サムティ Research Memo(9):好調な不動産市況を追い風として、不動産事業が大きく拡大
■業績推移
過去の業績を振り返ると、東証ヘラクレス市場(2010年に東証JASDAQと統合)に上場した直後の2007年11月期にリーマンショックによる影響を受け、しばらくは低調に推移する時期が続いた。特に、金融機関による金融引き締めにより不動産事業が大きく縮小したことが業績の足を引っ張った。ただし、注目すべきは、厳しい業界環境のなかにあっても、不動産賃貸事業は安定的に推移しており、サムティ<3244>の業績を下支えしてきたところである。また、自社で販売部隊を持たずに固定費を低く抑えてきたこともプラスに働いており、減損処理により最終損失となった2008年11月期を除いて利益を確保してきたことは大いに評価できる。
2013年11月期以降は、国内景気の回復や金融緩和を背景とした金融機関の融資姿勢の変化等により、不動産事業が大きく回復したことで、同社業績も順調に拡大傾向を続けてきた。特に、2015年6月に上場したSRRを中心とするビジネスモデルの確立や海外投資家からの需要拡大も追い風となり、ここ数年間で大幅な事業拡大を実現してきた。2021年11月期は事業モデルの転換に伴って一旦減収となったものの、2022年11月期には大きくV字回復し、過去最高売上高を更新した。損益面についても、利益率の高い不動産開発事業の進展により経常利益率は年々改善傾向をたどってきた。2021年11月期はコロナ禍の影響による「ホテル賃貸・運営事業」の損失拡大等により9.0%に低下したが、2022年11月期には11.2%に回復している。
自己資本比率は2013年11月期に公募増資(約20億円)の実施により27.9%に上昇したものの、2014年11月期以降は、積極的な資産の積み上げ等により23%程度の水準で推移してきた。ただ、2018年10月にはライツ・オファリング※による新株発行(約150億円)を実施したほか、2019年5月には大和証券グループ本社との資本業務提携に伴う自己株式の処分(約27億円)、2021年は大和証券グループ本社による転換社債の転換(約100億円)により、資産拡大を図りながらも2022年11月期末の自己資本比率は23.9%を確保している。
※既存株主に対する上場型新株予約権の無償割当てによる新株発行のこと。
一方、資本効率を示すROEについても、利益率の向上とともに上昇傾向をたどってきた。利益率が低下した2021年11月期以降も11%を超える水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《AS》
提供:フィスコ