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【特集】「ゴールは目標決算、株価じゃない」で、ドン底から3億円選手の技-その2

すご腕投資家に聞く「銘柄選び」の技 駄犬さんの場合~第2回
登場する銘柄
シダックス<4837>、ベルトラ<7048>

文・イラスト/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

■駄犬さん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
フリーランスのITエンジニアを本業としつつ、2012年からそれまで手掛けたFX(外国為替証拠金取引)から移行し株式投資を開始。15年のチャイナショックでは、運用資金1000万円を溶かした上に追証発生で借金を抱えることに。一旦退場となるも、給料を原資に再挑戦へ。その後は、急激な資産回復劇を遂げ、現在は3億円プレーヤーとして資産拡大中。「業績は先読みできる」をモットーとし、短期決算プレーと中長期業績先読み投資を両輪に、応用技も加えて好成績を打ち出している。値動きが大きい中小型株がメイン。幅広い情報収集力が強みで、ブログや勉強会を通じて情報発信も熱心に行う。

第1回「株価より決算を読め! 借金のドン底から3億円選手に浮上した技-その1」を読む

追証発生で借金を抱えて退場というドン底を見ながらも、わずか数年で億トレまで到達した駄犬さん(ハンドルネーム)。その躍進には、2つのファンダメンタルズ主体の投資技の組み合わせがある。

1つは、前回に紹介した四半期決算日の前後で売買を完結する短期バージョン。もう1つが、今回紹介する中長期バージョンで、待ちの期間は2~3年ほどになる。

通期決算を複数またぐ間には、買い値の半分程度まで株価が凹んだケースもあった。損切りして、別の可能性を探した方が効率よく稼げるのではという考えもあるが、駄犬さんは含み損が大きく膨らもうが「待ち」を選ぶ。逆に、一定の含み益が乗っている状態になっても、定めたゴールに到達するまで待ち続ける。

駄犬さんは、どのような信念を持って「待つ」選択をしているのか。

実績のある再生ファンドの参画に注目

中長期バージョンでも、短期バージョンと同じく企業の開示資料を主な材料とし、「業績は、どのように作られていくか」を意識する。

中長期でも短期でも着目点は同じで、期待の決算に到達するのが目先に起きそうなら「短期」、もっと先になりそうなら「中長期」の戦略に振り分ける。

中長期バージョンで成功したケースの例に、給食や食堂運営受託を行う大手のシダックス<4837>がある。買い出動したのは19年5月半ば。以降、22年夏ごろまで保有を続け、株価は2倍に膨らんだ。

買い材料となったのが、19年5月17日に発表された優先株発行のリリースだ。内容は、再生ファンドのユニゾン・キャピタルと資本業務提携を結び、ユニゾン参画の下でシダックスが悪化した経営の立て直しを図るというものだ。

この日は、19年3月期の通期決算発表日でもあり、14年3月期から当期純損失が続く状態が嫌気され、株価は下落トレンドにあった。駄犬さんは、発表前日時点で300円水準にまで沈んだこの状況は、むしろ買いの狙い目と見て、行動に出ることにした。

■シダックスによるユニゾン参画のリリースの抜粋
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このニュースに注目したのは、ユニゾンが手掛けた案件は、企業価値の向上につながる「成功事例が多い」と、以前から注目していたことがある。代表的な例に回転寿司チェーンの「スシロー」を展開するあきんどスシロー<2781、上場廃止>(現在のFOOD & LIFE COM<3563>)があり、再生案件の中でもサービス業を得意としているとの印象を駄犬さんは持っていた。

スシローと同様、シダックスのケースでも2~3年すれば業績改善を達成できるとの見立てから、リリース公表後、一旦株価が噴いて落ち着いたタイミングで買いを入れる。

その後、株価は上下しながらも、22年の夏ごろには、600円水準近くまで上がっていく。投資金額の2倍近くに達したことで、駄犬さんは初回の利益確定に踏み切り、その後、数カ月のうちに全保有分を手仕舞った。

■『株探』で確認できるシダックスの週足チャートと決算日(18年9月~)
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注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同


ロジック完結までを見届ける

こう紹介すると順調にリターンをゲットしたかのように感じるが、実は株価が2倍に到達するまでに、一時は買い出動した時点より100円ほど落ちた200円割れ寸前にまで下落した場面があった。それでも手放さなかったのは、痛いことに目を逸らす行動経済学で言う「損失回避」行動の罠にハマったからではない。

まず、保有するにあたり、シダックスが業績を立て直すには、一定の時間がかかることは覚悟していた。加えて、保有の途上でコロナ禍という想定外のマイナス材料も出てきて、業績の回復が後ずれしてもおかしくない事態となったことも認識していた。

とはいえ、さすがに30%以上ものドローダウンとなれば、心が折れ手放してしまってもおかしくはない。そうした中、ガマンを貫けたのはなぜなのか。

それは、「冬を乗り越えて春になったら、蒔いた種は芽となり、そして必ず花を咲かせる」という、将来の姿を頭に描いていたことがある。途中で見切ってしまったら楽しみにしている光景を見損なうことになる。投資に即した表現にし直せば、初回の記事でも触れたように「株価ではなく、業績の回復が自分の想定通りに進んでいるのか」に目を向けていたことがある。

駄犬さんは、「この時の決算発表では、こんなことが起きるだろう」と考え、その想定と結果に関心を向けている。想定と乖離(かいり)していたら、自分の想定が間違っていたのか、それとも違う要因によるものかを考えながら、あくまでもファンダメンタルズの動きに注意を払うことに集中していた。駄犬流の手仕舞いする基準は、株価ではなくファンダメンタルズが自分の到達点に達した時になる。

想定業績への到達時点の株価は、ファンダの改善に伴い購入時点より上がるのが通常だ。が、なんらかの理由で株価が下がっていることもあり得る。たとえ、そうなっても、潔く手仕舞うのが駄犬流だ

株価より業績優先のスタイルは、「株価の動きに抗ってホールドを続けるので、含み損がかなり膨らむときはあります」と駄犬さんは言う。その苦痛に負けないでいられるのは、ポートフォリオ全体では30~40銘柄程度に分散していることで、1銘柄あたりのリスクが全体に与える影響を限定的にしていることもある。

ローンの約束事を利確の目安に

シダックスでのトレードが大団円を迎えられたのは、成功のトラックレコードを持つユニゾンが入ったことを見逃さなかったことが大きいが、もちろんそれだけではない。

駄犬さんは、資本業務提携の締結後に出された開示情報も丹念に目を通し、再生の進捗具合を見定めるための参考資料も見つけ出した。こうしたベンチマークがあったのも、ホールドを続けることができた要因だ。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



 

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