【特集】待ったなしの「空き家対策」、商機拡大の関連株は今が買い場 <株探トップ特集>
全国の空き家の数が増え続けている。空き家は防災や防犯、景観、衛生面などで周辺住民の生活環境に影響を及ぼす可能性がある。その解決につながる関連銘柄の商機拡大につながろう。
―空家対策特措法改正と税制改正で問題解決へ、政府の本腰でビジネスチャンスも拡大―
「待ったなし」と言われ続けてきた 空き家対策が、岸田文雄政権下で進展しようとしている。政府は3月3日、空き家の発生を抑えて活用を促すために「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。窓や壁の一部が壊れているような管理不全空き家について、固定資産の税優遇の対象から外して事実上増税する。また、2023年度の税制改正では、空き家の発生を抑制するための特例措置が拡充・延長された。
全国各地で問題となっている空き家や空き地問題の解決は待ったなしの課題であり、株式市場でも関心の高いテーマの一つとなっている。対策の進展により、今後はメディアなどで話題になることも増えるとみられ、関連銘柄に脚光が当たることも増えそうだ。
●増え続ける「空き家」は数・率ともに過去最高
「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によると、18年時点で全国にある空き家の数は848万9000戸と過去最高となり、前回調査の13年に比べて29万3000戸(3.6%)増加し、ここ20年間でも47.3%増加した。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%で、13年の13.5%から0.1ポイント上昇し、こちらも過去最高となっている。
特に、居住目的のない空き家の増加が顕著だ。1998年は182万5000戸だったが、2018年には348万7000戸に増加した。30年には470万戸に拡大すると見込まれている。
空き家の増加については、少子高齢化の進展や人口移動の変化などが背景にあるといわれている。管理が行き届いていない空き家は、地域の景観を損なうだけではなく、防災や防犯、衛生面などで周辺住民の生活環境に影響を及ぼす可能性があり、現在では社会問題と化している。除却などの更なる促進に加えて、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用や適切な管理を総合的に強化することが求められている。
●管理不全空き家は事実上の増税へ
3月3日に閣議決定された改正案では、管理不全空き家に対して事実上増税するほか、市区町村が中心市街地や地域の再生拠点など空き家が集中する区域を対象に建築規制を緩和し、建て替えを後押しする。住宅の相続が増加することを見据え、空き家として放置されない仕組みを整える方針だ。
いわゆる「空家対策特措法」の改正は15年の施行以来初めてとなる。今国会での成立を目指しており、早ければ今年度中に新たな対策に着手する見通しだ。
また、23年度の税制改正では、空き家の発生を抑制するための3000万円の控除特例措置が4年間(24年1月1日~27年12月31日)延長されるほか、譲渡後に一定期間内に除却工事などを行った場合においても、特例の対象とするよう要件が緩和された。
これら法改正と税制改正により、早めに空き家の解体や処分に踏み切ってもらうようにする。これにより、空き家の問題である景観や防災・防犯、衛生面で周囲に悪影響が及ぶことを防ぐのが狙いだ。
●関連企業の商機も拡大へ
こうした施策に加えて、市区町村レベルでも空き家問題に対する取り組みが増えており、空き家関連ビジネスの商機は拡大傾向にある。関連銘柄には引き続き要注目だろう。
LIFULL <2120> [東証P]は、全国の地方自治体が管理する空き家・空き地の情報を集めたプラットフォーム「LIFULL HOME’S 空き家バンク」を運営している。「空き家バンク」とは、地方自治体が空き家の賃貸・売却を希望する所有者から提供された情報を集約し、空き家をこれから利用・活用したい人に紹介する制度。「LIFULL HOME’S 空き家バンク」は、全国の自治体の「空き家バンク」から情報の提供を受けており、国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」のモデル事業にも採択されている。
ジェイ・エス・ビー <3480> [東証P]は、関西を中心に全国で高齢者住宅を展開しており、利用者が入居時に空き家となる自宅の売却などを支援している。21年からはAnd Doホールディングス <3457> [東証P]傘下のピーエムドゥと業務提携を行い、高齢者の住居を対象に、自宅の売却や利活用の支援を行っている。
三井住友トラスト・ホールディングス <8309> [東証P]は、空き家に関する悩み相談サービス「空き家トータルサポート」を展開している。グループ企業で売買や資産運用を手掛ける三井住友トラスト不動産、空き家の管理・見回りサービスを提供するALSOK <2331> [東証P]、住宅の建て替えやリフォームなどを通じた空き家活用事業を展開する積水ハウス <1928> [東証P]と連携し空き家診断、売却、管理、有効活用、法律・税務相談などのサポートを提供している。
カチタス <8919> [東証P]は、独自のノウハウにより空き家を仕入れ、リフォームによって付加価値をつけることで、新築の半額程度の価格で販売するビジネスモデルを展開している。主に地方都市をターゲットに、「新築」「中古」「賃貸」に代わる「第4の選択肢」として、リフォーム済み住宅を市場に供給しており、中古住宅の買い取り再販事業で、販売戸数は業界首位を誇る。
このほか、原状回復工事や リノベーションなどを手掛けるニッソウ <1444> [東証G]や、全国の空き家と投資家とのマッチングを行う空き家ソリューション事業を展開するアジアゲートホールディングス <1783> [東証S]、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」を運営するツクルバ <2978> [東証G]、建築基準法上の建築物確認検査の請負サービスを展開するERIホールディングス <6083> [東証S]などにも注目したい。
株探ニュース