JBR Research Memo(2):日常生活でのトラブルを解決する各種サービスを提供(1)
■事業概要
1. 会社概要
ジャパンベストレスキューシステム<2453>は「困っている人を助ける!」を経営理念として、生活に関わる様々なトラブルを解決する「総合生活トラブル解決サービス」カンパニーとして1997年に設立された。2008年にジャパン少額短期保険(株)、2016年にJBRあんしん保証(株)(現 ジャパンワランティサポート)を子会社化したほか、2019年にはレスキュー損害保険(株)を設立、開業している。また、2020年に日本PCサービス<6025>の株式を取得し持分法適用関連会社(出資比率22.1%)としたほか、2021年9月には生活トラブルサービスを展開するアクトコール及びコールセンター運営事業を行うTSUNAGUを簡易株式交換により完全子会社化した。直近では2022年2月に水回りトラブル解決サービスのパートナーの1社であったアクアラインの株式を追加取得して持分法適用関連会社(出資比率23.6%)とするなど、積極的なM&A・アライアンス戦略により業容を拡大している。
なお、2022年6月23日付でジャパンワランティサポートが東証グロース市場に上場した。株式上場の目的は、上場会社としての信用力が向上することで提携先企業の拡大が期待できることに加え、人材採用力、資金調達力の向上により事業成長スピードを加速していくことにある。同社の出資比率は2021年9月期末の100.0%から上場後は69.5%に低下し、非支配株主に帰属する当期純利益の増加につながるが、それ以上に株式上場することのメリット(=収益拡大)のほうが大きいと判断した。株式上場後も連結対象子会社として株式を保有していく方針だ。また、アクトコール及びTSUNAGUについては2022年10月1日付で同社が吸収合併した。間接部門を段階的に統合中で、システムやコールセンター業務については2025年6月の完全統合を予定している。また、新設した駆けつけ事業準備(株)(現 (株)生活救急車)に駆けつけ事業を承継、2022年11月末に株式数の51%をアクアラインに譲渡し、持分法適用関連会社としている。
2. 事業の内容
事業セグメントは、会員、保証、保険の3事業とその他(新事業等)及び第1四半期で事業売却した駆けつけ事業で開示している。2023年9月期第2四半期累計の事業セグメント別売上構成比を見ると、会員事業が53.9%と全体の過半数を占め、次いで保険事業が34.3%、保証事業が8.8%となっている。また、売上高のうち、会員や保険契約件数の積み上げ等によるストック型ビジネスの比率が全体の9割以上を占める。これらストック型ビジネスは既に収益化しており、安定性の高い収益基盤を構築していることが同社の特徴であり強みとなっている。
(1) 会員事業
会員事業は、会員向けに生活トラブル全般の解決サービスを提供する事業で、会員は入会金や年会費等を事前に支払うことで、該当するトラブルが発生した時に一般料金よりも低価格、または無料でサービスを受けることができる仕組みとなっている。売上高の7割強は会費収入で、そのほか作業に要した部品代や特殊作業費等が含まれる。不動産会社やホームセンターなどの提携先企業を通じて、効率よく新規会員を獲得している。また、実際にトラブル解決にあたる施工パートナーには一定の技術・マナー指導を実施しており、全国に3,000拠点以上のネットワークを構築している。2023年3月末の契約件数は、2,359千件と過去最高を更新している。
主力サービスは賃貸及び分譲住宅入居者向けの「安心入居サポート」で、同事業の会費収入の約55%を占めている(2023年9月期第2四半期累計実績)。サービスメニューとしては入居時の暮らし相談サポートや入居中の生活トラブルを解決・サポートするサービスがあり、不動産賃貸事業者等と販売代理店契約を結ぶことで契約件数を伸ばしている。会費は2年契約で約1.5万円となり、うち約6割が同社の収入、約4割が代理店の販売手数料となる。売上計上方法は月分割方式となっているが、実際の資金の流れとしては契約時に2年分を一括して会員から徴収する。このため、貸借対照表上では残存期間分の対価を前受収益及び長期前受収益として計上している。一方、代理店への手数料支払いについては契約月に一括して支払い、費用も同額分計上するため、契約ごとの損益で見ると会計上は開始1ヶ月目に損失を計上する格好となる。同サービスに関しては契約更新率が30%台と低いことが課題であったが、継続率を高める施策として家賃の一部に会費を組み込む方式(サブスクリプション型)の導入に注力している。同方式であれば引越し等で退去しない限りは、契約も継続することになるためだ。サブスクリプション型の契約率は2016年9月期末時点で40%であったが、2023年9月期第2四半期末時点では70%超まで上昇した(ACTGを除く)。
ACTGは同様のサービス「アクト安心ライフ24(1年版、2年版)」または「緊急サポート24(月額版)」を提供している。サービス範囲が「安心入居サポート」よりも広いため料金もやや高く、同事業の会費収入に占める比率は33%となっている(2023年9月期第2四半期累計実績)。ACTGの商品については、月額定額サービスや1年版(税込8,800円)が契約の大半を占めている。ACTGをグループ化したことにより、生活トラブル解決サービスの市場シェアは約35%と、2位(約7%)を大きく引き離す圧倒的トップの地位を確立している。なお、約44%は不動産会社がグループ内でサービス提供しているが、コールセンター等の維持コストが掛かることから徐々にアウトソーシングする傾向にあるようで、同社のシェアはさらに拡大する可能性が高いと弊社では見ている。
その他の会員サービスとしては、全国大学生活協同組合連合会(以下、大学生協)と提携して販売している大学生向けの生活トラブル解決サービス「学生生活110番」(契約期間2年、4年、6年タイプがあり、4年契約タイプで税込9,450円、うち約7割が同社の収入)のほか、通信事業者と提携して販売しているライフサポートパックなどがある。また、リペアサービスについては住宅メーカー等の提携先企業から戸建て・マンション等の床面や壁の補修作業の依頼を受け、補修サービスを行っている。石材系から金属、木質系、水回りも含めて幅広い修復に対応できることが強みとなっており、2019年以降は宿泊施設や店舗など非住宅系にも販路を広げてきた。会員サービスのメニューの1つとすることで持ち家市場を開拓していく方針だ。
なお、会員事業では入会時に顧客から会費を徴収し、出動依頼を受けた場合は入会時の条件に基づいて、無料または割引価格でネットワーク店の手配を行っており、発生した作業代金または作業代金と割引価格との差額が同社の負担となる。このため自然災害の発生等により想定以上に出動件数が増加した場合は、同社の費用負担が重くなり収益性が低下するリスクがある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ