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6927 ヘリオスTH

東証S
522円
前日比
-2
-0.38%
PTS
524円
22:47 05/10
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.2 0.59 2.30 263
時価総額 119億円
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ヘリオステクノ Research Memo(4):リードテックをグループ会社化しシナジーを創出


■事業部門別動向

(2)製造装置事業

a)事業の概要と業績動向
ヘリオス テクノ ホールディング<6927>の製造装置事業は事業子会社のナカンテクノ(株)が行っている事業だ。ナカンテクノはフレキソ印刷やオフセット印刷、インクジェットプリンターなどに関する技術を有しているが、具体的な製品としては液晶パネルの製造装置が主体となっている。

代表的製品はフレキソ印刷技術を利用した配向膜製造装置だ。配向膜製造装置にはフレキソ印刷技術ベースのものとインクジェットプリンターの技術によるものの2つのタイプがあるが、ナカンテクノはフレキソ印刷機タイプの配向膜製造装置の唯一のメーカーだ。フレキソ印刷機タイプはマザーガラスサイズでG8.5(8.5世代)までが限界とされており、同社の出荷する装置も現状はG8.5が中心となっている。液晶パネル製造現場の最先端ではG10.5へと世代が進んでいるが、同社にとってのメイン市場である中国ではG8.5サイズへのニーズも根強い模様だ。同社はG10.5対応を目指してインクジェット方式によるPI印刷機の開発も進めている。

製造装置事業のサブセグメントのもう1つはHRP(High Resolution Printer、高精細印刷機)だ。インクジェット方式やグラビア印刷方式など、ベースとなる印刷技術は様々なものを活用しながら、高精細印刷を目的とする装置だ。用途は潜在的には幅広いが、特に有機ELや曲面液晶パネルの製造等で活きる技術と期待されている。

製造装置事業には、製品ではないが“プラント”というサブセグメントがある。これは中古の液晶パネル製造装置の仲介・搬送・移設を行う事業だ。中国では世代遅れの製造装置を安く購入し、それで液晶パネルの生産コストを下げるというニーズが根強い。同社は設備の製造のみならず設置においても技術力があり、また、人的ネットワークを生かして中国企業相手の商取引にも通じていることから、この事業に進出した。

サブセグメント中の“その他”は、過去に納入した製造装置に対する消耗品の供給や、改修・改良工事、保守・メンテナンスなどだ。同社の製造装置の累計販売台数は50台を大きく超えてきており、“その他”売上高もここ数年は増加基調にある。一般的に、改修工事や保守・メンテナンスは利益率も高く、中期的には重要な収益源に成長する可能性があると弊社では考えている。前述のように、2017年3月期第2四半期においては、台南地震で被害を受けた設備の復旧工事を受注しており、その売上高もここに含まれている。

2017年3月期からは、検査装置事業が製造装置事業に統合された。検査装置事業は技術者派遣など人材サービス事業を行う事業子会社(株)日本技術センターが手掛けている事業だ。現状は、検査装置の製造ではなく液晶カラーフィルター露光装置用光源ユニット(MLS)の筐体の製造と、そこに光源を組み合わせてユニット化する作業が業務内容となっており、製造装置事業と一本化することが合理的という判断から統合に至った。

製造装置事業の収益は着実に拡大してきている。2017年3月期第2四半期は売上高5,792百万円(前年同期比46.3%増)、営業利益1,174百万円(同32.1%増)と大幅な増収増益となった。配向膜製造装置の納入が順調に進んだほか、中古装置移設案件も計画どおりに売上計上が進んだ。加えて台南地震の復旧工事が入ったことで計画よりも収益が膨らんだ。今期は第2四半期に納入が集中する計画となっているため、下期の収益は第2四半期からは減収減益となる見通しだ。また前年同期比較でも、2016年3月期下期には100億円を超える大型の中古装置移設案件があったため、やはり減収となる見通しだ。こうした特殊な案件を除いて、通期ベースで見れば2017年3月期は順調な年と言えるだろう。

b)トピックスと今後の成長戦略
同社の製造装置事業は前述のように、配向膜製造装置、液晶カラーフィルター露光装置用光源ユニットなど、液晶パネル製造装置が主体となっている。液晶パネル製造ラインの設備投資は特に中国において活発な状況にあり、2019年3月期までは高水準の装置需要が続き、同社はその恩恵を享受できると期待される。

一方、2020年3月期以降は液晶パネルの設備投資が減少する見通しだが、液晶パネル製造装置の落ち込みを新製品でカバーできる可能性が出てきた。

同社は配向膜製造装置に続く新型装置としてHRPを開発してきたが、その市場が拡大する可能性が出てきている。背景にあるのは有機ELだ。有機ELの特長の1つに、曲面を生かしたデザイン性の高いディスプレイの実現がある。この曲面がHRPの需要を押し上げるというシナリオだ。背景としては、曲面上に物質を均一の厚みでコーティングすることの難易度が高いということがある。特にコーティングの厚みが薄いほど難易度は高くなる。同社のHRPはそれを可能とした機械の1つということだ。

曲面ディスプレイを活用した市場としては、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器のほかに、自動車の運転席周りがある。サイドミラーレス車では運転席周りに今よりも多数の表示デバイス(液晶パネルや有機ELパネルなど)が使用される見込みだが、視認性やデザイン性の観点から曲面が多用されるのは想像に難くない。他にも曲面ディスプレイの普及で新たな市場が登場する可能性もある。

なお、有機ELに対抗して液晶パネルでも曲面液晶の研究は進んでおり、どちらが市場において優勢を占めるかは現状では定かではない。しかしながら、同社は、液晶と有機ELの勢力争いに影響されることなく、曲面コーティングのニーズを取り込めると弊社では考えている。

2017年3月期のもう1つのトピックスとして、ナカンテクノによる(株)リードテックの子会社化(同社からは孫会社化)がある。リードテックは福島県いわき市に本拠を置く年商560百万円(2015年9月期実績)の中小企業であるが、ナカンテクノの液晶製造装置の製作や中古装置の移設・据付作業において協力してきたほか、自社でもインクジェット印刷機などの製造を行っている企業だ。ナカンテクノは将来の事業拡大を見据えてリードテックと人材資源やノウハウを共有することがより効果的と考えて、株式取得に踏み切った。

弊社ではリードテックのグループ会社化は、同社の生産能力・施工能力の増強という意味では非常に重要な意味があると考えている。同社は配向膜製造装置で高水準の受注残を抱えているほか、HRPも本格的量産に移行しようとしている。また、既納入設備への保守・メンテナスサービスも需要が拡大しつつある。そうした状況で人的資源の確保は急務だったが、同社の装置や業務に熟練した技術者を一気に増やすのは、通常の採用活動では困難だ。リードテックには約20人の技術者を抱えており、子会社することで人材確保の問題を一気に解決することができたと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《TN》

 提供:フィスコ

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