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こんなところからもお宝発掘、雑食&時々手抜きの勝ち技
すご腕投資家に聞く「銘柄選び」の技 駄犬さんの場合~第3回
第1回「株価より決算を読め! 借金のドン底から3億円選手に浮上した技-その1」を読む
第2回「『ゴールは目標決算、株価じゃない』で、ドン底から3億円選手の技-その2」を読む
「小学生の頃から、国語辞典を読むのが好きだったんです」
取材中、駄犬さん(ハンドルネーム)はこんなエピソードを取材班に教えてくれた。この話を聞きながら、「短期間で借金のドン底から3億円選手に躍進したのには、小さい頃から好奇心旺盛で勉強熱心だった性格があったのだな」と感心していた。
だが、次に本人の口から出た言葉を聞いて、取材班は少々面食らってしまう。国語辞典を開いていたのは、びっしりと小さな文字で埋め尽くされていた紙面を眺めるのが好きだったからで、「自分は活字中毒」というのだ。
駄犬さんは大量の開示情報や統計データ、さらには500人を超える個人投資家のブログの内容をチェックしている。普通の人ならスルーしてしまうような情報さえも、本人は「貴重」と貪欲に集め続けている。その姿は、与えられた餌に飽き足らず、どこかに美味しい餌は落ちていないかと、街中をとくんくん嗅ぎまくる雑種犬を思わせる。
ただ、本人の話を聞くと、文字情報の大食漢にとどまらず、それを消化する仕方も工夫していることで、食した情報が投資の血となり肉となり、そして骨としている姿も見えてきた。現在の投資スタイルを確立させる過程でも、グロース、バリュー、デイトレなど、あらゆる投資スタイルの本を読んでエッセンスを学んだのだという。
そんな駄犬さんの情報の収集と消化法について見ていこう。
■駄犬さんの書棚に並ぶお勧めの書籍
大量&多様、ストーリーの組み立て、そして継続が力に
これまで本コラムで紹介してきたすご腕投資家も、情報収集や分析面などで「なるほど」と思わせるものを持っていた。そうした猛者たちと比べても、駄犬さんは2つの点で、突き抜けている感がある。
それが、
1. 「え、それもチェックするの」という幅広な情報コレクターである
2. 集めた情報をしっかり投資の栄養として吸収する術をもっている
―― こと。さらに付け加えれば、
3. これらを毎日続けている
――ことだ。
500人のブログから投資ヒントを見つけ出す
まず、上の1について見ると、カバーする量や幅広さという点では、日々目を通すブログやSNS(交流サイト)が象徴的だ。
この時代、1000人規模のツイッター・アカウントをフォローし、そこから収集した旬のネタを基にトレードする個人投資家は珍しくない。
駄犬さんの場合、短文のツイッターに加えて、文字量も多く内容も深いブログにまで関心を向け、じっくり読みこなす。それだけでは足りず、多くの個人投資家が書き込みを行う「Yahoo! ファイナンス」の掲示板のコメントまでも目を通す。
その対象は、カリスマやすご腕、うまい投資家に限らない。駄犬さんがユニークなのは、下手な投資家にもしっかり目配りしている点だ。
「この人は、同じ失敗をなんども繰り返しているんです」。チェックしているSNSに話題が及んだ時、駄犬さんがまず紹介してくれたのが、うまい人よりも、残念な人のブログだった。それをしっかり、メモデータベースの中に取り込んでいた。
失敗しても振り返りや改善がなく、再び同じ失敗をする様なども観察し、自分はそうならないよう言い聞かせてもいる。
こうした残念さんたちからは、勉強不足の初心者、劣勢になるとすぐに保有株を投げてしまう人など、様々なケースをウォッチする。それらの考え方や行動を材料に、弱気な人が一斉に売ったところをセリングクライマックスと見なしたり、「靴磨きの少年」の発想で、あまりにも話題になり過ぎたタイミングは天井圏と捉えたりもする。
勝っている人の投資スタイル、書き込み銘柄と時価総額の関係も分析
次に、2について見ていくと、前回の記事で紹介したように、駄犬さんは「定性情報の数値化」をするのが得意だ。このやり方を生かした作業では、ネット上で話題の銘柄に対する期待度と、実際の時価総額や業績の規模との比較を自分なりの尺度で行う活用術がある。
例えば、
・今、どんな銘柄への書き込みが多く、注目度の高い銘柄やテーマは何なのか
・特定の銘柄に対して、投資家がどれくらいの規模の業績を見込んでいるのか
・その銘柄について書き込む人がどの程度いて、それが時価総額に比べて多すぎないか
――などを自分なりに読みこなす。過去の様子もあわせて考えて、加熱気味と思ったらウエートを下げる、ニューフェースの有望銘柄が登場したと思えば打診買いするなど投資判断に役立てる。
さらに、フォローしている投資家を、投資スタイル別に分類分けする作業も行う。特にブログでは、その人の年次や月次の運用成績を公開しているケースも多く、これら公表実績を分析している。
そこから「今、勝っているのはバリュー系か、グロース系か、それとも高配当系なのか」といった趨勢を見分けて、相場の特徴を感じ取っていくのだ。もちろん、数値だけでなく、「勝った」「負けた」の定性的なコメントからも読み取っていく。
官公庁、資源価格の情報もフル活用
企業や公的な組織が公表する、「正統派」ルートからの情報収集も多種多様だ。こちらもマニアックとも思える分野にまで目を向ける。
■駄犬さんの情報収集先と着眼点の例
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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文・イラスト/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)
■駄犬さん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
フリーランスのITエンジニアを本業としつつ、2012年からそれまで手掛けたFX(外国為替証拠金取引)から移行し株式投資を開始。15年のチャイナショックでは、運用資金1000万円を溶かした上に追証発生で借金を抱えることに。一旦退場となるも、給料を原資に再挑戦へ。その後は、急激な資産回復劇を遂げ、現在は3億円プレーヤーとして資産拡大中。「業績は先読みできる」をモットーとし、短期決算プレーと中長期業績先読み投資を両輪に、応用技も加えて好成績を打ち出している。値動きが大きい中小型株がメイン。幅広い情報収集力が強みで、ブログや勉強会を通じて情報発信も熱心に行う。
フリーランスのITエンジニアを本業としつつ、2012年からそれまで手掛けたFX(外国為替証拠金取引)から移行し株式投資を開始。15年のチャイナショックでは、運用資金1000万円を溶かした上に追証発生で借金を抱えることに。一旦退場となるも、給料を原資に再挑戦へ。その後は、急激な資産回復劇を遂げ、現在は3億円プレーヤーとして資産拡大中。「業績は先読みできる」をモットーとし、短期決算プレーと中長期業績先読み投資を両輪に、応用技も加えて好成績を打ち出している。値動きが大きい中小型株がメイン。幅広い情報収集力が強みで、ブログや勉強会を通じて情報発信も熱心に行う。
第1回「株価より決算を読め! 借金のドン底から3億円選手に浮上した技-その1」を読む
第2回「『ゴールは目標決算、株価じゃない』で、ドン底から3億円選手の技-その2」を読む
「小学生の頃から、国語辞典を読むのが好きだったんです」
取材中、駄犬さん(ハンドルネーム)はこんなエピソードを取材班に教えてくれた。この話を聞きながら、「短期間で借金のドン底から3億円選手に躍進したのには、小さい頃から好奇心旺盛で勉強熱心だった性格があったのだな」と感心していた。
だが、次に本人の口から出た言葉を聞いて、取材班は少々面食らってしまう。国語辞典を開いていたのは、びっしりと小さな文字で埋め尽くされていた紙面を眺めるのが好きだったからで、「自分は活字中毒」というのだ。
駄犬さんは大量の開示情報や統計データ、さらには500人を超える個人投資家のブログの内容をチェックしている。普通の人ならスルーしてしまうような情報さえも、本人は「貴重」と貪欲に集め続けている。その姿は、与えられた餌に飽き足らず、どこかに美味しい餌は落ちていないかと、街中をとくんくん嗅ぎまくる雑種犬を思わせる。
ただ、本人の話を聞くと、文字情報の大食漢にとどまらず、それを消化する仕方も工夫していることで、食した情報が投資の血となり肉となり、そして骨としている姿も見えてきた。現在の投資スタイルを確立させる過程でも、グロース、バリュー、デイトレなど、あらゆる投資スタイルの本を読んでエッセンスを学んだのだという。
そんな駄犬さんの情報の収集と消化法について見ていこう。
■駄犬さんの書棚に並ぶお勧めの書籍
大量&多様、ストーリーの組み立て、そして継続が力に
これまで本コラムで紹介してきたすご腕投資家も、情報収集や分析面などで「なるほど」と思わせるものを持っていた。そうした猛者たちと比べても、駄犬さんは2つの点で、突き抜けている感がある。
それが、
1. 「え、それもチェックするの」という幅広な情報コレクターである
2. 集めた情報をしっかり投資の栄養として吸収する術をもっている
―― こと。さらに付け加えれば、
3. これらを毎日続けている
――ことだ。
500人のブログから投資ヒントを見つけ出す
まず、上の1について見ると、カバーする量や幅広さという点では、日々目を通すブログやSNS(交流サイト)が象徴的だ。
この時代、1000人規模のツイッター・アカウントをフォローし、そこから収集した旬のネタを基にトレードする個人投資家は珍しくない。
駄犬さんの場合、短文のツイッターに加えて、文字量も多く内容も深いブログにまで関心を向け、じっくり読みこなす。それだけでは足りず、多くの個人投資家が書き込みを行う「Yahoo! ファイナンス」の掲示板のコメントまでも目を通す。
その対象は、カリスマやすご腕、うまい投資家に限らない。駄犬さんがユニークなのは、下手な投資家にもしっかり目配りしている点だ。
「この人は、同じ失敗をなんども繰り返しているんです」。チェックしているSNSに話題が及んだ時、駄犬さんがまず紹介してくれたのが、うまい人よりも、残念な人のブログだった。それをしっかり、メモデータベースの中に取り込んでいた。
失敗しても振り返りや改善がなく、再び同じ失敗をする様なども観察し、自分はそうならないよう言い聞かせてもいる。
こうした残念さんたちからは、勉強不足の初心者、劣勢になるとすぐに保有株を投げてしまう人など、様々なケースをウォッチする。それらの考え方や行動を材料に、弱気な人が一斉に売ったところをセリングクライマックスと見なしたり、「靴磨きの少年」の発想で、あまりにも話題になり過ぎたタイミングは天井圏と捉えたりもする。
勝っている人の投資スタイル、書き込み銘柄と時価総額の関係も分析
次に、2について見ていくと、前回の記事で紹介したように、駄犬さんは「定性情報の数値化」をするのが得意だ。このやり方を生かした作業では、ネット上で話題の銘柄に対する期待度と、実際の時価総額や業績の規模との比較を自分なりの尺度で行う活用術がある。
例えば、
・今、どんな銘柄への書き込みが多く、注目度の高い銘柄やテーマは何なのか
・特定の銘柄に対して、投資家がどれくらいの規模の業績を見込んでいるのか
・その銘柄について書き込む人がどの程度いて、それが時価総額に比べて多すぎないか
――などを自分なりに読みこなす。過去の様子もあわせて考えて、加熱気味と思ったらウエートを下げる、ニューフェースの有望銘柄が登場したと思えば打診買いするなど投資判断に役立てる。
さらに、フォローしている投資家を、投資スタイル別に分類分けする作業も行う。特にブログでは、その人の年次や月次の運用成績を公開しているケースも多く、これら公表実績を分析している。
そこから「今、勝っているのはバリュー系か、グロース系か、それとも高配当系なのか」といった趨勢を見分けて、相場の特徴を感じ取っていくのだ。もちろん、数値だけでなく、「勝った」「負けた」の定性的なコメントからも読み取っていく。
官公庁、資源価格の情報もフル活用
企業や公的な組織が公表する、「正統派」ルートからの情報収集も多種多様だ。こちらもマニアックとも思える分野にまで目を向ける。
■駄犬さんの情報収集先と着眼点の例
観察対象 | 着観点、考え方 |
個人投資家の SNS、ブログ、掲示板 への書き込み | ・話題のテーマ、注目の銘柄 ・期待される業績と、実際の業績や時価総額 ・投資スタイルごとの趨勢(強いのはバリューかグロースかなど) ・うまい人の成績、投資手法、銘柄選択の着眼点 ・残念な人の投資行動、反省すべき点 ・過熱や悲観のレベル |
株式関連情報サイト | ・買われている業種、テーマ ・マーケットの特徴 |
市況関連サイト | ・材料価格の変動で恩恵を受ける銘柄、コスト増になる銘柄 |
官公庁などの各種データ | ・主力ビジネスに影響度が大きい統計など 例)求人件数や倍率の増減→求人情報サイト運営企業の業績 |
企業の公表資料 | ・主力商品の販売状況 例)コマツの建機需要動向→類似企業、関連企業の業績 |
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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