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解禁前夜「デジタル給与」、キャッシュレス加速で急浮上する銘柄群 <株探トップ特集>


―雇用・労働両サイドにメリット、デジタルマネー決済の裾野広がり商機拡大へ―

 例年4月は新年度のスタートとともに、さまざまな新制度が始まる月でもある。今年はこども家庭庁がスタートするほか、所有者不明土地などに関する改正民法も施行される。それらと並んで注目されているのが「デジタル給与 の解禁」だ。

 デジタル給与とは、雇用主が労働者に対して支払う給与を、電子マネーや任意のスマートフォン決済アプリで支払うこと。現在一般的に利用されている銀行口座ではなく、キャッシュレス決済サービスを提供する指定資金移動業者のアカウントに給与が振り込まれることになる。雇用者側・労働者の双方にとってメリットも多く、株式市場でも関心が高い。実際に動き出すのは秋以降との見方が多いものの、解禁となる4月以降、資金移動業者や導入する企業などの話題も増えてくるとみられ、関連銘柄には今から注目したい。

●労働者の同意を得たうえでデジタル給与可能へ

 昨年10月26日、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会分科会が、給与をデジタルマネーで支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承し、デジタル給与を解禁する方針を決定した。その後、11月28日に賃金の支払い方法を定めた労働基準法施行規則の改正省令が公布されており、今年4月1日に施行される。

 現在、賃金の支払いに関しては労働基準法において、「通貨で」「直接労働者に」「その全額を」「毎月1回以上」「一定の期日を定めて」支払わなければならないと規定されている。時代の変化に合わせて、1975年からは銀行口座への振り込みが、労働者の同意を得たうえで可能となったが、4月にデジタル給与が解禁されることにより、新たな振込先として指定資金移動業者の口座が加わることとなる。

●指定資金移動業者に厳しい要件

 解禁されることになったデジタル給与だが、銀行口座などと同様に労働者の同意が必要なほか、指定資金移動業者には「口座残高上限額を100万円以下に設定または100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること」や、「ATMを利用することなどにより口座への資金移動を1円単位で行うことができ、かつ少なくとも毎月1回は手数料を負担することなく受け取りができること」などの厳しい要件が課せられている。

 指定資金移動業者は4月1日以降、申請に基づきこうした要件を審査のうえ指定されるが、審査には時間を要するとみられている。そのため、実際にデジタル給与を導入する企業が増えるのは秋以降との見方が多い。

●デジタル給与導入のメリットとは

 資金移動業者が、こうした厳しい要件をクリアしてまでデジタル給与に参入するとみられているのは、デジタル給与を導入することで、さまざまなメリットがあり、そこにビジネスチャンスがあるからだ。

 労働者にとっては、給与が キャッシュレス決済のアカウントに振り込まれれば、銀行口座などからアプリなどにチャージする手間が省けるほか、ECや海外送金などが便利になる。また、企業にとっては、銀行口座振り込み時の手数料削減につながるほか、外国人労働者への給与支払いが容易になるといったメリットが考えられる。資金移動業者にとっても、給与が直接口座に入ることで、決済利用の裾野が広がる可能性が高まりそうだ。

 メリットがある一方で、通信障害や不正利用などのトラブル時の対策などについて課題もまだ多い。ただ、今後これらの課題への対策も含めて、キャッシュレス決済が進展する現在において、デジタル給与に関する話題が増えるのは必至とみられる。関連銘柄への関心も徐々に高まろう。

●電子決済支援企業などにも恩恵大

 注目されるのは、指定資金移動業者となるキャッシュレス決済サービス提供企業だ。ソフトバンク <9434> [東証P]とZホールディングス <4689> [東証P]の合弁会社が運営する「PayPay」や楽天グループ <4755> [東証P]が運営する「楽天ペイ」は連携する銀行があり、参入が予想されている。「d払い」を展開する日本電信電話 <9432> [東証P]や、「au PAY」を展開するKDDI <9433> [東証P]、「メルペイ」を展開するメルカリ <4385> [東証P]も同じく参入の可能性が高いだろう。

 また、デジタル給与の解禁により、前述のようにキャッシュレス決済の利用が促進されれば、電子決済支援サービスを手掛ける企業のビジネスチャンス拡大にもつながる。「WeChatPay」などの中国決済や「PayPay」などの国内決済といったさまざまなスマホ決済をワンストップで提供するビリングシステム <3623> [東証G]、市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する「Tapion」の本格展開を開始するフライトホールディングス <3753> [東証S]、給与計算業務のアウトソーシングサービスを提供するペイロール <4489> [東証G]と連携し、デジタルマネーによるシームレスな給与払いを実現するためのサービス設計や業務運用などの協議を開始したGMOペイメントゲートウェイ <3769> [東証P]などに恩恵がありそうだ。

 更に、国内初の損害保険金支払いのデジタルマネー払いや、デジタル給与に先駆けた業務委託報酬におけるデジタルマネー払いなどに取り組むデジタルマネー基盤「doreca」を提供するBIPROGY <8056> [東証P]や、電子給与明細など給与DX関連であるマネーフォワード <3994> [東証P]、フリー <4478> [東証G]、エフアンドエム <4771> [東証S]、鈴与シンワート <9360> [東証S]などにも注目したい。


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