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6310 井関農機

東証P
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井関農 Research Memo(5):2022年12月期は増収営業利益減益も中期経営計画の各種施策は着実に進捗(1)


■業績動向

1. 2022年12月期の業績概要
井関農機<6310>の2022年12月期の連結業績は、売上高が前期比5.3%増の166,629百万円、営業利益が同14.8%減の3,534百万円、経常利益が同19.7%減の3,762百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.9%増の4,119百万円だった。売上高に関しては、海外事業が好調だったことを受け、前期比増収を達成した。利益面に関しては、原価高騰に伴う販売価格の改定など、適正な利益確保に向けた取り組みを実施したものの、原材料価格の高騰が収益を圧迫した。

国内売上高については、前期比4.1%減の112,638百万円だった。中期経営計画の下、大型農機であるトラクタの「T.Japan(TJ)」シリーズ、コンバインの「HJ」シリーズ、田植機の「さなえPRJ8」などの販売に注力したものの、米価の低迷・資材価格の高騰、前期にあった経営継続補助金の反動などを受け、顧客の購買意欲が低迷した。加えて、サプライチェーンの混乱によって、機会損失も発生した。品目別の売上高は、トラクタなどの整地用機械が前期比4.3%減の22,908百万円、田植機などの栽培用機械が同12.9%減の7,907百万円、コンバインなどの収穫調整用機械が同3.3%減の16,090百万円だった。一方、部品、修理収入などのメンテナンス収入は、前期並みの水準を維持した。これを受け、作業期・補修用部品・修理収入の売上高は、同3.1%減の42,023百万円に踏みとどまった。

海外売上高に関しては、前期比32.3%増の53,991百万円となり、前期に引き続き過去最高売上を更新した。北米地域については、コンパクトトラクタ市場が調整局面に入ったものの、現地在庫レベルの回復に向け、同社の出荷は伸長した。これを受け、売上高は前期比29.1%増の19,500百万円となった。欧州については、ライフスタイルの変化に伴う市場の動きを捉えたことにより、コンシューマー向けを中心に販売が拡大した。加えて、景観整備向けの需要が回復したことにより、プロ向けの販売も拡大した。また、ISEKIドイツの連結子会社化も業績の拡大に寄与した。ISEKIドイツ、ISEKIフランス、プレミアムターフケア社を中心とした販売体制の強化とサプライチェーン効率化は順調に進捗している。この結果、欧州地域の売上高は、同57.9%増の25,100百万円に急伸した。アジア地域に関しては、大型農機のJapanシリーズが好調だったことにより、韓国向けの出荷が増加したものの、中国向け半製品の出荷減などが響き、減収となった。同地域の売上高は、同5.5%減の8,600百万円だった。

利益に関しては、国内・海外ともに適正利益の確保に向け、販売価格の改定を実施したものの、原材料価格の高騰影響のすべてをカバーするには至らなかった。加えて、サプライチェーンの混乱によって、顧客に納品ができず、機会損失が発生したことも利益を押し下げた。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失の計上はあったものの、ISEKIドイツの連結子会社化及び中国の持分法適用関連会社に関する持分変動利益など特別利益の計上があったため増益となった。

2022年12月期のトピックスとしては、国内市場において、環境保全型スマート農業推進の一環としてスタートアップ企業である有機米デザインへ出資を行った。同社はこれまでも農林水産省が掲げる「みどりの食料システム戦略」に対応する形で自動操舵機能を搭載した製品や、センサーにより施肥量の調整が可能な田植機を市場に投入してきた。今回のスタートアップ企業との協業によって、外部のノウハウを取り入れながらイノベーションを迅速に実行していくとともに、中期経営計画で掲げる「ビジネスモデル転換」を推し進める構えだ。有機米デザインが開発する「アイガモロボ」の販売を2023年1月から開始しており、年間500台の販売を目指す。「みどりの食料システム戦略」のなかで農林水産省は、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%拡大させることを目指している。消費者に目を向けると、令和4年3月に農林水産省が実施した調査では、「環境に配慮した農林水産物・食品(農薬や化学肥料に頼らず生産された有機農産物や、過剰包装でなくごみが少ない商品など、環境への負荷をなるべく低減した農林水産物・食品)を選ぶことは大切だと思うか」という問いに対して、87.5%が「そう思う」と回答している。外部環境を考慮すると、今後有機農業に対する関心がますます高まっていくことが期待できる。そうしたなかで、有機米デザインに出資をし、有機ビジネス創出に向けて先手を打った格好だ。

2. 中期経営計画の進捗状況
中期経営計画で定める各種施策も着実に進捗した。中期経営計画目標達成、さらなる成長加速に向けて、着実に土台が整っていると言える。

(1) ベストソリューションの提供:選択と集中(国内市場)
国内市場においては、スマート農機の販売伸長によって大規模顧客が拡大したほか、営農ソリューション・ポータルサイト「Amoni」の展開による営業力・サービス力の向上や、商圏・営業戦略をブロック単位で考え拠点や人員の最適化を行うことにより、販売会社の収支構造改革も進んだ。

(2) ベストソリューションの提供:選択と集中(海外市場)
海外市場に関しては、欧州・北米が牽引役となり、過去最高売上を前期に引き続き達成した。欧州においては、ISEKIドイツを連結子会社化したことにより、サプライチェーンの効率化と販売体制の強化がさらに進んだ。アジアについては、タイのIST社において収益体質改善を実施し営業黒字を確保したほか、タイに、インドTAFE社製小型トラクタを投入し、商材の拡充を実施した。

(3) ベストソリューションの提供:選択と集中(商品開発戦略)
大規模化・IT化への対応に関しては、スマート農機の拡充が順調に進んだ。欧州においては、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素化が進んでいることを受け、電動モーアの試験的な投入も実施した。今後は、市場の反応を見ながら、商品化する方針である。

(4) ベストソリューションの提供:ビジネスモデル転換
国内メンテナンス収入が堅調に推移したほか、有機米デザインへの出資を実行するなど、新規ビジネスの創出と確立に向けて着実に取り組みが進行している。その他、クラウド型営業モバイルツール「i-Magazine」の導入が進むなど、DXによる営業活動の効率化とサービス品質の向上も実現している。

(5) 収益とガバナンス強化による企業価値向上:収益性改善(構造改革・経営効率化)
国内の松山製造所で生産していた一部製品をPT井関インドネシアへ生産移管した。PT井関インドネシアを中心とした生産体制・サプライチェーンの再構築によって、最適価格で生産できる体制を構築している。その他、乾燥機の自社開発・生産を終了するなど、構造改革による経営効率化を着実に推し進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

《SI》

 提供:フィスコ

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