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8424 芙蓉総合リース

東証P
13,590円
前日比
+185
+1.38%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
9.5 0.96 2.87 9.19
時価総額 4,116億円
決算発表予定日

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芙蓉リース Research Memo(3):事業本来の業績の伸びを示す差引利益は順調に拡大


■決算動向

(1)業績を見るポイント

芙蓉総合リース<8424>の売上高は、約85%を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入や営業貸付による受取利息などによって構成されている。売上高は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。なお、「差引利益」は、「営業資産残高」と「資産粗利率」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。

一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きをみるのが最も適していると考えられる。

※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。

(2)過去の業績推移

過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産(特にリース営業資産)」の積み上げに伴って概ね右肩上がりに推移してきた。一方、「差引利益」は2013年3月期から2014年3月期にかけて一旦低下傾向をたどったが、2015年3月期以降は増益基調に転じている。なお、「差引利益」の落ち込みは、競争激化によるリース料率の引き下げに伴う「資産粗利率」の低下によるが、「営業資産残高」の積み上げと「資産粗利率」の改善により回復を図っている。「資産粗利率」の改善は、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大が寄与したものとみられる。

一方、費用面を見ると、「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。

また、有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%水準はリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。

ROAは1.4%の水準を維持してきた。一方、資本効率を示すROEは低下傾向にあったが、2016年3月期からは改善の兆しがみられる。

営業キャッシュフローはマイナスの状況が続いており、特に直近ではマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げてきたことが要因であり、同社の成長性を反映したものとみるのが妥当である。

(3) 2017年3月期上期決算の概要

2017年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比1.4%減の2,448億円、営業利益が同2.6%増の141億円、経常利益が同5.4%減の156億円、親会社株主に帰属する純利益が同0.5%増の102億円となった。前年同期に一括計上型案件があったことの反動によりわずかに減収となったものの、事業本来の業績の伸びを示す「差引利益」は同3.8%増の306億円と順調に拡大するとともに、営業利益及び親会社株主に帰属する純利益も増益を確保した。通期予想に対する進捗率も高い水準に達しており、上期業績は好調に推移したと評価してよいだろう。

契約実行高が前年同期比11.4%増の3,752億円と大きく増加するとともに、営業資産残高も前期末比4.2%増の1兆9,412億円に拡大したことが業績の伸び(差引利益の増加)に寄与した。特に、主力のリース営業資産が大幅に拡大している。物件別リース契約実行高で見ると、ボリュームの大きい「情報・事務用機器」が堅調に推移する一方、注力する「輸送用機器(航空機等)」及び「建物等(不動産リース)」が大きく増加した。また、収益性(リースの資産粗利率)についても、マイナス金利政策の影響等を受けて金利競争が厳しくなるなかで、ソリューション提案等により横ばいを維持している。

損益面では、航空機リース等に伴う外貨調達により資金原価が増加したことに加えて、人件費及び物件費の増加等により販管費も拡大したが、「差引利益」の増加により吸収することで営業増益を確保した。ただ、経常利益が減益となったのは、貸倒関連費用における戻入額の減少や受取配当金の減少、為替差損の計上等によるものである。

財務面では、営業資産の拡大により総資産が前期末比3.0%増の2兆1,763億円に増加した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同2.1%増の2,124億円に増加したことから自己資本比率は9.8%とほぼ横ばいで推移した。また、有利子負債は、営業資産残高の拡大に伴って同4.5%増の1兆7,549億円に増加したが、長短比率は60.3%(前期末は53.4%)に上昇しており財務の安定性は維持されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《YF》

 提供:フィスコ

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