浮上機運高まる防衛関連株、「防衛装備移転三原則」見直しで再評価の6銘柄 <株探トップ特集>
―世界情勢の緊迫化に対応、産業の基盤維持と育成に向けて輸出模索の動き活発化―
防衛関連株に対する関心が高まっている。ロシアによるウクライナ侵攻、中国と台湾の緊張関係の高まりや北朝鮮による相次ぐミサイル発射などの脅威を背景に、日本政府は2023年度からの5年間で、合計43兆円の防衛費を計上する方針を掲げている。そんななか、現在、「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しに向け、自民・公明両党の本格的な協議が行われている。同三原則の見直しも契機となり、防衛関連株に再び追い風が吹くことが予想される。
●防衛装備品の輸出ルールの運用方針を見直しへ
自民・公明両党は、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しに関する第6回会合を5月30日に開催した。次回協議は6月7日に開催予定で、防衛産業界からの意見聴取を行う。なぜこの動きが注目を集めているのか。それは、殺傷能力のある武器の輸出に関わってくるからだ。日本はこれまで、さまざまな国際支援に注力し先進国としての責務を果たしてきたが、それらは全て非軍事面でのものであった。その根本的な背景としては、平和を謳(うた)った「憲法9条」が存在することにある。
もともと日本には、「武器輸出三原則」という原則があり、武器及び武器製造技術などの輸出が禁じられていた。しかし、第2次安倍政権が14年に「防衛装備移転三原則」を閣議決定。これによって、端的に言えば定められた要件を満たした場合にこれまで事実上禁じられてきた武器などの輸出が可能になった。とはいえ、実際の運用としては、基本的に殺傷能力のない装備品に限定してきた。だからこそ、ロシア・ウクライナ問題に関連した支援において、欧米諸国と異なり、日本は資金の他、防弾チョッキ、トラックなどの自衛隊車両などの提供にとどまっている。
●世界情勢の変化に対応した防衛産業の見直しが必要に
この問題については、国民民主党の玉木雄一郎代表の直近の記者会見での発言が分かりやすい。「(日本のウクライナ支援について)評価できるが、F16戦闘機の提供を決断した諸外国に比べれば、どうしても見劣りする」「国内の防衛産業の育成も視野に入れ、地雷の処理や防衛に資する装備品は、(輸出に向けて)対象拡大可能だ」というものだ。
特に「国内の防衛産業の育成」は大きな問題だ。現実問題として、現在進行形でロシア・ウクライナ問題が継続しているだけでなく、米国と中国、台湾と中国の対立激化、北朝鮮の挑発行動の頻発など、世界情勢の緊迫感が強まっている時代に、現状はほぼ自衛隊向けで成り立っている防衛産業が、世界情勢の変化に対応する形で開発を続けていける環境を構築できるかに今回の運用指針見直しの話題は直結しているのだ。見落とされているかもしれないが、政府は既に、同志国の軍などへ防衛装備品を提供することを通じて、安保能力強化を支援する無償資金協力の新制度「政府安全保障能力強化支援(OSA= Official Security Assistance)」を創設している。そういった意味では、制限はしっかりと議論の中で付与されるとはいえ、防衛産業に追い風が吹く方向に着実に向かっていると言えそうだ。直近でも、アラブ首長国連邦(UAE)と、2国間で防衛装備品の輸出入を可能にするための「防衛装備品・技術移転協定」に新たに署名している。
防衛関連の銘柄では、防衛省からの受注実績で三菱重工業 <7011> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]、NEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、沖電気工業 <6703> [東証P]などが挙げられる。また、材料系の銘柄としては石川製作所 <6208> [東証S]、興研 <7963> [東証S]、重松製作所 <7980> [東証S]などに個人投資家の資金が集中する傾向があるが、以下では値が飛びやすい中型の防衛関連株に注目した。
●日本アビオ、イーグル工、日製鋼、古野電など注目
日本アビオニクス <6946> [東証S]~NAJホールディングスの子会社であり、航空・宇宙、防衛、産業分野向けに電子デバイス製品などを手掛けている。防衛省から主契約会社として受注した第1次バッジシステム(自動警戒管制組織)の開発に参画。指揮・統制システム、表示・音響システムなどに、機器・装置を提供。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)認定のハイブリッドICは、人工衛星やロケットの信頼性向上に貢献している。
イーグル工業 <6486> [東証P]~陸・海・空のモビリティー、各産業機械にメカニカルシールを提供する。航空宇宙業界向け事業は、主に航空機や宇宙ロケットのジェットエンジンに使用されるメカニカルシールの研究開発生産を手掛けている。24年3月期~26年3月期の新中期経営計画「持続性ある企業体質の構築 Fly Sky High!」において、民間航空機市場・宇宙開発への積極的参画や、原子力、防衛関連市場のニーズ増を見据えた準備に取り組むとしている。
伊藤忠テクノソリューションズ <4739> [東証P]~コンピューター・ネットワークシステムの販売・保守、ソフトウェア受託開発、情報処理サービス、科学・工学系情報サービスなどを手掛ける。防衛においては、地上構造物・車両の耐爆・耐衝撃性の評価、砲弾の貫通力評価などのコンサルティング、飛翔体衝突時の地上構造物の被害予測や成形爆薬、推進薬、炸薬などの各種火薬の解析などを行う。
大同特殊鋼 <5471> [東証P]~大手特殊鋼メーカーであり、特殊鋼をはじめとして、高機能磁石や工業炉など幅広い分野の鉄鋼関連製品を手掛けている。自動車産業をはじめ、航空機、船舶、IT機器などの産業分野を支えており、航空機では、軽量で高強度、高靭性、耐熱性を高い次元で満たすジェットエンジンシャフトなどを手掛ける。
日本製鋼所 <5631> [東証P]~陸上自衛隊の運用する19式装輪自走りゅう弾砲、海上自衛隊の護衛艦に搭載される62口径5インチ砲のほか、低空を侵入して来る敵航空機などを迎撃する「87式自走高射機関砲」では、車体が三菱重、射撃統制装置は三菱電が製造しており、同社は独特の形状である砲塔を手掛けた。
古野電気 <6814> [東証P]~魚群探知機や船舶レーダーなどを取り扱う船舶用電子機器総合メーカー。防衛分野では周辺海域の警戒監視や不審船などの小型水上船舶の探知識別などの任務にあたる固定翼哨戒機(P-1)航空機戦術指揮装置用周辺器材を手掛けた。
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