来週の相場で注目すべき3つのポイント:GDP速報値、米CPI、米小売売上高
■株式相場見通し
予想レンジ:上限36000円-下限33500円
8月8日の朝方、日銀が7月30日-31日に開催した金融政策決定会合の「主な意見」を発表した。主な意見では「2025年度後半の物価安定の目標実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべき」「中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある」と記載があった。この発言主はわからないが、植田日銀総裁が記者会見で発したコメントとほぼ同じであるので、植田日銀総裁の可能性はある。
植田日銀総裁が7月31日の記者会見で残した「タカ派」姿勢は、7日の内田日銀副総裁によって、いったんは打ち消した格好だが、この主な意見を受けて、日銀は「ハト派」なのか「タカ派」なのか、市場の疑心暗鬼は残った。主な意見は7月30-31日の話なので、最新の内田日銀副総裁の発言が、今の日銀のスタンスと捉えられそうだが、株式市場、為替市場、金利市場はいずれも方向感を失ったままである。不透明感が解消されないことから、腰を据えた投資資金の流入は期待できそうにない状況だ。
9日の米国株式市場は続伸。ダウ平均は前日比51.05ドル高(+0.13%)の39497.54ドル、ナスダックは同85.28ポイント高(+0.51%)の16745.30、S&P500は同24.85ポイント高(+0.47%)の5344.16で取引を終了した。大証ナイト・セッションの日経225先物は、通常取引終値比250円高の35300円で取引を終えたほか、為替は1ドル=146円台半ばと外部環境は徐々に落ち着きを取り戻している。日経平均は小康状態を迎えているが、1987年のブラックマンデー、2001年のITバブル崩壊、2008年のサブプライムショック、2020年のコロナショックといった歴史的な暴落時は、いずれも10営業日前後に二番底を付ける動きが見られた。ボラティリティが急上昇したことで上下に振れやすい地合いとなっていることから、想定以上に動く可能性は十分残っている。5日の10営業日前後は、機関投資家の多くがお盆休みに入っており商いが閑散している時期となる。5日の終値31458.42円、取引時間中の安値31156.12円を下回るような二番底には警戒しておきたい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。直近発表の米経済指標は弱さが目立つ。8月14日に発表される7月消費者物価コア指数(CPI)が市場予想を下回った場合、インフレ鈍化が鮮明になり、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げへの思惑を後押ししよう。FRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で50bpの利下げを検討する可能性がある。15日の小売売上高は前月比で改善が予想されるものの、同時に発表されるフィラデルフィア連銀製造業景況指数は前回から悪化が見込まれ、景気減速懸念を強める材料になりやすい。
ただ、日米の株式相場が安定すればリスク回避の円買いは後退しよう。日本銀行による金融正常化への期待が後退すれば円売りも見込まれる。日銀副総裁のハト派的見解で早期利上げ観測は後退しており、現時点でリスク回避の米ドル売り・円買いが急速に拡大する可能性は低いとみられる。
■来週の注目スケジュール
8月12日(月):株式市場は祝日のため休場(山の日の振替休日)、印・消費者物価指数(7月)、中・不動産2社(世茂集団と時代中国)の清算申し立てを巡る香港裁判所での審理、米・ニューヨーク連銀インフレ期待(7月)など
8月13日(火):国内企業物価指数(7月)、独・ZEW景気期待指数(8月)、米・生産者物価コア指数(7月)、米・アトランタ連銀総裁が講演など
8月14日(水):NZ・ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、英・消費者物価コア指数(7月)、欧・ユーロ圏GDP改定値(4-6月)、欧・ユーロ圏鉱工業生産(6月)、米・消費者物価コア指数(7月)など
8月15日(木):GDP速報値(4-6月)、中・新築住宅価格(7月)、中・中古住宅価格(7月)、中・不動産投資(7月)、豪・失業率(7月)、英・GDP速報値(4-6月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月)、米・新規失業保険申請件数(先週)、米・小売売上高(7月)、米・セントルイス連銀総裁が講演、米・フィラデルフィア連銀総裁が講演など
8月16日(金):英・小売売上高指数(7月)、台湾・GDP(4-6月)、香港・GDP(4-6月)、米・住宅着工件数(7月)、米・住宅建設許可件数(7月)、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(8月)、米・シカゴ連銀総裁が討論会に参加など
《CN》
提供:フィスコ