エーバランス Research Memo(1):2023年6月期第2四半期は、経常利益は前年同期比17.2倍で着地
■要約
Abalance<3856>グループは、ESG・SDGsを推進する再生可能エネルギーの総合カンパニーである。主力の太陽光発電に関しては企画・開発から施工・販売・保守・売電・リサイクルまですべてを手掛けており、2020年11月にはベトナムの大手太陽光パネルメーカーであるVietnam Sunergy Joint Stock Company(以下、VSUN)を特定子会社化し、業容を大きく拡大している。VSUNの年間生産量は世界ランキングの上位に入り、日系ではトップである。太陽光パネルの需要は想定を大きく上回るペースで拡大しており、今後も連結業績をけん引するものと期待される。VSUNはベトナム「UPCoM店頭市場」の株式上場に向けて、現地の公開会社制度への登録審査中であるが、ベトナム市場は成長資金を取りに行くには市場規模が小さいため、ほかの外国証券市場への株式上場も含めて検討する方針としている。
1. 2023年6月期第2四半期累計の業績概要
2023年6月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比320.5%増の112,071百万円、営業利益で同870.5%増の5,167百万円と大幅増収増益となった。太陽光パネル製造事業の売上高が欧米向けを中心に同368.7%増の107,441百万円と拡大し、利益面でも部材価格の高騰等に対応した値上げが浸透してきたこと、海上運賃が下落したことにより、セグメント利益で4,612百万円(前年同期は223百万円)と大幅増益となったことが主因だ。また、グリーンエネルギー事業についても自社開発並びにM&A効果により売電収入が増加し、売上高で同22.3%増の4,425百万円、セグメント利益で同50.6%増の932百万円と好調に推移した。
2. 2023年6月期の業績見通し
2023年6月期の連結業績は、売上高で前期比89.3%増の175,000百万円、営業利益で同312.3%増の7,000百万円と2度目の上方修正を行った(期初予想は売上高110,000百万円、営業利益2,900百万円)。太陽光パネルの需要が大きく伸び、利益率が想定以上に改善していることが要因だ。ただ、同予想もなお保守的であり、上振れ余地が大きいと弊社では見ている。今回の修正予想に対する第2四半期までの進捗率が売上高で64.0%、営業利益で73.8%に達していること、2022年10月に竣工したVSUNの太陽光パネルモジュールの第4工場がフル稼働となり、年間生産能力で従来の2.6GWから5.0GWに拡大したこと、下期も値上げ効果と海上運賃の下落が予測され、収益性の向上が見込まれることなどが要因だ。なお新第4工場は、2023年1月以降フル操業状態にあるが、立ち上げからまだ日が浅く合理的な見込みが一部困難な面があるため、2度目の修正予想には第4工場フル操業に伴う影響額は織り込まれていない。
3. 中期経営計画の再上方修正と重点施策
同社は、2021年10月に発表した2024年6月期までの3ヶ年中期経営計画について、VSUNの業績が極めて好調に推移していることを踏まえ2022年9月に上方修正したが、足元の状況が想定を上回って推移していることから、2023年2月に再上方修正を発表した。2024年6月期の目標は、売上高で前回比1,018億円増の2,518億円、営業利益で同113億円増の158億円へ引き上げた。増額修正の主因は太陽光パネル製造事業の好調を主因とするものである。第1フェーズとして2023年10月に年間生産能力で3GW(設備投資額は約1.8億米ドル)の能力を持つ新セル工場を竣工予定で、量産を開始する(最終的には6GWまで拡大する計画)。今までセルは外部調達してきたが、セルからモジュール工程まで一貫生産することで利益率の向上が見込めること、内製化することで部材の安定調達が可能となること、各国の輸入規制(中国製部材を使用した太陽光パネルの輸入制限等)に対処できる体制を整備することがセル量産化の目的である。なお、今回の再上方修正の計画にはセルの量産化による利益率改善効果を織り込んでいない。グリーンエネルギー事業は2030年までに1GW(国内外計)の事業目標を掲げ、M&Aによる事業の加速化を企図し、重点施策として自家消費案件(ノンフィット、ノンファーム)、ソーラーシェアリング等を推進していく。
■Key Points
・「グリーンエネルギー事業」と「太陽光パネル製造事業」を両輪とした再生可能エネルギーの総合カンパニー、太陽光パネルの製造能力(5GW)は日系企業トップ
・2023年6月期第2四半期累計業績は太陽光パネル製造事業の高成長により大幅な増収増益に
・再上方修正した2023年6月期業績予想も保守的で上振れ余地残す
・2024年6月期業績目標を再上方修正、セル量産化による利益率改善効果でさらなる上振れも
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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提供:フィスコ