【特集】桂畑誠治氏【3万2000円台は胸突き八丁、夏相場は上か下か】 <相場観特集>
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
―押し目買い活発も上値重い、8月相場に向けた波動を読む―
3連休明けとなった18日の東京株式市場は、前日の米国株市場の上昇を受けて買い優勢となったが、日経平均株価は朝高後に伸び悩む展開を強いられた。一時はマイナス圏に沈むなどはっきりしない展開で3万2000円台は上値の重さが改めて意識されている。夏相場はここからどういう波動を描くのか。日米のマーケットに精通する第一生命経済研究所の桂畑誠治氏に今後の相場展望を聞いた。
●「米株を横目に上値挑戦の流れに」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
東京株式市場は日経平均が3万2000円台で強弱観を対立させている状況にあるが、結論を先にすれば、米国株市場がここから崩れなければ、7月下旬から8月中旬にかけて日経平均も上値余地が意識される展開が見込めそうだ。
米国では直近発表されたNY連銀製造業景況指数が事前の市場コンセンサスより強かったことで米景気は底堅いとの認識が広がり、足もとの株式市場にはプラスに作用した。7月25~26日の日程で行われるFOMCにおいて0.25%の政策金利引き上げについては織り込み済みであり、更にこれで利上げが打ち止めとなるとの見方がマーケットに広がっている。そうしたなか、目先的には米景気指標がコンセンサスを上回れば、投資家心理には安心感が広がりやすい。
もっとも今月下旬のFOMCでは、パウエルFRB議長の記者会見で利上げ打ち止めについて明言するようなことはないと思われる。米国ではインフレに対する警戒感が薄れているものの、コアインフレの沈静化が進んでいないことには注意が必要だ。また労働市場の好調が続いていることから、パウエル氏は経済失速の危険性は乏しいと判断しているはずで、少なくとも引き締め局面が終了したというニュアンスを伴う発言は慎むだろう。
一方、米国の個別企業業績に目を向けると、今のところ4~6月期決算は想定を上回る企業が多い。これが楽観相場の背景にあり、仮にFOMC後に米国株市場が下落トレンドに転じるようなことがなければ、東京市場でも強調展開が期待できる。27~28日の日程で行われる日銀の金融政策決定会合はビッグイベントとなるが、ここでイールドカーブ・コントロール(YCC)の解除がないことを前提に、日経平均は上値追い態勢を強め、向こう1ヵ月で3万4000円台を目指す展開も見込めそうだ。ただ、万が一YCCが解除された場合は、波乱展開となることは避けられず、その場合は75日移動平均線が位置する3万700円どころまで水準を切り下げる可能性もある。
全体が上昇トレンドを明示した場合、物色対象として有力なのは半導体セクターが挙げられる。YCC解除が見送られれば為替は再び円安方向に振れることが考えられ、同セクターには追い風となりやすい。このほか、インバウンド関連も妙味がありそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
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