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2982 ADワークスグループ

東証P
238円
前日比
-3
-1.24%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
7.3 0.66 3.78 121
時価総額 118億円
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ADワークスグループ Research Memo(5):投資ソリューションカンパニーへと脱皮を目指す


■中期経営計画

1. 第1次中期経営計画の概要
ADワークスグループ<2982>は2021年5月に第1次中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期)を発表した。収益不動産カンパニーから投資ソリューションカンパニーへと脱皮し、長期的に持続的な成長を実現していくための準備期間として位置付けており、1) SDGs経営の推進、2) 「複利の経営」への転換、3) 「プライム市場」の上場、4) 「5年後3割」への通過点、の4つのテーマを掲げ、その取り組みを推進している。

1) SDGs経営の推進
主力の収益不動産販売事業は、「社会資本とも言うべき不動産のポテンシャルを目利き力と商品企画力で最大化する」という社会的意義を有しており、不動産市場でのESG投資の広がりに寄与することでSDGs経営を推進していく。前述したSDGs私募債の発行もその取り組みの1つとなる。

2) 「複利の経営」への転換
従来は、売上高や経常利益などの「額」を増やす経営、または経常利益率など「率」を高める経営を推進してきたが、今後は投下資本が生み出す利益を重要視する「利回りの経営」、さらに再投資のリターンを長期継続する「複利の経営」に転換していく。

3) 「プライム市場」の上場維持基準クリア
2022年4月の東京証券取引所の市場再編において、同社は「プライム市場」への上場を選択した。「プライム市場」に移行することが同社の事業価値を向上させ、中長期的な企業価値向上の実現において必要と考えたためだ。なお、移行基準日(2021年6月30日)において、流通株式時価総額が52億円と上場維持基準である100億円の基準を満たしていなかったことから、同年9月に上場維持基準の適合に向けた計画書を合わせて提出している。

内容としては、「第1次中期経営計画」の業績目標を達成することで、2024年12月期までに流通株式時価総額100億円の達成を目指す計画である。同社では2023年12月期に親会社株式に帰属する当期純利益13億円を達成できれば、不動産セクターや東証市場一部平均のPERやPBRの水準から見て、流通株式時価総額100億円の達成は十分可能と考えている。

4) 「5年後3割」への通過点
DXによる革新、CVC事業を通じた新たな価値創造、持株会社体制下でのM&Aや資本提携、業務提携の加速により、“脱”不動産事業収益の割合を2025年12月期に全体の3割にするビジョンを掲げ、その実現に向け今後3年間で積極的に事業機会を獲得していく。


2023年12月期に経常利益20億円、超過利潤(WACCを上回るROIC)の達成が視野に入る
2. 基本方針と経営数値目標
中期経営計画における基本方針として、以下の3点に取り組んでいる。

(1) 超過利潤
現在、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を下回る状況にあるが、2023年12月期にこれを逆転させて、超過利潤を生み持続的に向上させる経営を目指している。具体的には、2021年12月期はROIC1.7%に対してWACCが3.7%となり、超過利潤は-2.0ポイントとなっているが、2023年12月期にはROICを4.1%、WACCを3.2%とし、超過利潤で+0.9ポイントを目指す(既存事業のみの計画で、ノンアセット事業等が収益貢献すれば超過利潤の増大余地となる)。

(2) 外部資源
DXなど高速展開する最新の知見を取り込むために、持株会社体制のもとCVCによって先鞭をつけ、M&Aや資本提携、業務提携等を展開し、外部資源を積極活用していくことで創造性と先進性に富んだ組織力を育み、新規事業の育成を図る。前述したファイナンス・アレンジメント事業構想がその1例として挙げられる。

(3) 顧客拡張
顧客層は個人富裕層を主軸としつつ、インターネットも活用して顧客の裾野を広げていくほか、事業法人や機関投資家へと対象顧客を拡張していく。具体的には、小口化不動産販売事業の強化や、今後組成を予定しているREIT事業での展開が挙げられる。

こうした取り組みを推進していくことで、2023年12月期に売上高306億円、EBITDA27億円、経常利益20億円、親会社株主に帰属する当期純利益13億円、ROE8.9%、収益不動産残高で500億円を目指す(2021年5月時点の計画であり、今後更新される可能性がある)。

ROEについては、これまでエクイティ・ファイナンス等も活用し純資産を増強してきたため2021年12月期までは2%台と低水準であったが、今後は有利子負債など他人資本を積極活用することで資本効率を高めていく。具体的には、2022年6月末の有利子負債263億円(借入金254億円、社債9億円)に対して、2023年12月期には銀行借入で400億円、その他負債(クラウドファンディング、SDGs私募債、STO※等)で20億円を調達する計画となっている。純資産は、2022年6月末時点で156億円と2023年12月期計画の152億円を超過しているが、円安の進行による為替換算調整勘定の増加が要因となっている。

※STO (Security Token Offering)とは、ブロックチェーン技術を活用したデジタル証券による資金調達法。


全体的な進捗状況としては、収益不動産残高の積み上げペースが若干遅れているが、今後も適正利潤を確保できると判断した物件については積極的に仕入活動を行う方針だ。2023年12月期の経常利益が20億円と2022年12月期比で2.5倍増の計画となっており、ハードルがやや高いように見えるが、手持ちの収益不動産物件を販売することで達成可能と見られる。実際、同社の過去最高経常利益を達成した2019年3月期(1,802百万円)の直前期である2018年3月期末の収益不動産残高は223億円と現状の7割弱の水準しかなく、物件を販売することで利益を拡大することは可能と見られる。同社でも2023年12月期は業績目標の達成を最優先事項として取り組む意向であることから、経常利益20億円の達成は十分可能であろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TY》

 提供:フィスコ

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