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2017年05月08日20時00分

【特集】急速普及モード“セルフレジ” 流通革命、そして関連株の行方 <株探トップ特集>

大日印 <日足> 「株探」多機能チャートより

―脚光「RFID」、隠れテーマ“人手不足解消”も後押し―

 いま「セルフレジ」に向けた動きが急速に進もうとしている。経済産業省は4月18日、「コンビニ電子タグ 1000億枚宣言」を策定、2025年までに大手コンビニ5社と全ての商品に電子タグを利用することについて合意したと発表。商品情報が埋め込まれた電子タグ装着を活用することで、消費者が購入した商品の会計を自ら行う「セルフレジ」設置の動きが本格的に進みそうだ。日本経済の課題である人手不足解消という大きなテーマも絡むなか、にわかに関心が高まっている。関連銘柄の動向と今後の展開を追った。

●「RFID関連」に脚光

 電子タグ利用で合意したのは、セブン&アイ・ホールディングス <3382> 傘下のセブン―イレブン、ユニー・ファミリーマートホールディングス <8028> 傘下のファミリーマートに加えローソン <2651> 、ミニストップ <9946> 、JR東日本リテールネットが運営するニューデイズなど大手コンビニ5社。年間1000億個(推計)といわれる5社全ての取り扱い商品が対象で、食品メーカーなどが電子タグを商品に貼りつけ出荷することを目指す。電子タグはコンビニにとどまらず、さまざまな業態においても活用が可能で、今後“流通革命”につながるとの見方もある。

 これを受けて、株式市場では電子タグを使用して商品データを読み書きする自動認識技術「RFID関連」が脚光を浴びた。RFIDとは、無線通信によって非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術で、「バーコードと比較すると、(1)書き込み可能なデータ量が多いため、商品1単位ごとにIDを振ることで個品管理を実現できる、(2)複数の電子タグを一括で読み取ることで業務を自動化・効率化できる」(経産省資料より)という。さらにバーコードと比べて離れたところから読み取りが可能なことに加え、遮蔽(へい)物などで電子タグが見えなくても読み取りができるなどの利点がある。

 これにより、かごに入った購入商品の情報を瞬時に読み取り高速決済ができる「セルフレジ化」が大幅に加速し、人手不足の解消、さらに在庫管理の徹底で現在大きな問題となっている食品ロスの削減などにつながるものとして株式市場でも物色の矛先が向かった。

●客数と売り上げが約2割伸長

 セルフレジ化に向けての実証実験でも、その効果が評価されている。ローソンとパナソニック <6752> による実証実験では、昨年12月に「ローソンパナソニック前店」(大阪府守口市)で業界初となる完全自動セルフレジ機「レジロボ」を導入。今年2月からはRFIDを導入した実証実験を2週間実施した結果、従業員のレジ業務の軽減や棚卸業務の効率化につながると同時に、客数と売り上げが約2割伸長するなどの効果があったという。

●課題は低価格化、大日本印など牽引

 しかし、課題も多い。「1000億枚宣言」を発表した経産省では、「大きなネックは、やはりタグの低価格化だ。さまざまな企業が低価格化に向けて取り組んでおり、引き続きその取り組みをフォローアップしていく」(流通政策課)という。現在、1枚当たり10~20円するRFIDだが、価格の引き下げが普及へ向けての大きなポイントとなる。

 昨年にはコンビニ各社と関係企業との間で実務者会議が行われ、技術的共有や、前述のローソンとパナソニックによる共同実証実験などの結果を通じて、電子タグの利活用について話し合われた。ベンダー側からは先のパナソニックに加え、大日本印刷 <7912> 、東芝テック <6588> 、凸版印刷 <7911> 、NEC <6701> 、富士通 <6702> 、富士通フロンテック <6945> [東証2]などが出席しており、今後ICタグ装着におけるセルフレジ推進の中核企業になる可能性もある。

 実務者会議に参加した大日本印刷では、「低価格化については、これからスタートする形になる。20年までに5円以下を、25年に1円を目指す。5円というところは、ある程度実現できると思っている。それから先となると、いままでの技術と違った開発を含め進めていかなければならないと感じている」(広報室)と一段の低価格化の難しさを語る。しかし、「今回の1000億枚という膨大な量に加え、今後、他の流通にも拡大することが予想され、期待感はかなり高い」(同)という。

●カーディナルはRFID強化

 18日の「1000億枚宣言」の発表を前に、同日の日本経済新聞朝刊で「大手コンビニエンスストア5社は消費者が自分で会計するセルフレジを2025年までに国内全店舗に導入する」と報じられ、先んじてRFID関連株に思惑的な買いが入り株価は急動意するものが続出した。

 前出の東芝テックや富士通フロンテックが上昇。さらにRFID関連システム大手のサトーホールディングス <6287> 、バーコード・スキャナーのモジュールエンジン大手のオプトエレクトロニクス <6664> [JQ]、RFIDタグ用ゴム製品を手掛ける朝日ラバー <5162> [JQ]なども買われた。また、カーディナル <7855> [JQG]は中期経営計画での販売促進と売上高増加といったRFIDの強化を打ち出しており、今後の動向に注目が集まっている。これらの銘柄のなかには、18日の日経報道、経産省発表を受け急伸した後も順調に下値を切り上げているものも多く、今後の展開への期待感をうかがわせている。

●課題山積も巨大市場に期待感

 ある業界関係者は、「低価格を目指す電子タグだけでは、なかなか儲からないのも事実だ。それをどのように利益に結び付けるかが次の大きな課題といえる。ただ、巨大な市場に成長すると考えられるだけに、情報を書き込む作業などを通して、利益を生み出していくことになるのではないか」と語る。

 RFIDの低価格化に加え、読み取り精度の改善、電子タグの商品への貼り付け技術が未完成であることなど課題は山積している。しかし、電子タグはコンビニにとどまらず、多くの分野への波及効果も考えられ、今後流通の流れを変えることにつながるとの見方から注目度が高い。実現に向けての技術革新が進捗する過程で、株式市場においても折に触れてスポットライトを浴びそうだ。

株探ニュース

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