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【特集】投機でバブル崩壊、リーマンを乗り越えさせた「登山・将棋・洋書」

すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 レウィシアさんの場合-最終回

登場する銘柄
相鉄ホールディングス<9003>、ダイエー(現在は上場廃止)、パーシモン<PSN>、バンク・オブ・アメリカ<BAC>

【タイトル】レウィシアさん(ハンドルネーム・80代・男性):
1959年に給与の150万円を元手に投資を開始。以降、会社員時代は毎年150万円ずつの追加資金を行いつつ、資金を10倍に増やす。退職後も順調に資産を拡大させ、最高時の運用資金は5億円。現在はそのうち5000万円相当を趣味の絵画や骨董品に代えている。投資手法は「高配当バリュー投資」を主軸とし、アメ株のみならず欧州、豪州株、新興国株など多様な外国株投資のほか、金&白金の先物取引もサテライトとして手掛ける。昭和のバブル経済、2021年のバリュー株好調の大波が資産拡大に大きく貢献した。趣味も多岐にわたり、小学校から続けた将棋はアマチュア一流レベルまで到達。その他、山登り、洋らんの育成ほか、現在は地域の「7カ国語を話そう」サークルに所属し外国語も学ぶ。投資の心構えは将棋や山登りの影響が大きい。ハンドルネームは好きな花の名前(写真)。

編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)

「荒天の山では、ちょっとした判断の誤りが、命取りになる」

今回登場のレウィシアさんは、思春期の頃から険しい山への登山に挑んできたことから、一歩間違えば命を落としたかもしれない場面に出くわした体験もある。

都内の有名進学校の在学時に活動した山岳部で、北アルプスの人気登山ルートである裏銀座コースを縦走した際のことだ。登山の途中に雨に見舞われ、山小屋近くでテントを張り待機をした。雨は弱まる気配を見せず、いよいよテント内に雨水が入ってきたところで、リーダーである教官は山小屋に避難することを指示した。

■北アルプスの槍ヶ岳
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その後、雨が止み、再び山道を進むと、レウィシアさんたちは、山では雷と雨の怖さを侮ってはいけないことを思い知らされることになる。避難していた山小屋からはわずか2~3キロ離れた地点で、この大雨で犠牲になった人の惨状を目にしたからだ。

「目にした生々しい場面は、今でも脳裏に焼き付いている」(レウィシアさん)。以来、この時の教官の言葉が骨身に染み、登山に限らず様々なリスクを避けるには、思い込みは禁物で、適切な知識をもとに冷静に判断することを心がけるようになった。

レウィシアさんは、日本株に限らず海外株やCB(転換社債)、商品先物と様々なリスクアセットに手を出しながら、平成バブルの崩壊など何度となく襲った相場の暴落局面を切り抜けてきた。

その要因には「登山」のほかに、「将棋」と「洋書」と、レウィシアさんが熱中してきた3つの取り組みが生きている。

登山からは、「綿密な準備とリスクマネジメント」
将棋からは、「先読みし、最善のものを選択する見極め力」
洋書からは、「未知なる世界を自ら切り開く行動力」

――を投資に生かしてきた。これら3つが具体的にどんな風に役立ってきたのかを見ていこう。

登山で身に着けた「正しく恐れる」

まずは登山。投資も登山も、油断は大敵だ。

レウィシアさんは山に出かける際は、事前の天気予報や諸条件の確認を欠かすことはない。場合によってはテントを持って出かけ、山岳部時代に教官が取った行動のように、「まずい」と感じた時は早めにテントを張って退避場所を確保し、さらに安全策を講じる場合は山小屋に避難する。

落命する危険と隣合わせの登山では、万が一を避けるために正しく恐れることが欠かせない。レウィシアさんが株式投資で下値余地が大きいものを避けるのは、正しく恐れる行動の一環だ。

将棋で培った先読みで、苦境の家業からインフレに強い株式に

次に将棋。レウィシアさんは小学校から将棋を学び、一時はプロ棋士養成機関の「新進棋士奨励会」に入ることも真剣に考えたほどだ。

しかし、プロ棋士になっても、必ずしも生活の安定が保証されるわけではないことが、大好きで得意な将棋の道に進むことをためらわせた。家業の鋳物工場の経営が芳しくないことを、幼いながらも理解していたからだ。

「このままでは一家揃って貧乏生活に陥ってしまう。自分がなんとか富をもたらさなければ」。そんな責任感に駆られ、仕事や学問を続けながらも収入が得られる「株式投資」に興味を持ち始めた。なぜ株式なのかは、1946年に日本で起きた「預金封鎖」について学んでいたからだ。

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当時の日本は、戦費調達で膨大に膨らんだ政府債務によって、月に100%を超えるハイパーインフレが進行していた。政府は新円への切り替えで市中に出回っていたマネーを預金として吸収し、新円の引き出しに制限をかけることで、インフレを抑えにかかった。

その際に、株式は封鎖の対象外とされたことを学んだレウィシアさんは、株式は経済情勢が大きく変わってもその価値は失われない資産になると考えた。いずれは経済成長とともに価値も上がると判断したのも、購入の動機付けとなる。

今の情勢を認識しながら、より有利な展開に持ち込む、もしくは苦境を脱する、という策を何通りも吟味して、最善と思う手を選択していくのが将棋。その将棋で培った分析力で家業の先行きを考えた結果、レウィシア少年はプロ棋士になる夢を断念する。しかし、その能力は投資で活用することになる。

洋書は、未知の世界を効率よく学習できる最強ツール

3つ目の「洋書」は、未知の世界を効率よく学ぶには、予習が重要というレウィシアさんの姿勢を象徴するものだ。

前回の記事で触れたように、レウィシアさんは海外株やREIT(不動産投資信託)に投資対象を広げる。今のようにネットで海外情報を手軽に入手できない時代に投資対象となる外国企業の情報を得るために、年間15万円もする投資情報誌を定期購読して仕入れ、銘柄分析を自らの努力で行っていた。

さらに英紙ファイナンシャル・タイムズ(FT)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も、手に入れるためにわざわざ東京・日本橋にある書店の「丸善」まで出向いて入手し、英文で海外市場の動きをつぶさに観察してきた。

これだけの予習をして株式投資するレウィシアさんなので、知識レベルは担当の証券営業マンよりもはるか上を行く。それもあって、日本株を含めて証券営業マンには、「この人にはかなわない」と白旗を挙げさせたのか、彼らから推奨銘柄の営業を受けることは、まずなかったそうだ。

「いつまでも株価が上昇し続けるはずがない」と、バブル相場の最中にCB購入

充実した予習をこなし、先の先を読み、命を落としかねないようなリスクを正しく恐れる術を身に着けたことで、相場の荒波も致命傷を負わずに切り抜けることができた。

日経平均株価が89年末に最高値3万8957円から10カ月ほどで、半値に近い1万9781円の安値を付ける平成バブル崩壊のときでも、レウィシアさんのドローダウンは3割程度に。市場平均よりは落ち込みをマイルドにすることができた。

■日経平均株価の年足チャート
【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同


この日本株の冬の時代に、助けとなったのがCB(転換社債)だった。債券と株式の2つの性格を持つ有価証券で、一定以上の株価になったら、債券を株式に転換できる権利を持つ。

投資家にとっては、株価が上昇すればキャピタルゲインも狙える機会を得られるが、株価低迷時は債券のまま保有することで償還期限まで利息を受け取り続けられるメリットがある。

「株価が永遠に上がり続けるはずはない」。レウィシアさんは、バブル経済の真っ只中にこう先読みして、CBの保有を進めた。それが的中し、平成バブル崩壊後の株価低迷時にCBからインカムゲインを確保したことで、日経平均ほどの大ダメージを食らわずに済んだ。

自ら発見したCBと株のアービトラージ

こうした自らの開拓精神により、自身で編み出したというユニーク投資法に、「個別株式と、CBの株式転換時の株式のアービトラージ戦略」がある。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



 

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