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【特集】三井郁男氏【日経平均一時2000円安、石破政権誕生で調整続くのか?】 <相場観特集>

三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)

―金融所得課税強化の主張で警戒感、「10月27日総選挙」で株高アノマリーを意識―

 週明け30日の東京株式市場で、日経平均株価は前週末比1910円01銭安の3万7919円55銭と急落。下落幅は一時2000円を超えた。前週末27日の自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に選出され、新政権が発足する。これに伴い、積極財政・金融緩和志向の高市早苗経済安全保障相による政権誕生とその後の株高を見込んだポジションのアンワインドが発生した。石破新総裁は金融所得課税強化を主張しているが、早期に衆院を解散し、10月27日に総選挙を実施する方針を明らかにしている。波乱含みの展開が警戒される10月相場の方向性は上か下か。アイザワ証券・投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏に話を聞いた。

●「調整一服後は企業業績支えに4万円近辺へ」

三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)

 高市経済安保相の新総裁誕生への期待がはく落し、日本株は大幅安となった。ボラティリティの高い局面に差し掛かっているが、石破新総裁の先週金曜日以降の発言からは、景気回復の流れに水を差したくないとの意向を感じとることができる。党役員や閣僚人事の報道からはバランスに配慮しているという印象が強く、「石破色」を出すよりも、岸田政権の路線を踏襲するというのがベースシナリオとなるだろう。賃金の上昇を背景とした経済の好循環や、貯蓄から投資といった資産運用立国の実現に向けた従来の政策に関しても、これらを否定するような言動が示されることは考えにくい。

 とはいえ、8月初旬に「植田ショック」とされる株価急落が発生したこともあり、投資家は神経質になっている。新政権発足後の政策面での不透明感を意識した投資家の売りがかさむことで株価水準が一段と切り下がるリスクがあり、3万7000円を下回る場面もみられそうだ。一方で、解散総選挙となれば株高というアノマリーも存在する。為替相場は9月30日に一時1ドル=141円台をつけ、かつてと比べ円高水準にあるものの、企業業績に関して言えば、アナリスト予想の上方修正と下方修正の割合をもとに算出するリビジョン・インデックスは改善傾向となっている。円高基調でも企業業績が懸念されているほど悪化しないのであれば、日本株を下支えする要因となるだろう。日銀による利上げペースが従来の想定より緩やかなものとなるとの期待感も、直近では広がりつつある。相場のボラティリティが低下し、10月後半から本格化する3月期企業の中間期の決算発表を受けて企業業績を巡る懸念が後退する形となれば、日経平均はやがて4万円近辺に戻っていくだろう。

 日銀の金融政策が正常化に向かう方向性に変化がないとすれば、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]といったメガバンクには見直し買いが入りやすい。実質賃金がプラス圏で推移するなかでは、消費関連株が選好されるとみられ、百貨店株も一本調子に下げ続ける展開にはならないに違いない。IT関連投資を背景に、野村総合研究所 <4307> [東証P]やNTTデータグループ <9613> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]なども堅調に推移しそうだ。更に、三菱重工業 <7011> [東証P]など防衛関連株はこの先も多くの投資家にマークされることとなるはずだ。中小型株よりも大型株のパフォーマンスが優位となる展開が続くと想定している。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(みつい・いくお)
1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年近く続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。

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