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胸突き八丁のECB【フィスコ・コラム】


欧州中央銀行(ECB)当局者のタカ派的な見解を受け、上半期のユーロは対円で15年ぶりの高値圏にまで上昇しています。一方、ユーロ圏のインフレは高止まりが目立つものの、秋口以降も金融引き締め姿勢を維持するのは困難との見方が浮上。ユーロ買いは縮小が見込まれます。


ユーロ・円は6月14日に年初来高値を上抜けるとさらに上げ足を速め、心理的節目の155円を突破。6月末にはリーマンショックのあった年として記憶される2008年以来15年ぶりの158円付近に上値を伸ばし、一時は160円台が射程圏内に入りました。ECBのラガルド総裁をはじめ当局者が、今月27日開催予定の理事会で利上げ継続の方針を固め、ユーロ・円は年初から半年で15%程度も値を上げた計算です。


もっとも、上昇基調を強めているのは金融緩和政策を続ける日本や中国の通貨に対してのみで、ドルに対しては上げ渋り、ポンドやスイスフラン、豪ドルに対しては弱含んでいます。ユーロ・ドルは年初の1.04ドル台から2月には1.10ドル台に強含んだものの、欧米金融システム不安が一段落した後も上昇は限定的。ECBは7月の利上げを明確にしているため底堅さが目立ってはいますが、下落基調に転じるのは時間の問題かと思われます。


背景としては、インフレ抑止優先の政策が景気を押し下げるとの見方が広がり始めたためです。域内総生産(GDP)は昨年10-12月期と今年1-3月期が前期比マイナスとなり、テクニカル・リセッション入り。ただ、ECBはマイナスが小幅にとどまっていると判断し、引き締め政策を堅持しています。昨年7月から今年6月まで8会合連続で利上げを実施し、政策金利は-0.50%から+3.50%まで引き上げられました。


ECB当局者の最近の発言は次回7月も0.25ポイントの利上げでおおむね一致していますが、9月以降については見解の違いがみられます。6月30日に発表された域内消費者物価指数(HICP)は前年比+5.5%と前回に続き鈍化。スペインについてはECB目標の2%を初めて下回り、直近で+1.6%まで低下しています。それに対して、スロバキアは2ケタ台と高止まり、バルト諸国もインフレ沈静化は程遠い状況です。


ECBの引き締めにより国債の信用力が低い南欧諸国の国債利回りが高水準になり、ユーロ全体の信用力を損ねる「市場の分断化」も問題視されています。メローニ・イタリア首相は先のECBの継続的な利上げについてインフレ以上に経済を圧迫すると指摘。ビスコ・イタリア中銀総裁は、引き締めを強化するリスクを望ましいとするECB内のタカ派的な意見には理解も同意もできないと批判しています。


ECBは金融正常化を通じて物価や景気の安定に注力しているものの、加盟国間の格差が鮮明になり、その対応にも限界はあるでしょう。タカ派路線が息切れしないか、憂慮します。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

 提供:フィスコ

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