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4563 アンジェス

東証G
49円
前日比
-1
-2.00%
PTS
49.7円
18:27 05/10
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
0.40 4.61
時価総額 98.6億円
決算発表予定日

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アンジェス Research Memo(8):Emendoは2023年内の臨床試験開始と2024年以降のIPO等を目指す


■アンジェス<4563>のEmendoBioの開発状況

2. 今後の事業戦略
Emendoでの今後の事業戦略は、自社開発による収益化とOMNIプラットフォーム技術のライセンス供与による収益獲得の2軸で展開する方針である。

自社開発については、ELANE変異によるSCNを対象とした臨床開発を進めるべく、IND(新薬臨床試験開始)申請に向けたFDAとの協議が順調に進んでおり、2023年10~12月頃にも臨床試験入りする見通しとなっている。SCNとは骨髄における顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症のことで、遺伝子変異により出生後の早期から好中球減少による中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を反復し、肺炎や敗血症などその他の疾患に至るケースもある。100万人に2人の割合で発症する希少疾患で、SCNの約7割はELANE変異によるものとなっている。

現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による感染予防が一般的で、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF※を使用して好中球の誘導を促すことになる。ただ、G-CSFを高用量で使用した場合、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行し、造血幹細胞移植が必要となるケースもある。Emendoでは患者から造血幹細胞を取り出し、OMNIヌクレアーゼを用いて正常な機能を有するELANEを発現させたうえで患者の体内に戻し、好中球の機能を回復させる根治療法の開発を目指している。Emendoが実施した動物実験では、正常な遺伝子を傷つけずに、異常な遺伝子のみを正確に区別して破壊し、その結果、造血幹細胞が好中球に分化できるようになったことを確認しており、2022年6月には世界最大の遺伝子治療及び細胞治療の研究者の団体のジャーナルにも論文が掲載された(Emendoのホームページでも公開)。

※G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。


EmendoではまずELANE関連SCNでのPOC取得を最優先課題として取り組んでおり、その後に肝疾患や眼疾患など他のパイプラインの臨床開発も進めていくことにしている。パイプラインとしては新たに家族性高コレステロール血症※や高脂血症が加わっている。家族性高コレステロール血症については前臨床試験において既存薬よりも高い薬効を期待できるデータが確認されており、今後の開発進展が期待される。

※家族性高コレステロール血症は、高LDLコレステロール血症、早発性冠動脈疾患、腱・皮膚結節性黄色腫を特徴とし、肝細胞にLDLコレステロールを取り込む働きをするLDL受容体が、遺伝子変異の影響によって正常に機能しなくなることで、血中のLDLコレステロール値が上昇するメカニズムとなっている。このため、若い年齢で動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症などを発症しやすくなる。罹患率は日本で500名に1人、米国で250人に1人と言われている。


一方、OMNIプラットフォームのライセンス供与については、バイオベンチャーからメガファーマまで合計10社程度の引き合いがきており、複数社と交渉を進めている段階にある。特に、CAR-T療法の開発企業からの関心度が高い。CAR-T療法は免疫細胞療法の1つで、がん患者のT細胞に標的抗原に対するCAR(Chimeric antigen receptor:キメラ免疫受容体)をコードする遺伝子を導入することで、がん細胞に対する攻撃力を高める治療法だが、先進のゲノム編集技術を用いることで、治療効果の高い新薬を効率的に開発できる可能性があるためだ。CRISPR/Cas9技術を使った開発も進められているが、既述のとおり「オフターゲット効果」がないOMNIプラットフォーム技術の高い安全性が評価されており、現在前臨床試験が進んでいる。同試験の結果が良ければ、ライセンス契約が締結される可能性が高いと弊社では見ている。なお、契約交渉については特定の開発プロジェクトで同技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業があるようだ。いずれにしてもEmendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結する方針で、ペプチドリーム<4587>のようなビジネスモデルを志向している。

Emendoの人員は2020年の子会社化時点で50名強程度であったが、その後開発体制を強化し2022年12月末時点では100名程度となっており、うち8割が研究開発人員で75名が博士号を持つなど優秀な人材が集結している。研究開発費は2021年12月期で23億円程度だったが、2022年12月期は研究スタッフの増加や円安の影響もあって、連結研究開発費(10,999百万円)のうち半分以上を占めるまでになっている。今後についてもパイプラインの開発ステージが進むことによって開発費はさらに増加することが予想される。このため、2024年12月期以降については米国でIPOを行い、独自で株式市場から開発資金を調達することも選択肢の1つとして考えている。

米国ではゲノム編集技術を用いた臨床開発段階のバイオベンチャーが複数社上場しており、時価総額は収益化前段階でも数億米ドル(数百億円)から数十億米ドル(数千億円)規模で評価されている。国内でゲノム編集技術のバイオベンチャーとしてはモダリス<4883>が上場しているが、時価総額は100億円程度に過ぎない。開発の進捗状況やパイプラインの潜在価値、ライセンス契約の有無等によって異なるものの、総じて米国のほうが投資家からの期待値の高いことが要因として考えられ、米国市場のほうが効率的に資金調達を行うことが可能とも言える。まずは臨床試験を開始してからとなるが、EmendoがIPOして独自で資金調達できるようになれば、同社の資金負担も大幅に軽減されることになる。また、米国ではこれらゲノム編集技術を持つベンチャーと大手製薬企業が共同開発契約を締結する事例も増えてきており、Emendoにおいても共同開発契約を締結する可能性がある。2022年の事例を見ると、契約一時金で数十億円規模、マイルストーン収入で1,000億円以上と大型契約が締結されているだけに、今後の動向に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YI》

 提供:フィスコ

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