スカラ Research Memo(1):IT及び人材事業にリソースを集中し、2025年6月期はV字回復を目指す
■要約
スカラ<4845>は、「倫理的価値観を持つ」「社会的責任を全うする」「永続的に繁栄する」という企業理念のもと、IT事業を主軸としてM&Aを活用しながら事業を拡大してきたが、業績の悪化を受けて2024年6月期に思い切った事業構造改革を実施し、2025年6月期からは新経営体制下で業績の立て直しに取り組んでいる。
1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の継続事業※の売上収益は前期比9.5%減の10,714百万円、営業損失は2,155百万円(前期は397百万円の利益)となった。売上収益はEC事業が順調に拡大したものの、DX事業におけるシステム開発案件の減少やGoToトラベル事業及び全国旅行支援事業終了による影響で減収となった。利益面では、DX事業の減収に加えて、事業構造改革に伴う減損損失や特別退職加算金、オフィス解約違約金等の一時費用を約23億円計上したことが悪化要因となった。これら一時費用を除いたNon-GAAPベースでは203百万円の営業損失(同359百万円の利益)となっている。
※ 2023年6月期以降に連結子会社から外れた(株)コネクトエージェンシー及び(株)readytowork(DX事業)、(株)フォーハンズ、(株)スポーツストーリーズ及び(株)ブロンコス20(旧 人材・教育事業)、ジェイ・フェニックス・リサーチ(株)(インキュベーション事業)を非継続事業として分類し、2023年6月期及び2024年6月期の売上収益、営業利益から控除している。
2. 2025年6月期の業績見通し
2025年6月期の業績は、売上収益で前期比5.7%減の10,100百万円、営業利益で550百万円と2期ぶりに黒字転換する見通し。売上収益は不採算となっていた(株)レオコネクト(2024年6月期売上高1,049百万円)を清算した影響等により減収となるものの、前期に計上した一時費用がなくなるほかDX事業におけるシステム開発案件の回復やEC事業の増収が寄与する。DX事業では、システム開発では金融サービス企業向けの大型案件が寄与するほか、ここ数年パートナー企業と共同で開発取り組んできたヘルステック分野の新規事業が立ち上がる見通しだ。EC事業では、増収効果に加えて開発費の減少やAI技術導入による生産性向上が見込まれる。また、人材事業についても旺盛な需要が続く新卒採用支援に加えて、新たに開始した中途採用支援サービスが寄与する。同社は前期に大幅損失を計上したことでステークホルダーからの信頼感が低下しているとの危機感を持っており、まずは信頼回復に努めるため業績計画の必達並びに上振れを目標に掲げている。弊社では事業構造改革の効果も考慮すれば、会社計画は保守的で上振れの可能性も十分にあると見ている。
3. 今後の経営戦略と株主還元方針
同社は業績悪化を受けて、2023年8月に公表した中期経営計画「2024-2026」を取り下げ、直近の事業環境等も踏まえて新たな中期経営計画を策定する方針を発表した。今後の経営戦略としては、IT事業(DX事業及びEC事業)と人材事業を主軸に成長を目指すとともに、前期までに実施できなかった事業の売却なども進めながら安定した収益基盤を構築する方針だ。また、株主還元方針については安定配当の継続を基本とし、2025年6月期以降は適正な内部留保の水準に照らし、子会社等の株式売却益等の特殊要因を除いた税引前利益ベースで50%を目安とすることにした。同方針に基づき、2025年6月期の1株当たり配当金は前期の37.5円から16.0円(1株当たり税引前利益の51.3%に減配することになるが、同社は収益を成長軌道に乗せることで2026年6月期以降に再び増配を目指す考えだ。
■Key Points
・2024年6月期は事業構造改革に伴う一時費用の計上により損失を計上
・2025年6月期の営業利益はV字回復し、2021年6月期以降で最も高い水準を目指す
・IT及び人材事業を主軸に展開し、新経営体制下で再成長を目指す
・2025年6月期は配当方針変更により減配予定だが、2026年6月期以降は再び増配を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
提供:フィスコ