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2427 アウトソーシング

東証P
1,754.0円
前日比
+5.0
+0.29%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
2.46 2.88
時価総額 2,211億円
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アウトソシング Research Memo(7):不安定な外部環境が続くなかでもすべてのセグメントで増収を確保(2)


■アウトソーシング<2427>の決算概要

2. 事業別の実績と主な活動
(1) 国内技術系アウトソーシング事業
売上収益は前期比20.8%増の1,496億円、セグメント利益は同5.1%増の104億円と増収増益となった。各産業におけるエンジニア活用ニーズが高水準で推移するなかで、エンジニア人材の確保と稼働率の上昇が業績の伸びをけん引した。また、利益面でも増収により増益を確保した。一方、利益率が6.9%(前期は8.0%)に低下したのは、サプライチェーンの混乱(受託開発資材の納入遅延)による受注損失引当金の繰入が理由である。期末の外勤社員数は24,713名(前期末比3,091名増/期初計画比1,987名減)と新卒採用(約2,600名)を含めて増加した。採用競争の激化や上期における採用の遅れから期初計画には届かなかったものの、業界トップの水準を誇っている。また、注力する「派遣2.0」についても、オフィス系が伸び悩んだ一方、需要が拡大している先端技術分野を中心に着実に伸ばすことができた(詳細は後述)。

(2) 国内製造系アウトソーシング事業
売上収益は前期比22.8%増の1,224億円、セグメント利益は同0.1%減の72億円と増収減益となった。半導体不足による自動車の生産調整が長引き、売上収益、利益ともに期初計画には届かなかったが、下期に向けて自動車や電機機器の生産が想定以上に回復してきた点は明るい材料である。一方、利益面で減益となったのは、生産調整からの回復を見据えた積極的な採用活動により費用が先行したことが理由である。期末の外勤社員数は26,529名(前期末比5,086名増/期初計画比29名増)と新卒採用(約600名)やM&Aを含めて順調に増えており、今後の需要の取り込みに向けて体制を整えることができた。また、注力する派遣管理システム「CSM」についても、累計ユーザー数が1.9万人に拡大した(詳細は後述)。

「管理業務受託」については、顧客メーカーの技能実習生ニーズは堅調であるものの、技能実習予定者の来日が限定的な状況が継続しており、期末の管理人数は19,045名(前期末比959名減)に減少した。ただ、段階的な入国規制の緩和を受けて底打ちしており、今後は増加トレンドに入る見通しである。また、2020年11月に参画した「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」※を通じて、外国人労働者の債務労働問題の解消や労働/生活環境改善など、マーケットリーダーとして市場の健全化にも取り組んでいる。

※国際協力機構(JICA)と(一社)ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)が共同で事務局となり2020年11月に参画した。日本において外国人労働者を受け入れる民間企業及び業界団体、労働組合、市民社会、メディア、研究者など、多様な関係者の連携を通じてわが国における外国人労働者の抱える労働・社会問題の解決を目指すものである。


(3) 国内サービス系アウトソーシング事業
売上収益は前期比4.6%増の305億円、セグメント利益は同22.0%減の32億円と増収減益となった。景気変動の影響を受けにくい米軍施設向け事業の需要は強いものの、サプライチェーンの混乱に伴う資材調達の遅れにより期初計画を下回る水準に留まった。また、利益面で減益となったのは、資材価格の高騰や円安の影響により利益率が低下したことが理由である。もっとも、米軍施設向け受注残は過去最高水準にあり、事業拡大に向けたポテンシャルは揺るぎないとの見方ができる。さらに、コロナ禍収束に伴うインバウンド需要増や旅行支援等を追い風として観光関連(ホテル・旅行)も回復基調にあるようだ。

(4) 海外技術系事業
売上収益は前期比18.1%増の1,651億円、セグメント利益は同75.3%増の80億円と増収増益となり、期初計画を上回る結果となった。引き続き好調なアイルランド及びオセアニアが業績をけん引するとともに、英国における公的債権回収事業も回復傾向にある。利益面でもインフレによる影響はあったものの、利益率の良い人材紹介が好調であったことから大幅な増益を実現した。

(5) 海外製造系及びサービス系事業
売上収益は前期比25.6%増の2,220億円、セグメント利益は同49.2%減の34億円と増収減益となり、期初計画には届かなかった。サービス系はオランダのOTTOグループによる物流向けが堅調に推移したものの、製造系における半導体不足等による影響を大きく受けた。また、利益面で減益となったのは、製造系の下振れに加え、インフレや賃金上昇に伴う費用増(欧州)、のれん等の減損損失(英国)、保守的な一過性費用の計上(チリ)などにより利益率が低下したことが理由である。

3. 2022年12月期の総括
以上から、2022年12月期を総括すると、様々な外部要因により業績面は期初計画を下回ったものの、すべてのセグメントで増収を確保したことや、比較的好調な国内・海外の技術系事業が業績を下支えしているところは、改めて同社の収益基盤の強さを示すものとして評価したい。また、のれんの減損損失(約37億円)についても、サプライチェーンの混乱や海外における急激なインフレ進行など想定外の外部要因(不可抗力)によるものであり、同社自身の戦略の停滞や競争力の低下によるものではないところは冷静に判断する必要があろう。さらに半導体不足や資材調達の遅れ、人の移動の制限など、業績の足を引っ張っていた外部要因が徐々に改善する方向にあるところも、今後に向けて明るい材料と言える。戦略面でも、後述のとおり、「派遣2.0」や派遣管理システム「CSM」といった派遣DX化に向けたビジネスモデルの進展や、グローバル人材流動ネットワークの確立で一定の成果を残すことができた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《AS》

 提供:フィスコ

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