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9235 売れるネット広告社

東証G
1,448円
前日比
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時価総額 50.0億円
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売れるネット広告 Research Memo(8):成長戦略実行に向けて、「不正注文」対策を講じ、M&Aを開始した


■売れるネット広告社<9235>の業績動向

1. 2024年7月期の業績動向
2024年7月期の業績は、売上高756百万円(前期比21.1%減)、営業損失308百万円(前年同期は151百万円の営業利益)、経常損失315百万円(同166百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失326百万円(同113百万円の当期純利益)となった。当初予想に対して売上高で295百万円、営業利益で558百万円の未達となり、減収減益となったが、これは、上場を機にM&Aなど事業拡大に向けてアクセルを踏み始めたこと、従来課題だった「不正注文」への対策を実施したことが要因で、成長戦略によって2025年7月期から成長を加速するために必要な処置だったと言える。

日本経済は、経済活動の正常化が進み、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大で緩やかな回復が見られた。同社が属するEC業界では、国内外でEC市場規模が急速に拡大する一方、WEBマーケティング広告では「不当景品類及び不当表示防止法(景表法)」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」など規制が厳しさを増し、より慎重な広告表現が求められる状況となった。こうした事業環境のなか、同社は法規制などを遵守しつつ、A/Bテストを繰り返すことで広告効率の向上に努めた。また、2024年2月にグルプスとオルリンクス製薬の2社の株式を取得、売れる越境EC社、売れるD2C業界M&A社の2社を子会社として新設するなど、サービス領域の拡大を積極的に推進した。

この結果、売上面では、オルリンクス製薬が成長を開始したものの、「不正注文」対策により広告の表現や運用方法を見直したため広告効率が悪化し、減収となった。利益面では、広告効率の悪化などにより売上総利益率が低下し、M&Aや子会社設立などにより販管費が増加、営業損失となった。また、一過性の費用として2023年10月23日に東証グロース市場へ上場したことに伴う上場関連費用が発生、加えて2024年7月期と今後の業績動向を踏まえて繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、繰延税金資産を取り崩したことで法人税等調整額を計上、営業損失以上に経常損失と当期純損失が広がった。


デジタルマーケティング支援の収益が一時的に低下

2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業が売上高674百万円(前期比29.7%減)、セグメント損失が311百万円(前期は151百万円のセグメント利益)、D2C(ネット通販)事業が売上高82百万円、セグメント利益2百万円となった。

D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業では、主力の「売れるD2Cつくーる」と「最強の売れるメディアプラットフォーム」に加えて、2024年2月よりグルプスが提供する「運用型広告」、売れる越境EC社が提供する「越境支援」、売れるD2C業界M&A社が提供する「M&A仲介支援」を事業として開始した。売れるネット広告社については、転売目的や詐欺目的で商品を購入しようとする悪質な「不正注文」の対策を集中的に実行したため、コンバージョン率が低下して成果報酬型広告の売上高が減少するとともに、一部大手クライアントの広告効果が悪化し、売上高が軟調に推移することとなった。ランディングページの制作サービスも、テンプレートモードの品質向上を進めたものの受注が想定に届かなかった。グルプスも、第4四半期に売上高が大きく伸長することを想定して第3四半期に金融案件向けに運用広告に関する先行投資を行ったものの、広告運用のアルゴリズム変更などがあったため、収益悪化を避けるべく広告運用を成果報酬型から少額運用に切り替えたことで、売上高が想定に届かなかった。また、売れる越境EC社及び売れるD2C業界M&A社については、第3四半期を準備期間、第4四半期を本格稼働期と考えていたが、立ち上げに時間を要したことから、収益計上を2025年7月期以降に先送りした。一方、オルリンクス製薬のM&Aで立ち上げたD2C(ネット通販)事業は、モールを中心に初動で広告費をかけずにSNSを多用したソーシャルEC戦略を展開、シートマスク「KogaO+」が人気となり、売上高、セグメント利益ともに堅調に推移した。


サービス領域を拡大しつつ黒字転換を目指す

3. 2025年7月期業績見通し
同社は2025年7月期の業績見通しについて、売上高を1,635百万円(前期比116.2%増)、営業利益を3百万円(前年同期は営業損失308百万円)、経常利益を7百万円(同経常損失315百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益4百万円(同親会社株主に帰属する当期純損失326百万円)を見込んでいる。当初公表していた計画に比べて売上高で500百万円ほど上方修正されたが2024年8月22日にM&Aが完了したJCNTの売上高を追加したことが要因で、営業利益についてはJCNTの増収効果とM&A関連費用で相殺されるため修正しなかった。

同社は企業理念を実現するためサービス領域の拡大を進めており、2024年7月期に3社をM&A、子会社2社を新規設立、新規4事業を開始、出資を1社、業務提携を1社したが、引き続き戦略的な投資を継続する計画で、クライアント数の増加や新商品の開発などによりサービス領域の拡大を図る。2025年7月期は、2024年7月期にグループインした企業の通期業績への寄与が見込まれ、加えて、2024年8月にM&AしたJCNT(グローバル通信事業)も通期業績へ寄与する見込みである。2025年7月期に入ってのサービス領域の拡大は、JCNTに加え、10月に福岡のFM放送CROSS FM、スクロールグループの子会社で後払い決済に特徴のあるキャッチボールと業務提携、11月には日本企業で初めて中国「小紅書(RED)」に百貨店タイプのストアページを開設するなど意欲的である。グループインした新規子会社などの立ち上げ費用に加え、新たなM&Aの費用など先行投資が見込まれるが、グループ企業を着実に収益化して通期で黒字転換を目指す。

同社は、セグメント別では、D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業が「不正注文」への対策が一巡することから、売上高は売れるネット広告社とグルプスが2ケタを超える伸び、分母が小さいこともあるが売れる越境EC社及び売れるD2C業界M&A社がさらに大きく伸びると考えている。利益面では、売れるネット広告社とグルプスは損失が縮小、売れる越境EC社及び売れるD2C業界M&A社は黒字化し、事業全体としても損失が大きく減ると想定した。オルリンクス製薬は急成長しており、売上増に見合った体制を構築するためセグメント損失を予想、JCNTは収益体質が確立しているため全体業績の黒字化への貢献を見込んだ。なお、JCNTは売上高実績が700百万円強あることから、業績予想にはやや保守的に織り込んだ模様である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《HN》

 提供:フィスコ

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