サイバリンクス Research Memo(1):好調な業績を受け中期経営計画を見直し、数値目標を上方修正
■要約
サイバーリンクス<3683>は、主に流通業と官公庁向けに基幹業務システム等を提供するITサービス会社である。事業セグメントについては、2020年12月期まではITクラウド事業とモバイルネットワーク事業の2本柱であったが、2021年12月期からは流通クラウド事業、官公庁クラウド事業、トラスト事業、モバイルネットワーク事業の4つに変更している。同社が提供するクラウドサービスは、共同利用する「シェアクラウド」であり、高機能・高品質でありながら低価格を実現している点が特色であり強みとなっている。また、モバイルネットワーク事業は、(株)NTTドコモの2次代理店としてドコモショップの運営を行っている。
1. 2022年12月期の業績概要
2022年12月期の連結業績は、売上高12,225百万円(前期比7.7%減)、営業利益1,127百万円(同19.3%増)、経常利益1,141百万円(同19.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益909百万円(同41.0%増)となり、経常利益は3年連続で過去最高を更新した。期初計画に対する達成率については、売上高は92.1%と若干下回ったものの、定常収入は101.0%、経常利益は109.2%となり、計画を上回った。セグメント別では、流通クラウド事業は、クラウドサービスが拡大したことで定常収入が着実に増加した。また、ソフトウェア償却費が減少したことによりセグメント利益率が向上し、大幅な増益となった。官公庁クラウド事業は、防災行政無線デジタル化工事等の特需が終了した影響により減収となったが、比較的利益率の高いスポット案件等が計上され、粗利率が改善したことから増益となった。トラスト事業は、事業化の加速を担い、新サービスの開発等積極的な研究開発投資を続けていることから損失計上したものの、損失幅は縮小した。モバイルネットワーク事業は、販売台数が減少したことに加え、NTTドコモからの支援費が減少した影響等により減収減益となったが、想定の範囲内であった。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績は、売上高15,618百万円(前期比27.8%増)、定常収入7,719百万円(同11.6%増)、営業利益979百万円(同13.2%減)、経常利益974百万円(同14.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益587百万円(同35.5%減)の見通し。2022年7月に子会社化した(株)シナジーの連結開始等もあり大幅増収を見込むが、M&Aに係る償却負担等(年間約3億円)により各利益は減益予想となっている。見かけ上は厳しい利益予想だが、償却前営業利益は前期比13.4%増予想であり、実質的な内容は悪くない。セグメント別では、流通クラウド事業は定常収入の積上げ等により増収増益の予想だが、官公庁クラウド事業はのれん償却※負担等から増収減益を見込む。トラスト事業は各種サービスの提供拡大等により大幅増収を見込むものの、投資継続とのれん償却負担増により損失計上を予想している。ただし、損失幅は縮小する見通しだ。モバイルネットワーク事業はM&Aによる店舗増で増収予想だが、のれん償却負担増もあり微減益の見込み。
※シナジー取得に関するのれん償却費は暫定値となる。
3. 中期経営計画
同社は2021年2月に、2025年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表し、2025年12月期に売上高145億円、経常利益16億円、定常収入90億円、ROE13%以上を掲げていた。しかし、成長スピードの加速により、2021年12月期及び2022年12月期の業績が計画値をそれぞれ上回ったことに加え、外部環境やM&A等の内部環境の変化もあり、中期経営計画を見直すこととした。見直し後の数値目標は、2025年12月期に売上高170億円、経常利益16.8億円、定常収入95億円、ROE13%以上としている。各利益の見直しが小幅に留まっているものの、減価償却費の大幅増を吸収しての目標値である点は注目に値する。償却負担が軽くなる2026年12月期以降は加速度的な利益向上が見込めると弊社では見ている。
■Key Points
・シェアクラウド、流通業界向けに特化したユニークなITベンダー
・2022年12月期は流通クラウド事業及び官公庁クラウド事業の収益性が改善し、前期比19.1%の経常増益
・2023年12月期はM&Aに係る償却負担等により減益予想だが、実質的には増益
・減価償却費の大幅増を吸収しつつ、中期経営計画の数値目標を上方修正
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《YI》
提供:フィスコ