【特集】30年代に国内8兆円産業、新フロンティア「宇宙開発」で飛躍する6銘柄 <株探トップ特集>
世界規模で宇宙関連ビジネスが急拡大するなか、アイスペースのような民間の宇宙開発関連ベンチャーも台頭してきた。その成長性の高さから宇宙関連株への期待感は高まっている。
―自衛隊が港区に「宇宙オフィス」開設、政府は宇宙基本計画を閣議決定し本腰―
人類は長い歴史の中で、さまざまな未知を既知へと変えてきた。深海などを除き人類未踏の地はあらかた失われたと言ってもよい状況のなか、我々に残された最後のフロンティアのひとつが「宇宙」だ。その「宇宙」には、近年企業の参入や取り組みも相次ぎ、2023年にはご存じの通り宇宙スタートアップ企業も東証に上場した。足もとでは自衛隊も宇宙分野を強化し始めており、 宇宙関連株に新たな動きが出始めている。
●アイスペース登場で宇宙関連株への注目度高まる
「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指す」。宇宙スタートアップ企業のispace <9348> [東証G]が東証グロース市場に新規上場したのが約半年前の4月12日だ。その後、同社のランダー(月着陸船)による、民間企業として世界初の月面着陸が残念ながら失敗に終わったこともあり、一時は宇宙ビジネスの難易度の高さが改めて意識され、期待感剥落から大きく株価が落ち込む局面も見られた。また、足もとでは、24年3月期営業損益予想の下方修正を発表したほか、ロックアップ解除による需給悪化懸念で株価は再び売られているが同社の登場により宇宙ビジネスへの市場の関心が大きく高まったことは間違いない。
●自衛隊は虎ノ門ヒルズに「宇宙協力オフィス」を開設
さて、人類に残されたフロンティアである「宇宙」に関わる動向として、足もとで航空自衛隊が10月から「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」に宇宙関係の部署オフィス「宇宙協力オフィス」を開設したことに注目したい。なぜ航空自衛隊が港区の高層ビルに部署オフィスを置くのか。実際に航空自衛隊が外部にオフィスを置くのは初めてとのことだ。
保守的な「自衛隊」という組織が、今回このような行動を見せたのには当然理由がある。ビルに入居(ないし利用)している民間企業や研究機関などと垣根を越えて意見交換を行うことで、宇宙領域に関する最先端の情報を得て、将来の装備品などにも反映させる狙いのようだ。航空自衛隊トップの内倉浩昭航空幕僚長も記者会見において「わが国全体として宇宙空間における能力の向上につなげていきたい」と述べているが、これは自衛隊に限った考えというわけではなく、当然政府も同じ方向を向いていると理解してよいだろう。
●政府は6月に宇宙基本計画を閣議決定
6月に政府が閣議決定した宇宙基本計画では、宇宙機器と宇宙ソリューションの市場規模を30年代の早期に20年(4兆円)の2倍となる8兆円に拡大していくことを目標として掲げたことからも、その本気度は明らかだ。また、政府は民間企業などに長期的に大規模な資金支援を行うべく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)法に基金を設置する規定を加える方針であると9月には読売新聞が報じている。
足もとの株式市場は、10月に入って利益確定の動きが散見される。ハイテク株の一角には買い戻しの動きもあり、引き続き混沌とした相場状況であることは変わらないものの、宇宙関連のような先進的なテーマへ資金が流入する可能性もじわりと高まっていると言えそうだ。
●セック、さくらネット、日本アビオなど
「宇宙関連」の銘柄でメインとなるのは、9月にH-IIAロケット47号機の打ち上げに成功した三菱重工業 <7011> [東証P]、H-IIAロケットで衛星フェアリング、衛星分離部(PAF)などを手掛けた川崎重工業 <7012> [東証P]、ロケットシステムを手掛けるIHI <7013> [東証P]、それに月面探査車「有人与圧ローバ(愛称:ルナクルーザー)」の開発を進めているトヨタ自動車<7203>や、人工衛星を手掛ける三菱電機 <6503> [東証P]、NEC <6701> [東証P]といった重工業、自動車、重電各社であろう。ただし、世界規模で宇宙関連ビジネス市場が拡大するなか、前述のアイスペースのように民間の宇宙開発関連ベンチャーの台頭によって、さまざまな事業が生まれてくる可能性がありそうだ。以下ではベンチャーとの協業や提携、中小型株を中心とした銘柄に着目した。
セック <3741> [東証P]~宇宙先端システムのビジネスフィールドにおいて、科学衛星搭載エンベデッドシステム(組み込みシステム)、惑星探査機搭載エンベデッドシステム、デブリ除去衛星搭載エンベデッドシステム、国際宇宙ステーションきぼう日本実験棟関連システムなどを手掛けている。
エア・ウォーター <4088> [東証P]~家畜ふん尿から発生するバイオガスを、LNG(液化天然ガス)の代替燃料となるLBM(液化バイオメタン)に加工し、地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んでいる。独自にロケットの開発・製造を行うインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)が開発するロケット「ZERO」の燃料に、同社のLBMが選定されている。
さくらインターネット <3778> [東証P]~クラウド上で衛星データの分析ができる日本発の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」を運営。実用衛星を開発・運用するアクセルスペース(東京都中央区)と販売パートナーシップ契約を締結している。
アイネット <9600> [東証P]~人工衛星のシステム設計、検査/試験、運用/評価をハードとソフトの両面からサポートする。同社が出資し、衛星開発、地上局運営面でも重要なパートナーであるアストロスケールホールディングス(東京都墨田区)は、昨年5月に宇宙デブリ除去技術実証衛星で高難度の誘導接近の実証に成功したと発表している。
日本アビオニクス <6946> [東証S]~防衛省から受注した、陸・海・空の指揮・統制システム機器や装置を提供している。また、同社の電子デバイス技術は、JAXAの認定によるハイブリッドICメーカーとして、人工衛星やロケットの信頼性の向上に貢献している。
イーグル工業 <6486> [東証P]~航空宇宙業界向け事業では、主に航空機や宇宙ロケットのジェットエンジンに使用されるメカニカルシールの研究開発・生産を手掛ける。主な製品は、ロケット用ターボポンプシールやロケット燃料タンク及びエンジン配管用スタティックシール、国際宇宙ステーション向けベローズアキュムレータなど。
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