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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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4665 ダスキン

東証P
3,291.0円
前日比
-10.0
-0.30%
PTS
3,297.8円
10:15 05/08
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
36.0 1.04 2.98 0.59
時価総額 1,646億円
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決算発表予定日

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ナック Research Memo(2):フランチャイズ企業としてスタート。環境衛生など多角化展開を進める


■ナック<9788>の事業概要

1. 会社概要
創業は1971年、東京都町田市においてダスキン<4665>のフランチャイズ企業としてスタートした。1984年にはダスキンのフランチャイズ企業として日本一の売上高を達成し、現在もトップクラスの企業として知られる。その後、環境衛生、建築コンサルティングと多角化展開し、1995年に株式店頭公開を果たした。1997年には東京証券取引所市場第2部に上場し、1999年に市場第1部に指定替えとなり、2022年4月に東証が実施した市場再編においてはプライム市場へ移行し、現在に至っている。

現在のセグメントは、クリクラ事業、レンタル事業、建築コンサルティング事業、住宅事業、美容・健康事業の5つで構成されている。クリクラ事業はウォーターサーバーでは業界の雄として知られており、レンタル事業のダスキン事業もダスキンのフランチャイジーとしては、有数の企業となっている。建築コンサルティング事業は地場工務店に特化したニッチな需要を捉えており、多様なサービスメニューを取り揃えることで独自の地位を築いてきた。

事業展開としては、クリクラ事業、レンタル事業など安定した収益基盤を構築し、それを事業拡大のため成長エンジンとなる分野に投資する格好となっている。近年では、住宅フランチャイズ本部のエースホーム(株)や化粧品OEM企業のトレミー(株)をM&Aするなど、既存事業を補強する形で強化してきた。

2. 事業概要
クリクラ事業、レンタル事業、建築コンサルティング事業、住宅事業、美容・健康事業の5つのセグメントについて、それぞれ以下に説明する。

(1) クリクラ事業
クリクラ事業は、ウォーターサーバー事業を直営と加盟店で展開している。「クリクラ」とは、同社における宅配水サービスのブランドである。同社は2002年に宅配水事業に進出後、2004年に自社ブランド「クリスタルクララ」として全国展開し、2009年にブランド名を「クリクラ」に変更した経緯がある。

「クリクラ」の水は、宇宙開発の現場などでも利用されている最先端テクノロジーの逆浸透膜(RO膜)システムを使用している。飲料として利用するため衛生面は細心の注意を払わなければならないが、同社では原水に含まれる不純物や雑味をしっかりと取り除き、安心安全な水を提供している。また、サーバーは2021年12月時点で約580の産院で使われるなど、単なる飲料水としてだけではなく、赤ちゃんのミルクや離乳食など、乳幼児がいる子育て世帯にとって、有用なツールになると言える。同社は、最近ではSNS上において、子育てをしている世帯向けに「安心・安全なお水」としてアピールしている。これは毎日のミルク作りなどに悩む母親に強い味方として響きそうだ。

事業のモデルとしては、生産から配達・メンテナンスまですべてを自社で管理している。サーバーレンタル料は無料で、利用者はその点においてコストを気にする必要がない。環境にもやさしいリターナブルボトルを使用しているため、余計なゴミが出ないことも特長となっている。

水の配送については、自社の配達スタッフがユーザーのオフィスや家庭に届ける。水の輸送は重量があるため、外部に委託した場合は多額のコストがかかるが、自社で完結することによってリーズナブルに製品を提供することが可能になる。そして、ウォーターサーバーを設置した後に水の配達を繰り返すことで、売上が発生する形となる。売り切り製品とは異なり、安定的かつコンスタントに収益を挙げることができるのが、このビジネスの強みであると言える。実際、ストックビジネスとして安定的な収益を毎期計上しており、今後も安定した収益源として全体の収益に貢献していくだろう。

収益を変動させる要素・リスク要因としては、気候変動が挙げられる。水分補給が最も必要な季節は夏だが、その年が冷夏、あるいは1年を通して高温期が短いと「クリクラ」の消費量が減る可能性がある。一定の気温を超すと販売が増加すると見られるが、気象庁「清涼飲料分野における気候情報を活用した気候リスク管理技術に関する調査報告書」(2018年度)の調査資料によると、自動販売機におけるミネラルウォーターの販売数について、20℃前後がミネラルウォーターの消費量の境目になると言う。気温と正の相関関係があるだけに、年間の気温について注視する必要がありそうだ。ただ、最近では温暖化、高温化によって真夏の猛暑日が全国的に増える傾向にあり、熱中症対策として水分補給が奨励され、夏場の水の消費量は上がるものと思われる。厳しい猛暑の日が多くなれば、「クリクラ」ビジネスに追い風となるだろう。

「クリクラ」ビジネス最前線となる加盟店については、稼働ベースで約500社となっている。このうち1割弱がプラント(製造)加盟店となっている。プラント加盟店は、フランチャイズ加盟会社が自ら製造工場を持ち、クリクラボトルの製造を行うことができる。「クリクラ」は水道の飲料水からRO膜処理を行うことで全国どこでも製造できるのが特徴であるため、天然水とは異なり、「クリクラ」は輸送に余分なコストがかからないメリットがある。顧客の割合は、販売本数ベースで家庭向けが7割、法人向けが3割となっている。コロナ禍によって、企業ではテレワークが活発化したため法人顧客向けは減少傾向にある一方、家庭用はコロナ禍を経て増加傾向にある。

クリクラ事業では水のほか、タブレットやコーヒーなどの副商材も展開している。繁忙期は5~7月となるが、気温が重要な要素になるため夏場の天候によって売上が左右されやすい。2020年1月の価格改定の浸透や販促費などで費用対効果を重視した結果、収益は上向く傾向にあったものの、直近では人員確保やサステナビリティ戦略へ向けた投資を行った結果、やや利益が伸び悩んでいる。これは前向きな投資が背景にあったためで、再び上向きに転じることになりそうだ。

一方、同事業では、2020年3月期より販売を開始した次亜塩素酸水溶液「ZiACO」が、昨今のコロナ禍によって引き合いが活発化しており、注目されている。「ZiACO」は、「クリクラ」の原水(RO膜処理水)を原料として、クリクラの製造工場で作られた低濃度で弱酸性~中性の安心・安全な次亜塩素酸水溶液である。クリクラのボトルやサーバーの洗浄工程で培った独自ノウハウから派生した製品で、“除菌”と“消臭”の2つの効果を発揮するノンアルコールの除菌水となっている。

もともとは新型コロナウイルスを意識した製品ではなく、部屋の除菌・消臭、衣服の消臭・花粉除去のほか、台所まわり、車内、トイレの除菌・消臭などの用途で製造されてきた。しかし、空間を除菌する効果があったことから、ウイルス対策製品として脚光を浴びた経緯がある。ひと頃に比べると顧客の使用量が落ち着いてきたものの、アルコールの代替品として関心が高い製品であり、顧客は引き続き増加傾向にあると言う。今後も期待できる分野と言えるだろう。

収益は、顧客を積み重ね、そこに安定的に商品を供給することによって、利益を上げていく構造となっている。「クリクラ」は、生活に必要不可欠な「水」に少しずつ付加価値を加えて顧客を地道に増やしていくことがポイントになると思われる。たとえば「ZiACO」は「クリクラ」から派生した格好の商品である。「ZiACO」の販売推進と同時に応用製品が出れば、収益カーブが鋭角的になる可能性もあると言える。クリクラ事業は、こうして着実に収益を積み重ねていくセグメントとなる。また、先述したようにクリクラ事業ではウォーターサーバーに取り付けるボトルを全て回収し、検査・洗浄したうえで繰り返し利用し、廃棄ボトルに関してもリサイクルを実施している。SDGsを推進する企業姿勢を強く感じさせる事業であることも見逃せない。

クリクラ事業の2022年3月期セグメント別の売上構成比は27.3%を占め、売上高利益率は8.4%となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)

《EY》

 提供:フィスコ

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