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【特集】バブル崩壊後、ベゾスを覚醒させた賢者の助言 アマゾン・ドット・コム④ Buy&Hold STORIES-4-

Buy and hold Stories

アマゾン・ドット・コム<AMZN>
第2章Part4



第2章 株価低迷期に始まったアマゾン躍進を担う2大プロジェクト


4.バブル崩壊後、ベゾスを覚醒させた賢者の助言



【タイトル】
※株価単位はドル。株式分割を考慮後の修正値


「早くでかく」から「早くまともに」、株価暴落でベゾスが出した答え

 ジェフ・ベゾスが『タイム』誌の表紙を飾り、アマゾン・ドット・コム<AMZN>の株価が当時のピークを付けた1999年のクリスマスシーズン。このシーズンの売上高は前年同期比で95%増と大盛況のうちに幕を閉じた。新規参入した玩具は、ベゾスの指示で大量入荷したおかげでかなりの量が売れ残ったそうだが、これは想定の範囲内。新たなライバルとして登場したトイザらスのネット販売が商品管理の混乱で悪戦苦闘をするのを尻目に、顧客たちにアマゾンの玩具販売を印象付けることに成功した。

 ベゾスは翌年春に公開された99年12月期の「株主への手紙(ベゾス・レター)」の文末で、こんなことを株主たちに伝えている。

 「最後にもっとも重要な点をお伝えします。それは現在のオンラインショッピングの体験は最悪で、これから良くなっていく以外ない、ということです。〈中略〉今後、さらにネット環境が改善されれば、常時接続が可能になり、パソコン以外のデバイスやワイヤレス接続が急拡大するはずです。そうなれば膨大なグローバル市場に参加することができるようになります。そんな中、アマゾンはまだ小さな、小さな存在に過ぎません。私たちは二重に恵まれています。市場規模が青天井の領域で事業を行っていること。しかもその土台となるテクノロジーが日々進化していることです。これは千載一遇のチャンスなのです」

 だが、2000年に入ると、マーケットはドット・コム企業に対して、さらに懐疑的になっていった。アマゾンの株価も99年12月9日の5.65ドル(その後の株式分割を反映した修正値。以下同)をピークに翌2000年1月31日には2.92ドルへと、わずか2カ月足らずでほぼ半減。「ベゾス・レター」でバラ色の将来像を訴えたにも関わらず、その後も同社の株価は下げ止まらなかった。

 アメリカの株式市場でも異変が明らかになっていた。99年初頭から浮かれたようにドット・コム企業ならどんな企業にでも資金を投入していた投資家たちが、一転して投資を逡巡するようになっていた。ハイテク関連の新興企業が多いナスダック総合指数<^IXIC>も、2000年3月にピークを付けると、その後は悲観一色になり、90年代後半に右肩上がりで上昇したのと同じ勢いで下落していった。

 こうした社会の変化に、アマゾン社内でも危機感が高まっていた。それまでのドット・コム・ブームの中では、ベゾスがバラ色の未来を語れば、たとえ足もとの業績が赤字決算であっても投資家は資金を投じてくれていたが、そんな悠長なことは言っていられなくなった。相変わらず資金需要が旺盛な同社は、株式市場以外にも、転換社債の発行などで投資マネーを呼び込んでいたが、実は99年の株価急落時には、転換社債で調達した資金がなければ、債務不履行に陥っていただろうと言われるほど、財務状況は火の車だったのだ。

 そんな中、ベゾスもようやく考えを変化させた。大きくなる前にまず、経営体制を整えなければならないと考えるようになったのだ。アマゾンの社内向けのキャッチ・フレーズも、それまでは長らく「早くでかくなる」だったが、「早くまともになる」に変わり、さらに「規律、効率、無駄の排除」へと変更された。2000年1月には、創業以来、初めて大規模なレイオフ(一時解雇)を実施し、1500人の人員を削減した。結果的に長続きはしなかったが、ジョー・ガリをCOO(最高執行責任者)として招へいしたのも経営合理化が目的だった。この時期のアマゾンは、それまでの採算を度外視した拡張一辺倒の路線を改め、まずはコスト削減を優先する路線にシフトしていたのだ。

 だが、株式マーケットは、多くのドット・コム企業と同様に、いやそれ以上に厳しい視線をアマゾンに向けるようになっていた。ウォール街のアナリストで、ハイテク企業やバイオ企業などの研究で知られ、のちにアマゾンの宿敵と評されるようになるラビ・スリアはその急先鋒だった。
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