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3919パイプドHD

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パイプドHD Research Memo(2):自社開発した「SPIRALR」というプラットフォームを軸に事業展開


■会社概要

1. 会社概要
パイプドHD<3919>は2015年9月1日付でパイプドビッツから単独株式移転によって設立された純粋持株会社であり、2017年3月31日現在で連結子会社11社、持分法適用関連会社1社、その他出資会社4社を有している。しかし、依然としてパイプドビッツが同社グループの中核企業であるため、以下の沿革及び事業内容は主にパイプドビッツを中心に記載する。

2. 沿革
パイプドビッツは、現パイプドHDの代表取締役社長である佐谷宣昭(さたにのぶあき)氏によって2000年4月に設立された。多くの企業にとって、その顧客の属性やメールアドレスなど、事業上知り得たデータは重要な「情報資産」であり、これらの「情報資産」を安全に預かると同時に有効利用するサービスを事業として開始した。この事業を行うために自社開発したのが、情報資産管理のためのプラットフォーム「SPIRALR」である(詳細後述)。その後、この「SPIRALR」を中心に各種のアプリケーションを開発し、これらの応用事業を展開しつつ現在に至っている。

3. 事業内容
(1) 製品概要
同社グループの主力事業を一言で言えば、自社開発した「SPIRALR」というプラットフォーム及び関連したアプリケーションソフトを、売り切りではなくASP型でユーザーに提供することである。ソフトウェアの階層(レイヤー)の中で「SPIRALR」の位置付けは、クラウド型ミドルウェアとも言える。

一般的に多くの企業は業務上のシステムなどを構築する際に、開発・運用のためのハードウェアや基本ソフトウェア(OS)、開発環境(ツール)、データベース、ミドルウェアなどを自社で購入し(または開発委託し)、それらを組み合わせてシステムが稼動するための基盤(プラットフォーム)を構築する必要があり、さらに開発後もそれらを維持する手間(コスト)も必要であった。しかし、パイプドビッツの開発した「SPIRALR」は、開発ツールが搭載されているので各種アプリケーションを簡単に開発することができるだけでなく、データベースも内蔵しているため「SPIRALR」に格納された顧客データなどの情報資産を各アプリケーションで共有して利用することが可能になる。また、これらのアプリケーションやデータ類を簡単に複製したりデリバリーしたりすることもできる。ここがパッケージ型ソフトと大きく異なる優位性である。

このため顧客企業は、「SPIRALR」を利用することでアプリ開発のコストを大幅に削減すると同時に、情報の運営(利用)・管理を簡単かつ一括して行うことができる。さらに従量制の月額課金型プラットフォームであることから、コスト削減にも役立っている。「SPIRALR」の導入企業は、大手金融機関をはじめとする著名な企業が顧客に名を連ねている。

昨今のIT業界では多くのサービスが「クラウド型」で提供されており、これらのクラウド型サービスは提供される内容によって様々な呼び方をされている。同社の「SPIRALR」は「PaaS」(Platform as a Service)と呼ばれる分野に属する。

(2) 主要製品の内容と価格
同社の主力製品は「SPIRALR」というプラットフォーム環境である。これを利用する主要顧客は自社の業務用ソフトなどを社内開発する大手企業や街の中小企業向けなどに開発を行う中小SIer及びWeb制作/Web開発会社である。同社は、この「SPIRALR」を使って特定業界やユーザー向けに同社自身でアプリケーションを開発し、これらの販売も行っている。このような主要製品はパッケージ販売(売り切り)ではなく、すべてASP型で販売されている。以下は主要製品とその月額価格(最低料金)である。

言うまでもなく同社の事業モデルでは、有効(有料)アカウント数が増えることが売上高増につながる。ただし下記に述べる料金はあくまで基本料金あるいは最低料金であり、実際は利用するデータ量によって料金が変わる(従量制)ため、単純にアカウント数×基本料金=売上高とはならないが、売上高動向を見るうえでは有効アカウント数は重要な指標である。

a) SPIRALR
同社の主力製品。基本となるプラットフォームでデータベース、開発環境、実行環境などを内蔵している。月額25,000円から。

b) SPIRAL PLACER
クラウド型のグループウェアで、Webサイトの作成・更新機能を持ち、同時にSNSとも連携している。グループウェアとしてカレンダーやファイルを共用化しながら、簡単な操作でWebコンテンツの改善・更新やアクセス解析を行うことができ、FacebookやTwitterにもリンクしている。従業員を大量に抱えるチェーン店などから高い評価を得ている。基本料金は月額6,000円から。

c) SPIRAL ECR
アパレル専用に特化したeコマースのプラットフォーム。アパレル向けECサイトの高級なブランドイメージを追求しながら、同時に更新作業手順を簡素化し、しかも低予算に押さえるといういくつかの課題を同時に解決できる点が業界からは高く評価されている。利用料は流通額に応じた従量制。

d) ネットde会計R・ネットde青色申告R
中小企業や個人事業主を対象としたクラウド型の会計サービス。2011年9月に事業を譲り受け、販売を開始した。

e) スパイラルアフィリエイトR
広告主のアフィリエイト広告の導入や運用にかかる負担や課題を軽減するアフィリエイトASP一括管理サービス。初期費用無料など、「SPIRALR」ユーザー限定の特典がある。

f) その他
特定の分野や業種向けのアプリケーションがある。さらに各種の専門会社と提携することで、「SPIRALR」の利用・応用の拡大を目指している。

(3) 事業セグメント
同社では事業セグメントを情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業に分類している。情報資産プラットフォーム事業は、SPIRALRを中心とした同社PaaSの提供をしており、SPIRALR、SPIRAL PLACER、SPIRAL ECR、ネットde会計、その他に分類される。広告事業は、各種ネット広告の代理販売をしており、スパイラルアフィリエイトR、リスティング、その他広告に分類される。ソリューション事業は、アパレルEC運営やその他制作案件の受託等をしており、制作、EC運営、BIMコンサル・その他受託に分類される。

(4) その他連結子会社と事業内容
主力事業(パイプドビッツ)に加え、同社では下記の子会社群を通じてそれに関連した様々な事業を行っている。

a) ペーパレススタジオジャパン(株)
建設プロジェクトプロデュース&マネジメントやBIMコンサルタント事業を手がける。設計や施工に携わる人々を対象としたBIM・CIM人材講座も展開している。2012年5月にBIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphonyR」を提供開始した。

b) (株)アズベイス
ASP/SaaS型コールセンタープラットフォームサービス「BizBaseR」(グループウェア、ワークフロー、勤怠管理、経費精算、交通費精算、商談登録、顧客管理、作業進捗、タイムカード、シフト管理、画面共有・リモート操作、ポイント管理等)を開発、提供している。

c) (株)パブリカ
自治体や官公庁のオープンデータを活用したサービスを提供する専門会社。官公庁や自治体、さらに民間企業などに死蔵されているデータのオープン化を促し、活用するサービスを開発し、自主運営を目指す。自治体広報紙のネット配信「マイ広報紙」のシステムを開発。

d) (株)ウェアハート
(株)講談社が刊行する女性誌「ViVi」のEC展開を目的に2015年7月に設立され、主にシステム開発、サイト構築、商品の仕入れ及び物流等の部分を担い、アパレル・ファッション業界をリードする情報発信並びに新商品、新サービスの提供を行っていたが、収益が思うように伸びなかったことから2017年2月末で解散した。(注:2017年2月期までは業績が連結決算に反映されている。)

e) (株)ゴンドラ
それまでのメディアストラテジーカンパニーを2016年3月1日付で分社化した。広告ソリューション、Webソリューション、ソーシャルマネジメントの3つのサービス領域を展開する。企画、制作、システム開発、運用面における独自のサービスメニューと、「スパイラル アフィリエイトR」「SPIRALR」「Sprinklr」等情報管理プラットフォームを活用したIT技術を掛け合わせることにより、企業の経営課題の解決や事業活動の最適化をワンストップで実現することを可能にしている。

f) (株)フレンディット
eコマースに関するシステム運用、オンラインショップ運営、施策レベルのオムニチャネルを総合的に支援する。顧客の共通課題である人手不足・経験不足を補い、ITによる業務最適化から商品/会員/購買データ利活用の推進まで、「販売・売上」に直結するマーケティング活動をプロデュースしている。社内のアパレル・ファッションカンパニーを2016年3月1日付で分社化した。

g) (株)美歴
美容室向け電子カルテアプリ「美歴R」を中心としたITサービスの提供を通し、1人でも多くの美容に携わる人たちの価値向上に貢献し、美容をもっと身近に楽しめるものに、人々の生活をより豊かにすることを目指し事業活動を行っている。それまでの美歴カンパニーを2016年3月1日付で新設・分社化した。

h) (株)カレン
情報資産を統合し、ユーザーへのベストメッセージングを実施する中で、Webアクセスの向上及びロイヤルユーザーを育成するデジタルCRM(コミュニケーション・データマネジメント設計、メッセージのクリエイティブ・構築、メッセージのデリバリー、効果検証等の運用サービスの提供)を主力事業とする企業。情報資産利活用とITソリューションのノウハウを持つパイプドビッツと、常駐型のマーケティング支援に強みを持つカレンとの事業シナジーを指向し、2015年12月に出資比率を上げて子会社化した。

i) (株)ブルームノーツ
元々同社の社内人材育成・教育等を行っていた部門を外部顧客向けにも同様の人材教育を行うために分離・独立し、2016年10月3日付で子会社化した。中小企業の人材育成の課題解決のため、企業独自のノウハウをプログラムとして体系化し、運用を支援する人材育成代行事業を行う。

j) (株)VOTE FOR
以前から社内にあった政治・選挙情報サイト「政治山R」を使って事業を行うために2017年3月に設立された。ネット投票の実現に向けてブロックチェーンなどの新技術を生かした投票システムの構築を目指している。

k) (株)アイラブ
地域活性化プロジェクト「I LOVE 下北沢」をさらに進めると同時に、スマートフォンの仮想通貨を活用した少額決済で、投げ銭やチップなどの新しい取引の創造を目指すために2017年3月に設立された。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《HN》

 提供:フィスコ

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