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4092 日本化学工業

東証P
2,436円
前日比
+41
+1.71%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
8.3 0.47 3.78 39.24
時価総額 217億円
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戸田工業 Research Memo(3):2023年に創業200周年を迎える老舗の化学素材メーカー(2)


■戸田工業<4100>の会社概要

2. 事業内容
同社グループは現在、機能性顔料事業(各種着色材料、環境関連材料)と電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、LIB用材料等)の2事業で事業展開している。

事業展開を最終用途別で示すと、5つの事業フィールドとなる。環境、複写機/プリンター、塗料フィールドが機能性顔料事業領域、家電・通信機器、自動車フィールドが電子素材事業に属する。2021年度では自動車フィールドが最大部門となっており、全体の38.0%を占め、次いで家電・通信機器フィールドが24.1%となっているが、近年、LIB用材料の拡大で自動車フィールドの構成比が高まっている。

(1) 電子素材事業
主に自動車、通信・家電市場を事業フィールドとして製品展開。主な製品として磁石材料(フェライト、希土類)、誘電体材料(チタン酸バリウム)、LIB用材料を「戦略3事業」として位置づけている。全体として電池材料、磁石材料などは金属・レアメタル市況また為替変動による影響で、見かけの売上が大きく変動し、利益面でも在庫、売価の価格連動の追従性や稼働率で大きく変動することがある。

製品別では磁石材料が98億円(構成比28%)と同部門で最大売上となっている。その中心はボンド磁石用のフェライト・希土類磁性コンパウンド材料(磁性粉末と樹脂を複合化したもの)。ボンド磁石は高分子樹脂やゴムなどのバインダーにフェライト磁石や希土類磁石の微粒粉末を高充填した磁性コンパウンドから製造される。磁力面で焼結磁石に劣るも、複雑形状加工成形、金属との一体成形、薄型化や長尺広幅化が可能などの利点がある。ボンド磁石の中で、同社の素材は万遍なく利用されているが、複写機・プリンター用のマグネットロール用途の他、エアコン・空気清浄機向けや自動車向けなどに需要が拡大するなど、利用分野の広がりもある。また2021年8月に射出成形ボンド磁石等を製造・販売する江門協立磁業高科技有限公司の持分を取得、現在は加工事業を含めた事業展開となっている。

この数年で大きく伸びてきたのがハイニッケルを中心とする車載用LIB用材料で8,300百万円(構成比24%)を占める。同社は2000年頃までに磁気テープに代表される磁性酸化鉄市場の急激な市場縮小に対し、既存事業の技術を生かしLIB用正極材料の研究に着手、2000年に四酸化三コバルト(Co3O4)を出発原料としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始した。2002年に富士化学(株)よりニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAlO2)事業を引き継ぎ、2007年にカナダでH.C.Starck GmbHよりNi(OH)2/CoOx事業を継承し戸田アドバンストマテリアルズInc.を設立(連結対象)、2008年にはスピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の事業化、同時にArgonne National Labとリチウムリッチのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li-Rich NCM)のライセンスを取得し、LIB用正極材料3成分系の事業化を迅速に行った。また米国ミシガン州に工場建設を始め、2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJVを立ち上げた。さらに2015年には欧州化学大手BASFと日本を拠点にLIB用正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(合)(以下、BTBM)を立ち上げ、NCA、NCMなど様々な正極の研究開発、製造、販売を行うこととし、2017年にはハイニッケル系正極材料生産設備を大幅増強した。LIB用材料事業は、BASFとの合弁会社であるBTBM(BASFジャパン66%、同社34%出資、持分法適用会社)により運営、BTBMの2021年12月期の売上高は16,896百万円(前期比15.4%増)であった。なお、2022年7月20日に、ハイニッケル正極材料の生産能力を年間45GWhのバッテリーセル製造に必要な生産量を確保するために、2025年までに生産能力を6万トンに引き上げることを発表している(同事業はサプライチェーン対策のための国内投資促進事業の2次事業として採択されている)。LIB用材料事業は小型LIBについて、日本メーカーのシェアダウン、また車載対応では多額の先行投資、減損処理、投資損失、市況の乱高下などから、従来マイナスとして重しとなっていたが、世界的なEVの拡大などで売上が拡大、損益分岐点を超え利益寄与が本格的に高まる方向にある。

また、売上高はまだ小さいが、着実に伸ばしつつあるのがMLCC向け誘電体材料事業である。コンデンサは抵抗やコイルとともに、電子回路の基本である3大受動部品の1つとなっている。ほとんどの電子機器に使用され、能動部品(供給された電気エネルギーを増幅、変換、整流等が可能)を正しく作動させるために必要不可欠な部品だ。この中でセラミックコンデンサはコンデンサ全体生産額の8割近くを占める。コンデンサの機能は電荷(電気)をため、直流電流は通さず交流電流は通す機能を持ち、電子回路の中で電荷(電気)の充放電、電圧を一定に保つ、ノイズ除去の役割を果たす。現在、スマートフォン、自動車、家電など、あらゆる電子機器で利用され、2021年度は7,700億円の生産額を誇る。セラミックコンデンサの主原料はチタン酸バリウムで、産業化で先陣を切ったのが村田製作所<6981>。生産にあたってはチタン酸バリウムの合成、微細粉粒化、シート塗布、電極形成、チップパッケージの一連の工程があり、太陽誘電<6976>、TDK<6762>など日系企業が続いて基幹事業化に成功、サムスンが2000年代に入って本格参入するまでは日本の独断場製品であった。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設したことを機に、同分野へ本格参入したが、同社の特徴は、その製造方法にある。チタン酸バリウムは従来、固相反応法といわれる原料を焼成する製法が主流で、村田製作所なども大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業<4092>、富士チタン工業(株)などは湿式反応と焼成を組み合わせた製法であるシュウ酸塩法を利用し、固相法に対して細かい粒度が得られることが特徴である。これらに対し同社は同社の持つ湿式合成技術を利用し、原料を高温・高圧下で反応させ、100nm未満の微細な粒子の粒度を均一に制御できる水熱合成法を利用している。現在、セラミックコンデンサでは、小型化、大容量化、高誘電率を求められており、既に0603サイズが1005サイズを抜いて最大比率となり、さらに0402サイズの比率も高まり、0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などの特定用途での利用が始まっている。このため、超微粒子チタン酸バリウムの需要が急速に高まっていくと見られる。

(2) 機能性顔料事業
機能性顔料事業は、主に塗料、複写機/プリンター、環境市場を事業フィールドとして製品展開を行っている。これまで塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に拡大してきた事業だ。顔料は、創業以来の事業であるが、塗料市場ではコロナ禍で建築物や構造物の建設中止・延期など需要が低迷、複写機・プリンター市場においては、ペーパーレス化、電子化などの影響で需要が減少していた。但し同社はシェア拡大、化粧品顔料、透明酸化鉄など新製品群の拡大、また環境市場向けの土壌・地下水浄化材などで補い、売上を確保、利益面では複写機・プリンター向けの構成比が下がったことから利益率の低下を余儀なくされてきたとみられるが、コロナ禍による影響から回復、収益が回復している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

《YI》

 提供:フィスコ

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