ニーズウェル Research Memo(6):経済・社会・環境のバランスを重視した経営戦略で企業価値を向上
■ニーズウェル<3992>の中期経営計画
2024年8月、同社は、2024年9月期から2026年9月期における中期経営計画を発表した。旧中期経営計画の基本方針はそのままに、新たな施策を加えることで、さらなる成長を目指す。
1. 経営理念・中期方針
同社は、経営理念として掲げる「広く経済社会に貢献し続ける」の下、常に進化するニーズに応じて、革新を試みながら社会への貢献を目指している。この姿勢は、「Try & Innovation」をスローガンに掲げる経営指針にも反映されており、企業活動を通じて持続可能な経済発展への寄与を志向している。中期的な視点では、「真のシステムインテグレータへ移行」を基本方針としている。これは技術的な専門性と経営戦略を融合させ、より高度なソリューションを顧客に提供することを意味している。中期経営指針においては、生産性の向上を通じて高収益を実現することと並行して、労働時間の削減を図る。これにより、従業員には高給与と高賞与が保障され、ワークライフバランスの実現を推進する。
さらに、企業価値の向上のために事業価値と社会価値の向上を目標として掲げており、具体的には、事業価値の向上に関しては、業績目標と事業目標を達成すること、社会価値の向上に関しては、サステナブルな経営を実現することで、環境への配慮と社会的責任を果たすことを目指している。これらの方針は、長期的に企業の持続可能性と競争力を高めるための戦略的なステップとして位置付けられている。全体として、技術革新と社会貢献を経営の中核に置きながら、従業員の働きがいと企業の持続可能性の向上も図る。
2. 企業価値の向上
同社は、経営理念と戦略を軸に、具体的な施策を通じて企業価値の向上を目指している。売上高成長率の年20%を維持しつつ、経常利益率を10%で安定させること、また売上総利益率25%、販管費率10%を目標とすることで、経済的な健全性と持続的成長を両立させる姿勢を示している。さらに、2026年9月期までに売上高130億円、経常利益17億円を目標とし、CAGR14%を掲げている。これに加えて、株主価値の指標として1株当たり利益(EPS)30円、株価収益率(PER)20倍、自己資本利益率(ROE)20%も目標に設定しており、成長と収益性のバランスを図ることで、企業価値を一層高めていく方針である。経済的、社会的、環境的側面を総合的に考慮した同社の経営戦略は、投資家だけでなく、顧客、地域社会、そして従業員からの信頼と評価を高めることに寄与し、結果的に企業価値の向上につながることを意図している。
3. 成長戦略
同社の成長戦略は、事業価値と社会価値の両方を高める取り組みを軸に、収益力と持続可能な経営の実現を目指している。まず事業価値の向上では、IT投資需要の拡大に伴い、ビジネス環境の変化とDXへの期待がデジタルビジネス関連サービスへの投資を後押ししている。これを受け、同社は2024年9月期における売上高を96億円から34億円増加させ、2026年9月期には130億円の売上目標を掲げている。収益拡大に向けてストック売上の拡大を重要な成長ドライバーとしており、特に、開発ノウハウを活用したストック売上の比率を2024年の65%から2026年には70%へ引き上げ、安定した収益基盤を構築する方針だ。また、ローコード開発の導入とエンドユーザー向け取引の拡大により、収益性をさらに強化する。この施策は、同社が持続的な収益拡大を図る上での基盤を形成し、事業の安定性を高めるものと言える。加えて、事業価値向上のために、採用・育成、研究開発、製品開発、M&A(企業買収)などに積極的な投資を行う計画を明確にしている。具体的には、採用と育成に4億円、研究開発に2億円、そしてM&Aや資本業務提携に20億円の投資を予定しており、成長加速のための基盤づくりに注力する。さらに、新卒採用を社員数の1割を目安に継続し、パートナー企業との連携を強化することで、SE不足の解消を図る方針である。
一方、社会価値の向上にも力を入れている。具体的には、社員一人ひとりのモチベーション向上と働きがいを支えるために、職位や技術、キャリアビジョンに応じた研修や教育制度を提供している。これにより、社員の成長を促しつつ、ESG(環境・社会・ガバナンス)及びSDGs(持続可能な開発目標)を意識したサステナブル経営を目指している。また、働き方改革の推進や人材育成に関する取り組みを強化し、女性社員や女性管理職比率の向上を目指すなど、多様性を取り入れた人材戦略を展開している。さらに、学生向けAI教育や地域貢献活動としての長崎県ふるさと納税支援、Jリーグ「V・ファーレン長崎」の応援活動など、社会的意義のある活動にも取り組んでおり、企業の社会的責任を果たしつつ、地域社会への貢献を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
《HN》
提供:フィスコ