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2016年06月29日19時00分

中村潤一の相場スクランブル 「再生か瓦解か 日本の株価未来図」


株式経済新聞 副編集長 中村潤一

●「恒産なくして恒心なし」EUのジレンマ

 万物を助け育てながら水は高きから低きに流れる。欧州連合(EU)域内でドイツに次いで経済規模の大きい英国は高みにある水といってよいでしょう。金融市場において一大イベントドリブンとなった6月23日の英国民投票。もし人工知能(AI)ならば、高みにあるがゆえ見えにくいけれど、今手にしている利益を総合的かつ正当に評価して、「残留」に1票を投じたはずです。しかし、人間の脳は合理より感情が優先するということが往々にしてあります。

 英国の衝撃的なEU離脱決定は、僅差のようにみえて結果的にロンドン・シティではなく地方の高齢者が国の針路を決めた格好となり、同時にそれが世界の株式市場の時価総額を一瞬にして数百兆円吹き飛ばしてしまうという現実を引き起こしました。

 孟子の故事を引けば「恒産なくして恒心なし」という言葉がありますが、安定した生活基盤がないと人心もすさんでしまうというのは避けられない原理であって、EUの構造的な難しさは、まさにここにあると思われます。欧州経済圏の混迷と官僚的体制に対する不満、EUへの分担金負担への不公平感。そして移民が医療をはじめ公共サービスを圧迫することへの不安。不確実性の高まりという漠然とした悪材料は、何も英国が引き金となったという話ではなく、今に始まったことではないのです。

●シルバーデモクラシーとアベノミクス

 英国民投票に反映されたシルバーデモクラシー(高齢者の利益追求に若年層が犠牲となる構図)は日本でも全く同じ状況にあり、これを他山の石とするのであれば、安倍政権の描く成長戦略に期待するしかないところです。しかし株式市場に目を向ければ、安倍政権に対する外国人投資家の評価は以前と比べ明らかにトーンダウンしており、これは裁定買い残のボリュームの減少にも反映されています。

 アベノミクス相場の起点となった2012年12月に日経平均株価は月足ベースで24カ月移動平均線を突破、昨年8~9月のチャイナショックではこのサポートラインで奇跡的に踏みとどまりましたが、今年2月に完全に下抜けた格好となっています。2016年は、既にアベノミクス相場が終焉したあとのトレンドを我々は追っている可能性が高いのです。引き潮にあるとはいえ、外国人投資家の売買シェアは依然として市場全体の7割を占めています。頼みの買い主体であった彼らの日本株に対する先高期待が剥落している現状では、アベノミクスの定義から外れた新たな起爆剤がなければ、相場のトレンドは変わらないということを示唆しています。

●買い溜める好機、1万7000円台で売り支度

 今後の見通しとしては、日経平均は滞留出来高でみると1万6000円台後半と1万8000円手前で相当水準の商いをこなしており、ここが上値の関門として意識されそうです。最初のハードルは比較的早い時期にクリアできると考えていますが、2つめのハードルのクリア、すなわち1万8000円台への復帰は、年内は困難ではないかという印象を持っています。昨年の8~9月の急落相場がひと息ついた後、市場関係者は「これはイレギュラーで1万8000円台にはすぐ戻る」という見立てが多かったと記憶していますが、実際、相場はその通りになり、そこを通過点に12月には2万円台に片手がかかる場面もありました。

 ところが、年明け早々の1万8000円割れは、下げの背景が不透明なままの状態で戻しきれませんでした。売り方のショートカバーに続く実需買いが伴わず、この心理的なフシ目をクリアできなかったことが、薄氷の24カ月移動平均線を踏み抜いたタイミングと一致、長期戻り売り相場への移行を決定づけました。したがって、1万7000円台に乗せてくる場面があれば、売り支度と考えておくのが実践的な対応であると考えます。

●ブレグジットは真の危機ではない

 ただ、前回の「ソロス VS ヘリコプターマネー」でも触れましたが、世界的な過剰流動性が強力な車輪止めの役割を果たし、リーマン・ショックのようなパニックには至らないとみています。短期的にみれば、日経平均1万5000円ラインは明らかに売られ過ぎの水準でしょう。ブレグジットの副作用として「ポンド安、ユーロ安、そして結果的に円高」という分かりやすい背景が下げを助長したとはいえ、ITバブル崩壊後の2000年4月以来16年ぶりの下げ幅に直面したのは、企業収益実態へのデメリットとはかけ離れた話であり、為替にリンクさせた売り仕掛けが主導したことは明白。改めて急激な円高局面に遭遇するようなことがあれば話は別ですが、しばらくはブレグジットを囮(おとり)とした売り方の“回収”の時間帯に入りそうです。基本的に、1万5000~6000円ゾーンは時間を分散して買い向かうスタンスで報われる可能性が高いと思います。

 ジョージ・ソロス氏は、かつてイングランド銀行を相手にポンド売りを仕掛け勝利し名を馳せた過去があります。しかしその後の英国経済は、欧州為替相場メカニズム(ERM)を脱退し変動相場制へと移行、ポンド安を背景とした景気拡大局面を迎えるというオチがついているのです。英国経済がこれから長期にわたり低迷するとは言い切れません。ブレグジットは世界連鎖株安の導火線のような見方も示されていますが、不確実性の高まりは続いても、政策対応で共存していくことが十分可能と考えています。

 注意しなければいけないのは中国。不良債権問題自体は世界から隔離されサブプライム問題のような感染力はありませんが、投資主導で膨らんだ爆食経済の需要急減が波乱につながる気配があります。これについては継続的な観測が必要でしょう。

●大成建、LINK&M、ラウンドワンの強さ光る

 個別銘柄としては、当面は為替の影響を受けにくい内需株が主軸。参院選後の財政出動もにらみ、大成建設 <1801> や西松建設 <1820> に着目。消費関連では材料株としての特性を持つラウンドワン <4680> が強い足で注目されます。

 また、ここしばらく音沙汰のなかった低位株にも順番が回ってくるタイミングです。そのなか、リンクアンドモチベーション <2170> に勢いがあり要マーク。また、逆張り対象としては大京 <8840> に妙味が感じられます。

 輸出セクターでは欧州関連の範疇にもかかわらず、異彩の強さをみせるソニー <6758> は継続マークしたい銘柄。有機EL向けにプラズマエッチング装置需要を囲い込むワイエイシイ <6298> もポストVテクノロジーの一角として目が離せません。

(6月29日記、隔週水曜日掲載)


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