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【特集】「英EU離脱と金融市場の行方」 藤代宏一氏に聞きました! <直撃Q&A>

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 23日に実施された英国の国民投票は、離脱派が勝利を収め「Brexit(英国のEU離脱)」が現実となった。この結果を受け、世界の金融市場は大波乱となったが、今後の展開をどうみれば良いのか。第一生命経済研究所の主任エコノミスト、藤代宏一氏にその見通しを聞いた。

●藤代宏一氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

Q1 英国の国民投票の結果は欧州連合(EU)離脱となり市場は大混乱に陥りました。08年のリーマン・ショックなどと比べ大きな違いは何でしょうか

 リーマン・ショックの際は、全てが悪い方向にいくことが明確に分かり、半年ぐらいかけて底値を探った。しかし、Brexitは、いつアク抜けするかが見えない。この点が、市場の不安心理をあおっている点だと思う。Brexitでは、ただちに悪影響が出るわけではない。英国は最低でも2年間はEUに残る。その一方、状況次第で英国解体といった方向に話が進んでいく可能性もある。不幸中の幸いとも言えるのは、企業は今後の展開が読めないために、英国撤退などといった行動に出にくいことだ。一方、海外から英国への投資は手控えられるだろう。

Q2 スケジュール上の次のポイントは

 キャメロン首相は10月までに辞任する意向を表明しており、今後、EU離脱の交渉を進めていくためには首相を決めないといけない。離脱派をけん引したジョンソン前ロンドン市長を有力視する見方もあるが、英保守党の主流は残留派であり、同氏が首相となった場合、保守党の分裂も起こりかねない。一方で、英スコットランドなどでは独立に向けた動きも出ている。今後も日々、飛び込んでくるニュースに一喜一憂する展開が続く可能性はある。先行きは、再投票や議会解散による総選挙などを含め、あらゆる選択肢は排除できないと思う。

Q3 日米欧の金融当局はどう動きそうですか

 イングランド銀行(BOE)は、次の会合で少なくとも0.25%の利下げを実施しそうだ。先行きゼロ金利と量的緩和の復活も予想される。欧州中央銀行(ECB)は9月にも量的緩和の拡大が予想される。一方、米国は年内の利上げの可能性はなくなってきた。日銀も手詰まり感が強い。7月の決定会合でもし追加緩和があるとしてもETF買い入れ枠拡大程度ではないか。

Q4 まだまだ、市場はBrexit不安につきあわざるを得ない?

 不透明感は残る。ただ、7月8日の米雇用統計あたりからは、市場の関心はBrexitだけではなく、徐々に米国経済へと移っていくことも予想される。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。


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