早稲アカ Research Memo(3):2024年3月期業績は期初計画を据え置くも、利益は上振れ余地あり
■業績動向
2. 2024年3月期の業績見通し
早稲田アカデミー<4718>の2024年3月期の連結業績は売上高で前期比8.1%増の33,228百万円、営業利益で同10.8%増の2,659百万円、経常利益で同10.8%増の2,693百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同7.1%増の1,662百万円と期初計画を据え置いた。売上高は13期連続増収、各利益は前期に引き続き過去最高益を更新する見通しだ。利益ベースでは第2四半期まで超過するペースとなっているが、第3四半期も塾生数の伸び悩みが続いていることや、下期は広告宣伝費の増加、新規事業の立ち上げ費用などを見込んでいるため、保守的に見て期初計画を据え置いた。
期中平均塾生数は前期比2.9%増の会社計画に対して現状は1%前後の伸びに留まるペースとなっており、今後も伸び悩みが続くようだと売上高は会社計画に対して1~2%程度下回る可能性がある。一方、利益面では各種費用の増加が見込まれるものの、ICT活用による労務費率の抑制効果が下期も継続することから、会社計画に対して上振れする可能性があると弊社では見ている。
(1) 部門別売上高と塾生数の見通し
部門別売上高は、小学部で前期比9.2%増の19,589百万円、中学部で同6.0%増の11,787百万円、高校部で同11.4%増の1,705百万円となる見通し。前提となる期中平均塾生数は、小学部で同4.0%増、中学部で同1.1%増、高校部で同3.1%増となる。計画達成のハードルはやや高くなっているが、冬期講習会の募集強化や2024年度に向けて新規入塾生の獲得に注力していくことで計画の達成を目指していく。
(2) 校舎展開について
新規開校については、下期に新校4校を開校する計画となっているが、現時点で不動産物件の確保ができていないため流動的となっている。一方で、2024年春から新規事業として開始する「東進衛星予備校」の校舎を同年3月に4校(池袋、御茶ノ水、渋谷、たまプラーザ)開校する予定となっている。いずれも既存の「早稲田アカデミー大学受験部」の校舎内に併設する予定で、既存の塾生だけでなく早稲田アカデミー卒塾生にもアプローチすることで、塾生数のさらなる拡大を図っていく戦略となっている。「早稲田アカデミー」に在籍する中学3年生は年間約6千人規模だが、高校生になると大学受験部の校舎を6校に絞っていることもあり学年平均で数百名程度と大幅に減少してしまうことが課題となっていた。大学受験部は難関大学志望向けの集団塾となっており、卒塾生に対して異なる教育サービスをラインナップに加えて間口を広げることで、継続して通塾する生徒を多く獲得していくことを狙っている。同様に主に中学生を対象とする「東進中学NET」も開始する予定で、小学生で卒塾する約6千人の塾生にアプローチし、中学生部門の塾生増加も目指していく。
(3) 費用の見通し
売上原価率は前期の71.3%から70.6%と0.7ポイント低下する見通し。原材料費は塾生数・受講者数の増加により前期比で4.0%増となるが、値上げ効果で売上比率では0.6ポイント低下する。また、労務費率で0.1ポイント低下する見込みとなっているが、前述の通りICT活用の効果により、上期と同様にさらに改善が進むものと思われる。その他、地代家賃は新規出校のほか、既存校のリニューアル移転・増床もあって0.1ポイントの上昇を見込んでいる。
販管費率は前期の20.9%から21.4%と0.5ポイント上昇する見通し。労務費率は業務効率の向上により前期比0.4ポイント低下する一方、広告宣伝費率で0.4ポイント、その他費用で0.5ポイントの上昇を見込んでいる。広告宣伝費は営業支援のマーケティング活動や宣伝活動の強化、人員体制の強化により前期比で18.0%増を見込む。その他費用についてはシステム開発費や外注費、支払手数料、販促費の増加等で同15.1%増となる見通し。なお、通塾環境の改善施策として、2024年1月末までに標準校舎(小・中学部)の全教室にマイク付き防犯カメラを設置する計画となっている。従来は校舎の出入り口や廊下、事務室等に680台設置していたが、全教室に設置することで2,650台となる。設備投資額としては数億円規模になると見られるが、減価償却費として計上するため期間損益に与える影響は軽微となる。
(4) 子会社の動向
子会社の動向については、野田学園が校舎統合による固定費の削減効果で損益の改善を見込んでいるほか、集学舎や水戸アカデミーについても堅調に推移すると見込んでいる。なお、集学舎と水戸アカデミーについては2023年7月に同社の基幹システムを導入稼働させており、今後グループ管理体制の強化と業務効率の改善が一段と進み、グループ全体の収益力向上につながるものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ