ウェーブロックHD Research Memo(7):マテリアルソリューション事業の収益性改善が進む
■ウェーブロックホールディングス<7940>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) マテリアルソリューション事業
マテリアルソリューション事業の売上高は前期比1.8%減の17,739百万円と若干の減収に転じたものの、営業利益は同64.6%増の1,018百万円と3期ぶりの増益に転じ、利益率も前期の3.4%から5.7%と2期前の水準まで回復した。営業利益は前期比で399百万円の増益となったが、原材料価格上昇分の売価転嫁や不採算品の見直しにより200百万円、原材料及びエネルギーコストの抑制や製造コストの改善により550百万円の増益となり、販売数量減少に伴う減益350百万円を吸収した。四半期ベースでは、第4四半期の売上高が前年同期比8.0%減の4,579百万円、営業利益が同83.0%減の36百万円と減収減益となったが、これは3月にシーズンインするホームセンター向けの販売が低調だったことに加えて、長期滞留在庫の評価減を数千万円計上したことが主因だ。
ソリューション別の動向は、以下のとおり。
リビングソリューションの売上高は前期比2.6%減の4,671百万円となり、コロナ特需のあった2021年3月期※をピークに3期連続で減少した。サッシメーカー向けの販売は順調に増加したものの、ホームセンター向けの販売が期を通して低調だった。
※2021年3月期は新型コロナウイルス感染症対策や巣ごもり需要もあって張替用防虫網の販売が大きく伸張し、5,511百万円の売上を計上した。
ビルディングソリューション及びインダストリアルソリューションの売上高は前期比2.5%減の3,772百万円と減収に転じた。路面標示材の販売が堅調に推移したものの、前期に大型物件を受注し好調だった商業施設向けの防煙垂壁用高透明不燃シートが反動減となり減収要因となった。ただ、原材料価格上昇分の売価転嫁が進んだほか、不採算品の見直しを行ったこともあり、利益率は改善した。
パッケージングソリューションの売上高は前期比13.4%増の4,630百万円と好調を持続した。原材料価格上昇分の売価転嫁が進んだことに加えて、食品包装用で新規採用が進んだこと、また生産体制の強化による生産効率の改善を図ったことで増収増益となった。アグリソリューションの売上高は前期比11.5%減の2,597百万円と減収に転じた。エネルギーコストの上昇により農業生産者の資材への投資意欲が減退し、遮光ネット等農業資材の販売が減少した。
その他の売上高は輸入商品の販売減により同13.2%減の2,046百万円となった。また、地中熱ビジネスの売上高は園芸施設を中心に導入が進み、前期の31百万円から91百万円と3倍増となった。会社計画では130百万円を見込んでいたが、今後の売上獲得のベースとなる体制強化を優先した。
(2) アドバンストテクノロジー事業
アドバンストテクノロジー事業の売上高は前期比28.5%増の5,841百万円、営業利益は同88.5%減の41百万円となった。売上高は韓国子会社で液晶テレビモニター用導光板の仕入販売が大きく伸長し2期ぶりの増収に転じたものの、営業利益は自動車向けフィルム販売の減少や設備投資に伴う減価償却費の増加(164百万円増)、パーツ成形品の米国新工場の立ち上げ負担増などにより減益となった。ただ、四半期ベースの営業利益では第1四半期の44百万円の損失を底に回復傾向が続き、第4四半期は54百万円の利益(前年同期は107百万円の損失)を計上した。
分野別売上動向を見ると、デコレーション&ディスプレー分野は前期比5.3%増の3,251百万円となった。金属調加飾フィルムは、2023年春より米国で量産を開始したEV向けパーツ成形品(スキッドプレート)が大きく伸長したが、採用車種(ガソリン車)の早期生産終了により中国向けが大きく減収となったほか、国内向けも顧客先の生産停止が影響して減収となった。インドや東南アジア向けは自動二輪車向けを中心に横ばいにとどまった。一方、自動車向け内装ディスプレー用途の高透明多層フィルムも、欧州メーカー採用車種の中国市場での販売不振が響いて減収となった。
コンバーティング分野の売上高は薬価改定等の影響もあって顧客先からの受注量が減少し、前期比14.6%減の904百万円となった。その他分野の売上高は同324.9%増の1,684百万円と急増した。韓国大手メーカー向けに新たに液晶テレビモニター用導光板の受注を獲得したことが主因だ。ただ、仕入販売品となるため利益への影響は軽微となっている。
自己資本比率は50%以上で財務内容は健全性を維持
3. 財務状況と経営指標
2024年3月期末の資産合計は前期末比2,191百万円増加の28,460百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が127百万円、営業債権が800百万円、たな卸資産が309百万円それぞれ増加した。固定資産では金属調加飾フィルムの能力増強投資等により有形固定資産が323百万円増加したほか、RP東プラの株式取得に伴い投資有価証券が636百万円増加した。
負債合計は前期末比1,913百万円増加の12,348百万円となった。未払法人税等が339百万円減少した一方で、有利子負債が1,823百万円増加した。純資産合計は同278百万円増加の16,111百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上456百万円に対して、配当金254百万円を支出した。
経営指標を見ると、有利子負債の増加に伴い有利子負債比率が33.0%と前期末比11.0ポイント上昇したものの水準としては低く、自己資本比率も56.6%と高水準で推移していることから、財務内容は健全な状況にあると判断される。有利子負債の増加は、RP東プラの株式取得や今後の成長投資による。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ