明日の株式相場に向けて=ラピダス関連最右翼に浮上した意外な株
きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比35円高の3万9838円と小幅反発。高く引けたとはいえ、途中は前日終値を下回る時間帯もあり、TOPIXの方は、後場は終始マイナス圏で推移した。値下がり銘柄数は1300超と全体の8割以上を占めており、実質的に前日同様の下げ相場が続いたといってもよい。とりわけ東証グロース市場の下げは厳しく、投資家の体感温度は冬の寒さに逆戻りした状態かもしれない。
前日の米国株市場ではNYダウは反落したものの大手IT株が総じて堅調だった。マグニフィセントセブンもアップル<AAPL>とテスラ<TSLA>を除き上昇、ナスダック総合株価指数は小幅ながらプラス圏で着地した。半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も3日続伸と戻り足を強めており、東京市場にとってもポジティブな流れであったはずだ。しかし、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>、ディスコ<6146>といった大所が買われはしたが、今ひとつ盛り上がりを欠いた。本来であればもう少し半導体セクターの銘柄が派手に買われてよい場面であった。
なぜなら、このタイミングで日の丸半導体会社ラピダスへの政府による大規模追加支援が発表されたからだ。ラピダスは2027年に線幅2ナノメートルの次世代半導体の量産を目標に掲げているが、経済産業省は2日、同社の半導体開発に2024年度で最大5900億円の追加支援を明らかにした。支援総額では1兆円に迫る水準となり、TSMC<TSM>の熊本第1工場・第2工場の支援規模に早くも肩を並べそうな勢いにある。
米国の意思が反映された部分も大きいと思われるが、まさに唸りを上げてエンジンの回転数を上げるがごとし、日本の半導体政策が目を見張るスピードで加速してきた。SOX指数の上げ下げに一喜一憂するよりも、こうした国内の半導体支援の動きが関連銘柄にとってはこの上ない強力なフォローウインドとなる。その割に熱量が足りない印象を受けるのは、全体相場の調整モードが続いていることによる。きょうは依然として金融機関や年金資金の益出しの動きが観測される一方、海外マネーの本格攻勢には若干のタイムラグがあり、その時間軸の狭間に沈む形で値動きに冴えを欠いた。
そうしたなか、ラピダス関連の意外な有望株として市場関係者の間で話題となっていたのが、北海道電力<9509>だ。電力株は原発再稼働の思惑を背景に需給相場の色彩を強めていたが、特に柏崎刈羽原発を有する東京電力ホールディングス<9501>が、常に投資家の関心の中心軸に位置していた。実際、東電HDの株価は22年1月に300円前後だったが、今年3月15日には967円30銭の高値をつけ2年ちょっとで3倍以上に化けた。ただし、23年1月からの株価推移をみると九州電力<9508>がむしろ主役。700円台だった株価を直近3月22日には1403円とおよそ2倍化させている。これはいうまでもなくTSMCの熊本工場の絡みで、半導体製造に使う膨大な電力需要創出に対する思惑が、九州電の株高シナリオと共鳴したものだ。
こうなると、次はラピダスの順番となり、千歳工場の本格稼働による電力需要エリアを管轄する北海電に視線が向くのは自然だ。しかも、こちらは超先端2ナノ品の量産を目指す純国産製造ラインである。北海電の株価は2月下旬からスイッチが入り“本番モード”となったが、株価は1カ月半で3割強の上昇をみせたに過ぎない。近い将来に半導体工場稼働となれば電力供給は圧倒的な需要に追いつかないことは自明であり、市場では「政府としてはラピダスの工場稼働までには、何としても泊原発を稼働させる形に持っていきたいという考えがある」(ネット証券アナリスト)と指摘する。その意味で、ここからの北海電の株価は東電HD以上に熱視線を浴びる可能性がある。なお、同社の予想PERは、最終利益がイレギュラーとはいえ、わずか2倍台に過ぎず、ここからの水準訂正余地を暗示している。
あすのスケジュールでは、4月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。午後取引時間中には需給ギャップと潜在成長率が発表される。海外では3月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)が開示され、欧州では2月のユーロ圏失業率、3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、米国では3月のADP全米雇用リポートや、3月のサプライマネジメント協会(ISM)サービス業景況感指数に対する市場の関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日の米国株市場ではNYダウは反落したものの大手IT株が総じて堅調だった。マグニフィセントセブンもアップル<AAPL>とテスラ<TSLA>を除き上昇、ナスダック総合株価指数は小幅ながらプラス圏で着地した。半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も3日続伸と戻り足を強めており、東京市場にとってもポジティブな流れであったはずだ。しかし、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>、ディスコ<6146>といった大所が買われはしたが、今ひとつ盛り上がりを欠いた。本来であればもう少し半導体セクターの銘柄が派手に買われてよい場面であった。
なぜなら、このタイミングで日の丸半導体会社ラピダスへの政府による大規模追加支援が発表されたからだ。ラピダスは2027年に線幅2ナノメートルの次世代半導体の量産を目標に掲げているが、経済産業省は2日、同社の半導体開発に2024年度で最大5900億円の追加支援を明らかにした。支援総額では1兆円に迫る水準となり、TSMC<TSM>の熊本第1工場・第2工場の支援規模に早くも肩を並べそうな勢いにある。
米国の意思が反映された部分も大きいと思われるが、まさに唸りを上げてエンジンの回転数を上げるがごとし、日本の半導体政策が目を見張るスピードで加速してきた。SOX指数の上げ下げに一喜一憂するよりも、こうした国内の半導体支援の動きが関連銘柄にとってはこの上ない強力なフォローウインドとなる。その割に熱量が足りない印象を受けるのは、全体相場の調整モードが続いていることによる。きょうは依然として金融機関や年金資金の益出しの動きが観測される一方、海外マネーの本格攻勢には若干のタイムラグがあり、その時間軸の狭間に沈む形で値動きに冴えを欠いた。
そうしたなか、ラピダス関連の意外な有望株として市場関係者の間で話題となっていたのが、北海道電力<9509>だ。電力株は原発再稼働の思惑を背景に需給相場の色彩を強めていたが、特に柏崎刈羽原発を有する東京電力ホールディングス<9501>が、常に投資家の関心の中心軸に位置していた。実際、東電HDの株価は22年1月に300円前後だったが、今年3月15日には967円30銭の高値をつけ2年ちょっとで3倍以上に化けた。ただし、23年1月からの株価推移をみると九州電力<9508>がむしろ主役。700円台だった株価を直近3月22日には1403円とおよそ2倍化させている。これはいうまでもなくTSMCの熊本工場の絡みで、半導体製造に使う膨大な電力需要創出に対する思惑が、九州電の株高シナリオと共鳴したものだ。
こうなると、次はラピダスの順番となり、千歳工場の本格稼働による電力需要エリアを管轄する北海電に視線が向くのは自然だ。しかも、こちらは超先端2ナノ品の量産を目指す純国産製造ラインである。北海電の株価は2月下旬からスイッチが入り“本番モード”となったが、株価は1カ月半で3割強の上昇をみせたに過ぎない。近い将来に半導体工場稼働となれば電力供給は圧倒的な需要に追いつかないことは自明であり、市場では「政府としてはラピダスの工場稼働までには、何としても泊原発を稼働させる形に持っていきたいという考えがある」(ネット証券アナリスト)と指摘する。その意味で、ここからの北海電の株価は東電HD以上に熱視線を浴びる可能性がある。なお、同社の予想PERは、最終利益がイレギュラーとはいえ、わずか2倍台に過ぎず、ここからの水準訂正余地を暗示している。
あすのスケジュールでは、4月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。午後取引時間中には需給ギャップと潜在成長率が発表される。海外では3月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)が開示され、欧州では2月のユーロ圏失業率、3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、米国では3月のADP全米雇用リポートや、3月のサプライマネジメント協会(ISM)サービス業景況感指数に対する市場の関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS