iーplug Research Memo(10):「ローリングプラン2023」を取り下げ、中長期的な事業戦略を見直す
■i-plug<4177>の中期経営計画
1. 今後の中長期戦略
中期経営計画「ローリングプラン2023」において、「OfferBox」は受注が増え決定人数も増加して高い成長を継続し、新卒全体に価値提供を広げられたため、非常に順調だったといえる。「eF-1G」も堅調に推移し、体制もできあがってきたところである。しかし、新規事業の立ち上げやPMIなどに課題が残ったため、2024年2月に、「PaceBox」サービス終了の発表と同時に、「ローリングプラン2023」を取り下げ、中長期的な事業戦略の見直しに入った。見直しの結果、今後は規律をもった投資による既存領域※の着実な成長と、新卒領域以外での事業開発と利益成長の両立を目指す。つまり、既存領域で着実に成長するため、伸びしろが大きい主力事業「OfferBox」に規律をもった投資を継続し、価値提供範囲を着実に広げていく計画である。また、新卒領域以外で事業開発と利益成長を両立するため、新規事業への挑戦を継続するとともに、規律をもって価値の確立を目指した投資を行い、一定の利益額と利益率の伸びを確保する方針である。
※既存領域:2020年3月期時点で事業を行っていた「OfferBox」事業や適性検査事業など。
規律ある投資及び事業開発と利益成長の両立を進める
2. 中長期的な事業戦略
中長期的な事業戦略の実現に向けたマイルストーンを2031年3月期に改めて設定するが、不確実性の高い市場環境に対応するため、前後半の2つのステップに分けて事業戦略に取り組むこととした。前半3ヶ年(2025年3月期?2027年3月期)を挑戦期と位置づけ、新卒領域の継続的成長と新卒以外の領域での価値確立を目指し、「OfferBox」の進化と価値提供範囲の拡大、新卒以外の領域での事業開発を推進する。後半4ヶ年(2028年3月期?2031年3月期)は飛躍期と位置付け、新卒領域のさらなる進化と「第2の柱」の確立によって成長を加速し、収益の拡大を目指す。数値目標の詳細は公表していないが、これにより、前半3ヶ年では売上高で年平均成長率20%台、営業利益で年平均成長率30%台の成長を実現する考えである。
(1) 規律を持った投資による既存領域の着実な成長
主力事業である既存領域の「OfferBox」が着実に成長を続けているため、2020年3月期から2024年3月期の既存領域の年平均成長率は29.6%と高い成長性を実現できた。一方で、マーケット占有率から伸びしろが大きいうえ、紹介型の「OfferBoxPLUS」による価値提供範囲の拡大で成長余地の広がりも示した。このため、「OfferBox」の成長ドライバーとなる、売上高の約70%を占める早期定額型の顧客増加とアップセルに向けて、法人向けマーケティングや企業向けカスタマーサクセス、プロダクト開発、学生向けマーケティングに適切な規模の投資を実施することで決定人数を最大化し、今後も高い売上高の伸びを見込む。
このうち、学生向けマーケティングは順調に推移しているが、法人向けマーケティングや企業向けカスタマーサクセスについては、より科学的なアプローチや人員・営業管理の改善を推進する。特にプロダクト開発は最重要戦略で、例えば、同社の場合、パソコンやスマートフォンのブラウザを通して利用している学生が多く、そのためIDやパスワードをなくしたり、企業からのオファーに気付かなかったりすることで「OfferBox」から離脱する学生も意外と多いようだ。そこで、そういう心配が少なく利便性の高いスマートフォンアプリの改良を進め、利用を促すことで、離脱を防ぎ承認数を増やす考えである。
(2) 新卒領域以外での事業開発と利益成長の両立
長期持続的な成長に向けて、第2の収益の柱となる新領域の事業開発を引き続き進めていく。挑戦期は新卒領域の継続的成長と中途など新卒以外領域での価値確立、飛躍期には新卒領域、People Analytics領域に加えて第2の柱によって収益の拡大を狙う。特に新領域に関しては、2024年3月期の業績には多くの反省点があるが、「PaceBox」については反省すべき点は多い(その分経験値も多くなる)ものの、その他の新規事業については「OfferBox」とのシナジーを早急に求めすぎただけで、相性や業況から遠からずシナジーを創出できると見られる。その点で「OfferBox」の成長に貢献していくと期待できるため、そうした既存事業の成長を原資に、飛躍期までを見据えた事業開発投資を適切な規模で実行し、高い利益成長を実現していく考えである。
その際、引き続きM&Aにも取り組む方針である。M&Aについては、既存事業の収益性と投資金額を分離して管理することで、収益と投資をバランスできた点についてなど評価できる面も少なくない。しかし2024年3月期業績を受け、規律ある投資及び事業開発と利益成長の両立を踏まえたうえで、全社的リスク許容量の見極め、個別案件ごとの内容精査、デューデリジェンスやPMIの体制を一層強化していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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提供:フィスコ