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33000円割れ、需給リスクと景気腰折れリスク/後場の投資戦略


日経平均 : 32722.33 (-542.55)
TOPIX  : 2262.13 (-34.37)


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均は反発スタートも前場中ごろから急速に値崩れし、6月13日以来となる33000円割れとなっている。今月末は四半期末に当たり、年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが意識されている。ただ、前四半期末の3月末からの株価上昇率の大きい銘柄ほどこそリバランス売りが膨らむと考えられるが、本日の東京市場では3月末比で上昇率の大きい半導体株はむしろ全体と比べれば底堅い。バフェット効果で半導体株と並んで上昇率の大きい商社株に代表される卸売がセクター下落率トップに顔を出しているが、これに続いて上位に入っているのは3月末比で上昇率の鈍い非鉄金属、鉄鋼など景気敏感セクターであり、本日の下落はリバランス売りが主因ではなさそうだ。

 というよりは、月末にかけてこれからリバランス売りが強まることを狙った短期筋による先物主導での仕掛け的な売りが原因と推察される。一方、前引け時点での東証プライム市場の売買代金は既に2兆4000億円を超えており、現物にもまとまった売りは出ているようだ。

 需給以外の観点からは、昨日の当欄「景気敏感株が主役に代われるのか?」で指摘したように、世界景気のオーバーキルに対する懸念が強まっていることも株価下落の背景として挙げられる。すなわち、主要中央銀行による過度な金融引き締めが経済をソフトランディング(軟着陸)でなくハードランディングへと導いてしまう恐れだ。

 前日は海外で中央銀行による利上げラッシュが起こった。英イングランド銀行は金融政策委員会(MPC)において市場の予想に反して利上げ幅を0.5ポイントへと拡大させた。利上げ幅の拡大自体がサプライズではあるが、利上げ幅の拡大をMPC参加メンバー9人のうち7人が支持していたことも目を引く。また、MPCは政策金利が来年序盤に6%前後でピークを付けるとの市場予想を否定せず、利上げが追加で1ポイントも行われることが示唆されている。

 ノルウェー中銀も0.5ポイントの大幅利上げを決定し、政策金利は15年ぶりの高水準に達した。また、8月の追加利上げも示唆している。さらに、スイス中銀も利上げ幅は0.25ポイントへと縮小させたものの、利上げを継続、加えて、追加利上げの可能性は極めて高いとした。

 既に峠を超え、株式市場の最大の懸念材料ではないと考えられていたインフレだが、改めて世界的に長期化する可能性が警戒されているようだ。こうした中、パウエルFRB議長も、前日の2日目の上院での議会証言において改めて年内2回の追加利上げを示唆した。

 一方、主要各国の経済指標は製造業を中心に低調だ。また、インフレ長期化による実質所得の伸び悩みや個人貯蓄の切り崩しにより、底堅かった個人消費も今後は減退していくことが予想される。ただ、上述したように各国中銀はインフレ沈静化になお躍起で、利上げ停止はおろか、むしろ継続を主張している。こうなってくると、改めて世界経済のハードランディング懸念が強まってくるのも自然といえる。

 米株式市場はこれまでソフトランディング期待を織り込む形で上昇してきた。東京市場も相対的な景況感の良さが海外投資家から注目される理由の一つとされてきた。しかし、世界経済がハードランディングへと向かうのであれば、米株式市場はバリュエーション調整を強いられるであろうし、世界の景気敏感株と称される日本株も無傷でいられることはないだろう。

 また、本日午前に発表された5月全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数で前年比+4.3%と伸びが加速。市場予想(+4.2%上昇)を上回り、1981年6月以来(+4.5%上昇)の高水準を記録した。日本銀行は世界の流れと逆行して依然として金融緩和を続けていて、これも日本株買いの理由の一つとされてきた。しかし、足元では1ドル=143円台と円安・ドル高の進行に拍車がかかっている。日銀は、輸入インフレは沈静化したとしているが、これが再燃する恐れが出てきた。その場合、実質賃金の低下が長期化し、個人消費の腰折れ、ひいては景気の減速というシナリオ実現の可能性が高まってくる。

 日経平均は、目先は心理的な節目の32500円、もしくは32150円水準に位置する25日移動平均線で下げ止まれるかが焦点となろう。日本株の先高観をなお指摘する向きは依然として多いが、これまで海外投資家が日本株買いの理由としてきた「日銀の金融緩和継続」「相対的に底堅い景気」が今後売り材料へと変わってくる恐れが出てきたなか、慎重なスタンスが求められよう。(仲村幸浩)
《AK》

 提供:フィスコ

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