シュッピン Research Memo(1):上期は引き続き「カメラ事業」が順調に拡大し、過去最高売上高を更新
■要約
シュッピン<3179>はカメラや高級腕時計など「価値あるもの」に特化したEC(eコマース)企業。中古品と新品のそれぞれのニーズの違いや商品特性の違いを活かし、中古品と新品が相互に作用し合いながら会員基盤の拡大や業績の伸びを実現してきた。最近では、独自のEC買取やOne to One マーケティング、CGMの活用などにも取り組み、プラットフォーム型事業モデルとして進化を続けている。この数年間は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大(以下、コロナ禍)により店舗売上が低調に推移したほか、戦略的な在庫投資に取り組んできた「時計事業」については、世界的な価格相場の下落を受けて一時的に落ち込んだものの、主軸である「カメラ事業」はAI活用による新たな機能の導入※などによりECを軸に順調に伸びており、事業モデルの進化という点においては明らかに一段上のステージに入ってきたと言える。
※AIMD(AI技術を用いたマーチャンダイジングシステム)や、AIコンテンツレコメンド(同社が作成し保有している大量のコンテンツ記事をAIが顧客の嗜好性を分析して配信)など。
1. 2024年3月期上期の業績
2024年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比6.8%増の23,381百万円、営業利益が同0.1%減の1,625百万円と増収減益となったが、売上高は過去最高(上期ベース)を更新した。主力の「カメラ事業」については、EC及び店舗ともに好調に推移し、業績全体の伸びをけん引した。引き続きAIを活用したOne to One マーケティングが奏功したことに加え、免税売上の伸びも増収に寄与した。一方、前期下期にグローバル相場価格の大幅な下落により業績が落ち込んだ「時計事業」については、前年同期比で減収となったものの、価格相場の安定とともに回復に転じている。利益面でも、AIMDのバージョンアップなどを通じて「カメラ事業」を中心に高い売上総利益率を維持。平均給与増により人件費が増加したものの、売上総利益の伸びで吸収し、営業利益は前年同期並みを確保した。営業利益率も7.0%と高い水準を維持している。活動面では、AIMDのバージョンアップや時計のオンライン買取見積強化、動画配信を中心としたコンテンツの拡充などに取り組み、各種KPIの向上につなげることができた。
2. 2024年3月期の業績予想
2024年3月期の業績について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比9.7%増の50,028百万円、営業利益を同26.8%増の3,122百万円と増収増益を見込んでいる。引き続き好調な「カメラ事業」がECを軸に増収に大きく寄与する。一方、前期に落ち込んだ「時計事業」については、その原因となった価格相場が安定化し、インバウンド需要(免税売上)も戻ってきたものの、期初時点の保守的な想定を変えていない。利益面でも、「カメラ事業」の伸びや「時計事業」の損益改善が増益に大きく寄与する。特に、AIMDの導入効果(バージョンアップを含む)に加え、前期発生した「時計事業」の一過性要因(赤字販売の実施や棚卸商品評価損の計上)の解消により、売上総利益率は18.0%(前期は17.0%)にV字回復する想定である。
3. 今後の成長戦略
同社は、毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新(ローリング)しており、2023年5月に新たな中期経営計画を公表した。引き続き、カメラ・時計のさらなる成長と越境ECによるグローバル展開の活性化などに取り組む方針であり、シェア拡大に伴うEC売上高の持続的成長をドライバーとして位置付けている。また、AI活用による利益率の改善とスリムな経営による販管費比率の低減により、売上高の成長以上に利益成長を重視する方針としており、最終年度となる2026年3月期の目標として、売上高63,141百万円(3年間の年平均成長率11.4%)、営業利益4,827百万円(営業利益率7.6%)を目指していく。また、下期以降の方針として、AIやデータを駆使した商品仕入れによるビジネス拡大に向けて、テクノロジーと在庫への投資継続を改めて打ち出しており、情報システム本部の強化に加え、時計MDサポートAIシステムの構築による適切な仕入・在庫投資の為の「仕組み化」などにも取り組む。
■Key Points
・2024年3月期上期は引き続き「カメラ事業」が順調に拡大し、過去最高売上高を更新
・前期に価格相場の下落により落ち込んだ「時計事業」についても、価格相場の安定とともに回復傾向
・2024年3月期の業績予想を据え置き、「カメラ事業」の成長と「時計事業」の損益改善により増収増益を見込む
・中期経営計画では、カメラ・時計のさらなる成長と越境ECによるグローバル展開の活性化にも取り組み、EC売上高の持続的成長とAI活用による利益率の改善を実現していく方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SO》
提供:フィスコ