ユニリタ Research Memo(4):2025年3月期中間期は減収減益
■決算動向
1. 2025年3月期中間期決算の概要
ユニリタ<3800>の2025年3月期中間期の業績は、売上高は前年同期比3.0%減の5,747百万円、営業利益は同26.9%減の368百万円、経常利益は同18.2%減の506百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同29.7%減の290百万円と減収減益となった。
売上高は、旺盛なマイグレーション需要を捉えた自動化事業の伸長などにより「プロダクトサービス」が好調に推移したものの、「クラウドサービス」における新規受注の出遅れや「プロフェッショナルサービス」(SI事業)における既存パートナーからの受注減により減収となった。
損益面でも、減収による収益の下押しに加え、主に「クラウドサービス」におけるサービス提供体制強化のための人員増強及び新規顧客獲得に向けた広告宣伝費の増加、さらには「プロフェッショナルサービス」における人材教育の強化に伴う費用増などにより減益となった。営業利益率も6.4%(前年同期は8.5%)に低下している。
財政状態については特筆すべき動きはなく、総資産は前期末4.0%減の15,138百万円に縮小した。一方、自己資本は同0.3%増の11,762百万円とほぼ横ばいで推移したことから、自己資本比率は77.7%(前期末は74.4%)に改善した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) プロダクトサービス
売上高は前年同期比7.2%増の2,262百万円、セグメント利益は同21.8%増の688百万円と増収増益となった。売上高は、1) 自動化事業が、「2025年の崖」問題※1に伴うマイグレーション需要※2を捉え、主力商品「A-AUTO」などが大きく伸長した。2) 帳票事業も「まるっと帳票クラウドサービス」がDX推進や業務効率化を進める企業ニーズに対応して順調に伸びている。3) 市場が縮小傾向にあるメインフレーム事業についても、メインフレームベンダーの市場撤退による新規顧客獲得や海外顧客のシステム増強及びサービス提供形態の見直しなどにより大きく上振れた。一方、当サービス全体の損益は、クラウド基盤の仕入原価高騰による影響を受けたものの、増収による収益の押し上げ(特に、利益率の高いメインフレーム事業の上振れ)により大幅な増益を実現することができた。
※1 経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」と呼ばれる資料の中で使用された用語。本レポートでは、日本国内の企業が市場で勝ち抜くためにはDXの推進が必要不可欠であり、DXを推進しなければ業務効率・競争力の低下は避けられないとしており、競争力が低下した場合の想定として、2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円もの経済損失が発生すると予測されており、これを「2025年の崖」と表現している。
※2 システムやハードウェア、ソフトウェア、データなどを現在とは別の環境やプラットフォーム、バージョンに移行すること。富士通のメインフレーム撤退によるレガシーマイグレーションなども含む。
(2) クラウドサービス
売上高は前年同期比2.8%減の1,716百万円、セグメント損失は274百万円(前年同期は50百万円の損失)と減収及び損失幅が拡大した。売上高は、1) IT活用クラウドが前年同期比2.3%減となった。サービスシフトと品質向上の両立を目指す企業からのサービスマネジメント導入ニーズが拡大するなかで、主力商品「LMIS」は好調に推移した。一方、データマネジメント案件及び情報セキュリティを含むID管理及びSSO案件などへの引き合い増を受けて、「Waha! Transformer」(データ加工・連携クラウドサービス)や「infoScoop×Digital Workforce」(リモートワーク推進サービス)の提案件数は増えたものの、新規獲得の伸び悩みや大型案件の失注などが下振れ要因となった。2) 事業推進クラウドは前年同期比6.0%増となった。リモートワークから出社勤務に戻す企業の増加やパートナーとの協業の成果により「らくらくBOSS」(通勤費管理サービス)が伸びたほか、「Growwwing」(カスタマーサクセスの立ち上げと成長支援サービス)はコンサルティングを含めた案件の引き合いが増えているようだ。一方、「Digisheet」及び「The Staff-V」(人材派遣業向け人事管理サービス)は景気回復に伴う人材派遣業界の活況により案件は増加傾向にあるものの、受注プロセスに課題を残し想定よりも伸び悩んだ。3) ソーシャルクラウドは前年同期比32.0%減となった。高齢運転者の免許返納問題や交通空白地の課題を解決する手段として、持続的社会の構築を支援するデジタル基盤「Community MaaS」の引き合いが地方自治体や公共交通機関などから増加しているものの、上期成約には至らなかった。また、当サービス全体の損益は、減収による収益の下押しに加え、サービス提供体制増強による人件費増や新規獲得に向けた広告宣伝費の増加により損失幅が拡大した。
(3) プロフェッショナルサービス
売上高は前年同期比13.8%減の1,768百万円、セグメント利益は同44.2%減の99百万円と減収減益となった。売上高は、1) コンサルティング事業が前年同期比0.2%減となった。旺盛なコンサル需要を捉え、データマネジメント領域の受注が伸長した一方、サービスマネジメント領域が伸び悩んだ。2) システムインテグレーション事業は前年同期比24.8%減となった。大口パートナーからの受注減少及び一括請負案件の減少が響いた。3) アウトソーシング事業は前年同期比17.9%増となった。DX投資を背景としたシステム運用のアウトソーシング需要が拡大し、受注残も順調に積み上がっているようだ。当サービス全体の損益についても、減収による収益の下押しや人材教育の強化に伴う費用増により大幅な減益となった。
2. 2025年3月期中間期の総括
今期より中期経営計画「Re.Conecct 2026」がスタートしたが、将来を見据えた先行費用による影響を含め、足元業績はスローな立ち上がりとなった。特に「クラウドサービス」における出遅れは、個社ニーズや要件の多様化に対応した受注プロセスにきめ細かさが足りず、新規獲得が伸び悩んだことに起因するが、課題を解決すべくサービス提供体制の整備やプロモーション強化などに迅速に取り組んでおり、その点は今後に向けてポジティブに評価したい。また、中計で掲げるグループ一体となったエコシステム案件の創造に向けてもまだこれからという印象であるが、解決すべき課題が明確になったことや各方面で需要が拡大しているところはプラスの材料と言え、新たに設立したグループ戦略推進室を中心とする今後の展開に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《HN》
提供:フィスコ