貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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4063 信越化学工業

東証P
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PTS
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00:06 12/13
業績
単位
100株
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20.1 2.28 1.96 20.53
時価総額 107,587億円
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決算発表の月に、なぜか株価が上向く「決算アノマリー」銘柄を探せ

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第135回
大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「さあ3月期決算の発表シーズン、サプライズは『楽観予想進捗率』で狙え!」を読む

いよいよ、2024年3月期決算の発表が本格化します。

その注目点には、急速に進行する円安の影響や今期の為替前提、そして高水準の賃上げが収益性にどの程度のインパクトを与えるかなどが挙がります。

こうしたファンダメンタルズ面の分析は、株価の動きを見通すうえで、非常に重要な取り組みになります。が、株価の動きに影響を与えるのは、ファンダメンタルズ以外にもあり、その中にはにわかには理解しがたいものもあります。

その1つが、「決算発表の月に、なぜか株価が上昇する」というものです。これは、筆者が以前に行ったある分析で様々な企業の株価の動きを時系列で追っていた際に、ある期間に決まったように株価が飛び跳ね、それ以外の期間は凪のような状態で推移していることに気がついたことがきっかけでした。

自然ではなく、機械的な動きのように

好悪様々な要因が織り込まれる過程の需給のせめぎ合いによって株価が決まるのが自然な状態だとしたら、これは一定の法則性に従って株価が機械的に動いているようなイメージです。

その状況を示したのが下の図です。階段状に切り上がる以外の期間は株価が動かないということは、普段はあまり業績や投資判断に関わる情報が表に出にくい銘柄なのでしょう。

しかし、そうした銘柄でも、定期的かつ必然的に多くの重要な情報が発信されるタイミングがあります。それが、決算発表です。

■決算アノマリー銘柄の株価の推移のイメージ
【タイトル】
出所:智剣・Oskarグループ

決算の内容より、発表月であることに関係している可能性も

たとえばアナリストがカバーしていないような中小型で、かつマクロ環境の影響を受けにくい内需系の銘柄の場合は、積極的なIR(投資家向け広報)がなければ、決算発表の時期を除いて株価が動くカタリスト(株価変動のきっかけ)は生じにくいはずです。

こうした企業の株価は、期中に発生した業績とのミスプライスを、決算発表時に一気に埋めにいく動きが出た可能性があります。

ただし、こうした動きをするのは、何も好決算を材料に株価が上昇するとは限らない点です。もっといえば、決算内容より決算が発表されることそのものが、株価の上昇をもたらしている可能性があることです。

何かのトリックがあるのかもしれませんが、考えられる理由としては、会社側が常に保守的なガイダンスを発表し、それを精査するための追加情報が乏しいことから、決算発表時に一気に修正がなされているのかもしれません。

しかし、その真相を究明するのは、難易度が高そうです。ならば、それを突き詰めるよりは、こうしたトレンドを把握し、それを利用する「決算アノマリー戦術」を考えてみる方がいいのかもしれません。

今回は、こうした決算アノマリーが存在する可能性が高い銘柄を定量的に抽出し、投資に生かすヒントを探していきます。

決算アノマリー戦術が効きそうな特徴のある候補を探すと

まず決算アノマリー銘柄の抽出には、過去20年程度において、四半期決算の発表月での株価騰落率を確認し、プラスである割合(勝率)を計測します。

計測期間を20年程度とするのは、開示が義務付けられた2003年度以前には、四半期開示の導入初期でデータが揃っていない可能性があるため、データを遡るのはこのあたりが限界になります。

母集団は国内に上場する全銘柄ですが、信頼性を担保するために40四半期以上のデータを取得できる銘柄に絞りました。

20年前から上場している銘柄の四半期決算を計測すると、サンプル数の最大値は80となり、発表のタイミングによって79となっている場合があります。なお、掲載日から近い5月、6月、7月の箇所を淡赤に色づけしています。

この条件に基づいて算出した勝率ランキングの上位30銘柄を並べたのが、以下の表になります。

■四半期決算の「発表月」と勝率上位30銘柄
銘柄名<コード>業種計測上昇勝率前回決算の発表月
本決算1Q2Q3Q
サトウ食品<2923>食料品796177%6月9月12月3月
Y'S<2798>小売業785874%4月7月10月1月
DCM<3050>小売業674973%4月6月9月12月
東和フード<3329>小売業785773%5月8月11月2月
トーシンHD<9444>情報・通信業805873%6月9月12月3月
TAKARA&C<7921>その他製品795772%7月9月12月3月
安楽亭<7562>小売業785672%5月8月11月2月
ソーバル<2186>サービス業604372%4月6月9月12月
AFC-HD<2927>食料品765471%10月1月4月7月
稲葉製作<3421>金属製品795671%9月12月3月6月
きんえい<9636>サービス業795671%3月6月9月12月
モロゾフ<2217>食料品775470%3月6月9月12月
ロックフィール<2910>食料品775470%6月9月12月3月
トーエル<3361>小売業775470%6月9月12月3月
巴工業<6309>機械805670%12月3月6月9月
スバル興<9632>サービス業805670%3月6月9月12月
テンポスHD<2751>卸売業805670%6月9月12月3月
トップカルチャ<7640>小売業805670%12月3月6月9月
トランザクショ<7818>その他製品533770%10月1月4月7月
正栄食<8079>卸売業795570%12月3月6月9月
東エレク<8035>電気機器795570%5月8月11月2月
ウェルネオ<2117>食料品493469%5月8月11月2月
ジャステック<9717>情報・通信業785469%1月4月7月10月
コモ<2224>食料品785469%5月8月11月2月
ありがと<3177>小売業453169%4月7月10月1月
オーシャン<3096>小売業644469%5月8月11月2月
フジコーポ<7605>小売業805569%12月3月6月9月
泉州電<9824>卸売業805569%12月3月6月9月
山岡家<3399>小売業735068%3月6月9月12月
ハローズ<2742>小売業795468%4月6月9月12月

出所:LSEGデータストリーム。注:「計測」は対象とした四半期の数、「上昇」は決算発表月の騰落率がプラスとなった回数。
「決算発表月」は、決算期とは異なる。赤の下地は、記事掲載日から近い5~7月。並びは勝率の大きい順。以下同。


食料品や小売業は、決算発表が6月の場合に上昇しやすい傾向も

集計した結果、決算発表月に常に上がるような勝率100%の銘柄は存在しませんでしたが、首位の包装餅・米の最大手であるサトウ食品<2923>は、決算発表月の勝率が8割近い高水準となっています。

それ以外の顔ぶれを見ると、ある特徴が目に留まります。「食料品」や「小売業」などの業種で、かつ決算発表月に6月が含まれている銘柄が多く存在しているのです。その理由として、例年6月前後に食料品や小売業の株価が上がりやすい季節性が存在している可能性があります。

ただし、このランキングだけで、来るべき6月に食料品や小売業の銘柄に注目するのは、早計かもしれません。上昇するにしても市場に劣後している場合が多ければ、投資妙味は薄くなります。

TOPIXを上回る騰落率で勝率を見ると

そこで、TOPIX(東証株価指数)との相対値で勝率を計算し、ランキングを作成しました(下の表)。決算アノマリーの効果をより正確に把握するという意味では、こちらの方が適切と言えます。

対TOPIX相対のランキングでは、業種がある程度分散されています。こちらの首位は、遠心分離機メーカーの巴工業で、勝率は74%に上ります。

■四半期決算の「発表月」と対TOPIX勝率上位30銘柄
銘柄名<コード>業種計測上昇勝率前回決算の発表月
本決算1Q2Q3Q
巴工業<6309>機械805974%12月3月6月9月
トランザクショ<7818>その他製品533974%10月1月4月7月
スバル興<9632>サービス業805771%3月6月9月12月
リベレステ<8887>不動産業785571%7月10月1月4月
フジコーポ<7605>小売業805569%12月3月6月9月
泉州電<9824>卸売業805468%12月3月6月9月
東エレク<8035>電気機器795367%5月8月11月2月
アサヒインテック<7747>精密機器795367%8月11月2月5月
ソーバル<2186>サービス業604067%4月6月9月12月
ニデック<6594>電気機器785267%4月7月10月1月
トーモク<3946>パルプ・紙795266%5月7月10月1月
ハイデ日高<7611>小売業765066%4月7月10月1月
jGroup<3063>小売業694565%4月7月10月1月
あいHD<3076>卸売業664365%8月11月2月5月
TONE<5967>金属製品775065%7月10月1月4月
総合商研<7850>その他製品775065%9月12月3月6月
壱番屋<7630>小売業744865%4月6月10月12月
シュッピン<3179>小売業452964%5月8月11月2月
ジャステック<9717>情報・通信業785064%1月4月7月10月
テクノアルファ<3089>卸売業644164%12月4月6月9月
スターマイカHD<2975>不動産業694464%1月3月6月9月
竹内製作<6432>機械774964%4月7月10月1月
TAKARA&C<7921>その他製品795063%7月9月12月3月
稲葉製作<3421>金属製品795063%9月12月3月6月
ファースト住<8917>不動産業795063%12月3月6月9月
光通信<9435>情報・通信業795063%5月8月11月2月
信越化<4063>化学795063%4月7月10月1月
ダイキン<6367>機械795063%5月8月11月2月
アイ・ケイ・ケイ<2198>サービス業462963%12月3月6月9月
ヒガシ21<9029>陸運業754763%5月7月10月1月
出所:LSEGデータストリーム

本決算、1Q、2Q、3Qと分けてランキングすると

ここまでは、すべての四半期決算のデータを基に勝率を検証したものです。しかし、決算発表の中でも本決算は、今期のガイダンスが示される点で重視され、それに株価が強く反応しやすい特徴を持つ銘柄が存在する可能性があります。

また銘柄によっては、事業の季節性や業績修正などが示されやすい四半期決算がある点で、四半期ごとの勝率ランキングを把握しておく可能性あります。

そこで、これから「本決算」「1Q決算」「2Q(中間)決算」「3Q決算」でのランキングを見ていきます。諸条件は同じですが、計測対象の四半期決算の回数は20が最大となり、集計対象は10以上としています。

このランキング銘柄を扱う際の注意点としては、勝率はあくまで「決算発表日を含む月」の数字になります。そのため、仮に決算発表日が月末近くの場合は、発表前後から投資をしても投資妙味がないことも考えられます。

また、決算発表月は変更になる場合が多々あります。今回の検証でも、過去から決算発表月が変更になった銘柄が非常に多く存在しました。投資を吟味する際は、必ず改めて決算発表の予定を確認してください。

それでは、まずは「本決算」でのランキングから見ていきます。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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