくブランディング」が必要であるとし、「変革と創造、成長戦略の実践」を進めていく。具体策としては、非財務成果の創出、新しいビジネスモデルの構築、営業改革、マーケティングの推進、本社改革などを推し進めていく方針だ。

2. 成長への考え方
(1) 「バリュー」・「バリューアップ」・「グロース」
過去10年間(2007年3月期から2017年3月期)で、同社の売上高は2,036億円から2,583億円まで546億円増加し、営業利益は90億円から102億円まで12億円増加した。この間の年平均成長率は、売上高が2.4%、営業利益が1.2%にとどまっており、決して高いと言える結果ではなかった。そこで次のStageに向けては、以下のような考え方に基づいて成長の考え方を再定義し進める計画だ。
○バリュー(実体) :既存事業の延長線だが、保守的な見通しやマイナス要因も視野に入れる。
○バリューアップ :既存事業の深耕化やM&Aを進め、達成の確実性が高い成長・改善を行う。
○グロース :新規事業の開始など、ビジョンに基づいた大胆な「チャレンジ」を行う。

(2) 組織イメージ
以上のような考え方から、将来の事業ポートフォリオ及び組織イメージは、既存事業の成長や発展だけでなく、核となる新しい事業によって高い成長を達成する計画だ。

3. 2030年ビジョンに向かって
(1) 2030年までの考え方
そもそも何故2030年ビジョンなのかというと、2030年以降は、構造的な人手不足の深刻化や、製造・物流プロセスの技術的なイノベーションなどにより、これまでの同社の仕事の仕方では通用しなくなるとの危機感が根底にあるようだ。2030年までにリスクを取って機会を捉え、トライ&エラーを重ねながら、事業と経営を見直さなければ持続的に成長できないとの認識がある。そのためには投資も必要であり、投資に対するリターンすなわちROEとROICの向上を意識する必要がある。

(2) 2030年に向けたビジョン
本計画のビジョンを要約すると以下のようになる。

□2030年ビジョン
「KONOIKEの原点は現場」の文化の基、超一流の生産請負・超一流のサービス請負で社会に貢献し豊かな企業価値を創出する

□志向する方向とKPI
■2030年までに「10事業本部」以上を目指し事業を多角化する
?売上高  3,500~5,000億円規模
?売上高比率 物流:サービス=40:60
国内:海外  =80:20
?営業利益率 5.0%以上
?ROE 10%以上

(3) 経営軸
また、定性的な経営目標は以下のようになっている。
1. 経営理念
KONOIKEグループは、高い品質のサービスを提供し、世界の人々の幸福と安全で安心な社会の実現に役立つプロフェショナル集団を目指します
2. ミッション
安全・品質を担保し、社会の生産性向上に貢献する
3. ビジョン
「KONOIKEの原点は現場」の文化の基、超一流の生産請負・超一流のサービス請負で社会に貢献し豊かな企業価値を創出する
4. ドメイン
インフラ(鉄鋼エンジ、空港など)・食品・医療・衣料・住宅の分野
5. 経営方針
1)企業価値向上の3つの具体策
(1)成長戦略の明示とその実現(2)資本の効率化(3)ガバナンスの強化
2)K-styleの追究「KONOIKEの原点は現場」
同社の顧客価値である「安全と品質」「生産性向上」を基盤とし、「ビジネスモデルとしての新複合ソリューション」を通じて持続的な成長を追究する。

(4) ステークホルダーとの関係
同社では、主要なステークホルダーである株主、社員、得意先(顧客)、地域社会と会社は表裏一体の関係であると考えており、これらステークホルダーとは均等かつ継続的に向き合っていく方針だ。言い換えれば、「ステークホルダーへの貢献なくして会社の成長はなく、会社の発展・成長なくしてステークホルダーへの貢献はない」との考え方が新ビジョンの基本である。

4. 企業価値向上に向けた具体的取り組み
(1) 間接部門の生産性向上
同社では企業価値向上のための重要な施策の1つとして、間接部門の生産性向上を挙げている。そのためにまず、スピード感のある本社を実現する。本社部門における事務処理の生産性を向上と迅速化は本社改革の1つとして急務であり、これを確実に実行していく。迅速に売上高・損益を把握することで、次に打つべき手が打てるため、経営全体がスピードアップされる。

(2) 管理会計制度の再構築1:ROIC経営の導入
変化する環境(ニーズ、競合、社会、テクノロジー)に対応するため、リソースをいかに強くするかが重要な経営課題であるが、その実現のために「見える資本」だけでなく「見えない資本」も生かす。

そのため、従来の利益量を計る管理会計制度に加え、ROIC(Return on Invested Capital=投下資本利益率)を意識した経営を行う。具体的には、新規投資案件の評価(ROICに見合っているか)、事業本部別ROIC評価により、成長と資本効率の両立ができるよう資源配分する。

また、グループ全体のリソース配分適正化のために、見える資本(稼働率向上、資産集約等)だけでなく、見えない資本(人材、ノウハウ等強みの源泉)へも投資を行う。さらにリソースの適切な入れ替えも行う。

(3) 管理会計制度の再構築2:販管費(調整額)の配賦基準の見直し
企業価値向上のため、各事業単位の実力を可能な限り見える化して把握する。例えば、セグメント利益の合計額に対する「調整額」の割合は、2015年3月期36.3%、2016年3月期32.8%、2017年3月期34.9%に上っているが、この「調整額」の配賦基準を見直す。これにより共通費の存在を意識した事業経営を進め、同社グループ全体として採算が低下するリスクを避ける。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《MH》

 提供:フィスコ

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