今年前半の【急騰】材料株 ベスト50 <GW特集>
2023年前半の株式市場は、日銀の金融緩和修正サプライズで急落した昨年末から一転して底堅い動きをみせている。米銀行の相次ぐ経営破綻に端を発した金融システム不安を受けて3月中旬に急落する場面があったものの、金融当局の迅速な対応によって早期に落ち着きを取り戻すとその後は上値追いが続いた。インバウンド消費の復調を含めたリオープン(経済活動の再開)の動きやPBR1倍割れ企業に対する東証の改善要請などが株価を刺激したほか、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が大手商社株の保有比率を高めたことを明らかにするなど、海外投資家にも割安な日本株を見直す動きが広がっている。
日経平均株価は5月1日に昨年8月19日以来となる2万9000円台を回復し、翌2日は約1年4ヵ月ぶりの高値2万9278円まで上値を伸ばした。植田日銀新総裁のもとで初めて開催された政策決定会合を受けて、大規模な金融緩和の早期修正観測が後退し、急速に円安が進んだことも目先の株高要因となっている。
ここでは、こうした堅調な相場展開のなかで、今年前半に株価が大きく値上がりした銘柄に注目し、上昇率ベスト50を取り上げた。下表では、5月2日終値の昨年12月30日終値に対する上昇率が大きい順に並べ、その上昇の主因を記した。今年のランキングは東証スタンダードとグロースの2市場に上場する企業が40銘柄と8割を占め、株価が倍化した銘柄数は25社に上った。
値上がり率トップに輝いたのは、短期集中型の英語コーチングサービスを提供するプログリット <9560> [東証G]。昨年9月に新規上場した企業でIPO直後は大きく値を崩したが、今年1月に発表した9-11月期(第1四半期)決算発表の内容が評価されると株価は大きく居所を変えた。足もとでは、脱コロナ禍における英語学習需要の回復を追い風に、英語コーチングサービスとサブスクリプション型英語学習サービスの顧客数が増加しており、4月14日に23年8月期通期業績見通しの上方修正に踏み切った。これを受けて株価は急騰し、上場来高値を連日で更新している。
2位は引っ越し時の電気やガス、水道といったライフラインの手続き代行業務などを手掛けるラストワンマイル <9252> [東証G]が入った。4月14日に、23年8月期通期の経常利益を従来予想の6000万円→1億7000万円へ上方修正すると発表。昨年11月に社長に選任された渡辺新体制の下で既存事業の運営・利益体制の見直しを中心に経営改革を実行するなか、サービス流通数が上昇したうえ、不採算取引における支払手数料の条件変更が浸透してきたことが上振れの要因となった。これを手掛かり材料に物色人気に火がつき、連日ストップ高に買われるなど急騰劇を演じた。
3位に入ったのはAIソリューション事業を展開するヘッドウォータース <4011> [東証G]。米オープンAIが開発した対話型AI「ChatGPT」の登場で人気が高まるAI関連として脚光を浴びた2月9日をはじめ、今年に入ってからストップ高を合計11営業日も記録している。直近では4月6日に、米画像処理半導体大手エヌビディア<NVDA>のエッジAIスーパーコンピューター「NVIDIA Jetson」シリーズに標準対応した管理ソリョーションを開発したと発表。さらに翌日、ソニーグループ <6758> [東証P]系企業のサービスパートナーになったことを明らかにしたことも材料視され、株価はストップ高を挟んで19日に昨年末比5.3倍の1万8440円まで買われる場面があった。
5位のAbalance <3856> [東証S]は太陽光パネルを製造するベトナムの子会社VSUNの業績が好調を極めている。2月13日に23年6月期の経常利益を従来予想の38億円→73億円(前期比4.8倍)に大幅上方修正した。これに続いて、同24日には中期経営計画の最終年度である24年6月期の同利益予想を158億円へ再上方修正すると発表。この会社側計画にはVSUNの第4工場の本格稼働を織り込んでおらず、一段の上振れに含みを持たせている。高成長期待を背景に株価は快進撃を続け、4月18日に昨年末比5.5倍の1万3370円まで上値を伸ばした。
今年前半のマーケットでは、ChatGPT、インバウンド、PBR1倍割れ銘柄が大きな話題を集めた。これらに絡む銘柄では、ChatGPT関連がヘッドウォ、インフォネット <4444> [東証G](49位)、ピアズ <7066> [東証G](50位)、インバウンド関連はベストワン <6577> [東証G](19位)とDDホールディングス <3073> [東証P](37位)、そしてPBR1倍割れ銘柄ではGMB <7214> [東証S](8位)と加藤製作所 <6390> [東証P](43位)がリスト入りした。GMBは5月1日に前期の経常利益予想を20期ぶり最高益見通しに大幅上方修正したことが評価され、約5年ぶりの高値圏に急浮上している。
また、株価上昇率ランキングの特徴として、昨年新規上場を果たした企業が多いことが挙げられる。首位のプログリットを筆頭に、ギックス <9219> [東証G]、ASNOVA <9223> [名証N]、ELEMENTS <5246> [東証G]、グッピーズ <5127> [東証G]、マイクロアド <9553> [東証G]、エージェント・インシュアランス・グループ <5836> [名証M]、クリアル <2998> [東証G]、ウネリー <5034> [東証G]、ソシオネクスト <6526> [東証P]、ビーウィズ <9216> [東証P]と実に11社が入った。成長性や収益性を評価して上場後のセカンダリー市場で妙味株を狙う動きが顕著にみられる。
そのほか、急騰株リストの常連である好業績銘柄は例年通り多く入った。4月下旬から本格化している3月期決算企業を中心とする決算発表では、好業績を素直に評価するケースが目立つ。業績に対する感応度が高まっており、連休明けにピークを迎える決算発表は要注目だ。
●今年の株価上昇率ランキング【ベスト50】
※5月2日終値の12月30日終値に対する上昇率
(株式分割などを考慮した修正株価で算出)
―― 対象銘柄数:4,215銘柄 ――
(今年の新規上場銘柄、地方銘柄は除く)
銘柄名 市場 上昇率(%) 株価 個別ニュース/決算速報/テーマ
1. <9560> プログリット 東証G 284 2822 顧客数増加で23年8月期業績予想を上方修正 (04/17)
2. <9252> ラストワンM 東証G 281 2933 サービス流通数上昇で23年8月期業績予想を上方修正 (04/17)
3. <4011> ヘッドウォ 東証G 264 12750 エヌビディアのエッジAIシリーズに対応した管理ソリューション開発 (04/07)
4. <5935> 元旦 東証S 236 3595 期末配当予想を75円増額へ (03/28)
5. <3856> Aバランス 東証S 234 8180 欧米向け太陽光パネルが計画上回り23年6月期業績予想を上方修正 (02/13)
6. <5337> ダントーHD 東証S 194 650 第三者割当増資による資金調達を材料視 (01/16)
7. <9219> ギックス 東証G 166 3205 今期営業利益3.3倍に上方修正 (05/01)
8. <7214> GMB 東証S 152 1749 超低PBRの自動車部品株として投資資金攻勢続く (04/05)
9. <2970> グッドライフ 東証S 151 1589 今期経常は79%増で4期ぶり最高益更新へ (02/14)
10. <9223> ASNOVA 名証N 148 2870 5月末を基準日に1株を2株に分割へ (04/03)
11. <9930> 北沢産 東証S 147 477 4-12月期(3Q累計)経常が51%増益で着地・10-12月期も6.4倍増益 (02/10)
12. <5246> エレメンツ 東証G 141 1136 マイナンバー機能のスマートフォン搭載対応の本人確認方式提供を材料視 (04/26)
13. <5127> グッピーズ 東証G 135 3370 閲覧課金売り上げ好調で23年8月期業績予想を上方修正 (04/12)
14. <7601> ポプラ 東証S 135 329 今期最終増益の見通しと新中期計画を材料視 (04/13)
15. <9553> マイクロアド 東証G 132 3890 10~12月期最終益の高進捗率を好感 (02/15)
16. <2162> nms 東証S 131 574 新たな中期経営計画の発表を材料視 (04/24)
17. <3083> シーズメン 東証S 124 832 サイフが6.94%保有で思惑的な買い入る (02/03)
18. <5820> 三ッ星 東証S 124 2294 4月20日を基準日として1株を3株に株式分割へ (03/27)
19. <6577> ベストワン 東証G 120 3745 インバウンド関連
20. <6656> インスペック 東証S 108 1906 高性能フラットベッド型検査装置及びロールtoロール型検査装置の大型受注を獲得 (04/03)
21. <7065> upr 東証S 107 2167 保管用パレットなど伸長し23年8月期業績予想を上方修正 (04/17)
22. <7776> セルシード 東証G 103 341 医療用細胞シートの将来性期待で上昇波鮮烈 (03/13)
23. <5836> エーインシュ 名証M 102 1070 今期経常は48%増で2期ぶり最高益更新へ (02/14)
24. <3133> 海帆 東証G 101 511
25. <6775> TBグループ 東証S 101 301 JTBと基本契約締結 (03/10)
26. <3989> シェアテク 東証G 97.5 468 10-12月期(1Q)最終は4.2倍増益で着地 (02/14)
27. <4074> ラキール 東証G 96.5 2327 今期経常は22%増で6期連続最高益更新へ (02/14)
28. <2998> クリアル 東証G 96.0 3550 東京都品川区の販売用不動産売却 (03/29)
29. <6924> 岩崎電 東証P 95.4 4450 MBO発表でTOB価格4460円にサヤ寄せ (02/07)
30. <4448> チャットW 東証G 95.4 1229 ビジネスチャットの値上げ発表を材料視 (04/19)
31. <5034> ウネリー 東証G 95.0 4260 人工知能関連
32. <7068> FフォースG 東証G 94.9 760 コストコントロール奏功し12~2月期営業利益38%増 (03/31)
33. <6526> ソシオネクス 東証P 94.7 11290 成長ポテンシャルに注目で国内証券が買い推奨 (04/18)
34. <6932> 遠藤照明 東証P 93.2 1385 今期大幅営業増益・増配計画を好感 (05/01)
35. <5781> 東邦金 東証S 87.6 1553 新開発異種金属接合法を用いた核融合炉用高熱負荷機器開発が重要マイルストーン通過 (03/09)
36. <6334> 明治機 東証S 87.1 509
37. <3073> DDHD 東証P 86.3 1265 脱コロナで業績急回復し約3年ぶりの4ケタ大台にらむ (04/17)
38. <4264> セキュア 東証G 86.3 1125 無人店舗ソリューション展開で米企業と提携 (02/17)
39. <9216> ビーウィズ 東証P 86.1 2023 人工知能関連
40. <6026> GMOテック 東証G 85.9 2984 今期最終は黒字浮上で8期ぶり最高益、4期ぶり125.47円で復配へ (02/13)
41. <3945> スパバッグ 東証S 85.0 1402 今期経常を11倍上方修正 (02/10)
42. <7901> マツモト 東証S 84.2 9800 5-1月期(3Q累計)最終が赤字縮小で着地・11-1月期も赤字縮小 (03/09)
43. <6390> 加藤製 東証P 82.2 1292 東証の改善要請を背景とした経営努力に期待 (04/04)
44. <6627> テラプローブ 東証S 81.2 2942 国内有力調査機関の新規格付け開始 (05/02)
45. <6675> サクサ 東証P 80.3 2131 23年3月期業績予想と期末一括配当計画を上方修正 (05/01)
46. <7359> 東京通信G 東証G 80.3 2183 「AMIZA CITY GINZA」を材料視 (02/20)
47. <6298> ワイエイシイ 東証P 80.1 2885 業績高成長続きパワー半導体分野での活躍に期待 (03/30)
48. <6016> ジャパンエン 東証S 80.0 2216 UEエンジンが世界シェア10%突破見通しと伝わる (04/04)
49. <4444> インフォネ 東証G 79.7 1335 オープンAIのCEOが岸田首相と面会で話題 (04/10)
50. <7066> ピアズ 東証G 78.6 1059 チャットGPT搭載した新機能の実証開始 (03/03)
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