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【特集】輝き放つ「ペロブスカイト太陽電池」関連、飛躍期突入の銘柄群総ざらい <株探トップ特集>

「ペロブスカイト太陽電池」の量産化に、日の丸太陽電池の命運がかかっている。素材から製品まで純国産が可能であるだけに、大きな市場がそこには広がっている。

―ヨウ素大国ニッポン“純国産”で巻き返しへ、官民挙げて量産化に向け急ピッチ―

 「ペロブスカイト太陽電池」に熱い視線が集まっている。カーボンニュートラル実現に向けた動きが加速しており、 太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が急拡大。こうしたなか、ペロブスカイト太陽電池は“次世代の太陽電池 ”として期待が高まっている。シリコン系に関しては中国製品が市場を席巻している状況だが、ペロブスカイト太陽電池はシリコン系に対抗できるゲームチェンジャーともなり得る存在なだけに、官民挙げて量産化に向けた動きが急ピッチで進んでいる。

●薄く軽くフレキシブル

 ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を用い、「薄く軽くフレキシブル」という特性を持つ。現在主流となっているシリコン系太陽電池に比べ、用途が格段に広く利便性が高いため、関連企業は商機を捉えるべく注力姿勢を強めている。

 「現在、シリコン製の太陽電池が主流になっているが、中国製が大半だ。米国では、新疆ウイグル自治区での人権問題(強制労働での制裁)に絡み中国からの太陽光発電製品の輸入が規制されている。シリコンのパネルというのは生産時に多量の電力を消費するが、ペロブスカイトは低温で焼成するため電力の消費量も少ない。加えて、原材料も調達しやすく、本来の意味で非常に環境にやさしい製品」と、話すのは同電池の開発を手掛ける業界大手関係者。また、別の関係者は「日本はペロブスカイト太陽電池の量産化で、巻き返すチャンス」とも言う。

●積水化は東京都と強力タッグ

 行政の後押しも強い追い風となる。東京都は、昨年12月に積水化学工業 <4204> [東証P]とフィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同研究を行うことを公表した。2025年の事業化を目指すが、積水化は既に発電効率15.0%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功している。同社の発表によると、シリコン系太陽電池は重量などによる設置場所の制限が課題となっているとし、「フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟という特長を持ち、ビルの壁面や耐荷重の小さい屋根、あるいは曲面といった、さまざまな場所に設置が可能」だという。また昨年8月、同社はJR西日本 <9021> [東証P]が開業を目指す「うめきた(大阪)駅」にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を提供、設置することが決定したと発表。同社として初めての一般共用施設への設置となる。

 前出の業界大手関係者も「ペロブスカイトは、なんといってもまずは軽いことが大きな利点で、屋根など設置場所での補強工事が不要だ。シリコン製の場合、例えば工場の屋根に設置しようとすると耐荷重の補強工事が必要になる場合もある。窓ガラスにさえ取り付けることも可能だ」と、その使い勝手の良さを強調する。

 また、政府も昨年12月に、GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針(案)をとりまとめ、今後10年間のロードマップを提示した。このなか、ペロブスカイト太陽電池についても取り上げ「太陽光発電の更なる導入拡大や技術自給率の向上にも資する次世代型太陽電池(ペロブスカイト)の早期の社会実装に向けて研究開発・導入支援やユーザーと連携した実証を加速化するとともに、需要創出や量産体制の構築を推進する」と明示した。国や都などからペロブスカイト太陽電池推進に向けて政策の大号令が発出されるなか、投資家の視線も更に熱を帯びることになりそうだ。今回の特集では、ペロブスカイト太陽電池で飛躍が期待される銘柄をピックアップした。

●ホシデン、量産化に向け加速

 情報通信部品大手のホシデン <6804> [東証P]は21年4月にペロブスカイト太陽電池事業への参入を発表。昨年3月には実用化の動きを加速させるため、同電池の開発を行う京都大学発のスタートアップ「エネコートテクノロジーズ」に出資しており、量産化に向けまい進している。会社側では「中・長期的には大きなマーケットに成長する」と期待しており、「23年度で量産準備を進めサンプル展開、24年度から本格的な量産開始を予定している」と話す。10日には決算発表を控えるが、株価は昨年11月に1814円まで買われ高値をつけたあとは調整局面入り。現在は1500円台中盤でもみ合っている。

●フジプレアム、ニチコン、サムコにも注目

 液晶パネル光学フィルターなどの製造・販売を手掛けるフジプレアム <4237> [東証S]だが、京都大の「フィルム太陽電池研究コンソーシアム」に参画している。ペロブスカイト太陽電池の実用化のために同社独自の技術を提供しており、注目度も高い。9日に決算発表を予定しているが、11月に発表した23年3月期第2四半期累計(22年4-9月)の連結営業利益は前年同期比2.5倍の5億6000万円となり、通期計画の7億3500万円に対する進捗率は76%に達している。株価は、昨年12月中旬から強調展開をみせ1月26日に472円まで買われ高値をつけたものの、その後は上昇一服となっている。

 ちなみに同コンソーシアムには、フジプレアムの他にAGC <5201> [東証P]、サカタインクス <4633> [東証P]、堀場製作所 <6856> [東証P]、ニチコン <6996> [東証P]、星光PMC <4963> [東証P]をはじめ数多くの企業も名を連ねており、これらの動向にも目を配っておきたいところだ。そのなかニチコンは、21年6月に前述のエネコートテクノロジーズ、リコー電子デバイス(現・日清紡マイクロデバイス、東京都中央区)と世界初のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を活用したメンテナンスフリーの「電子棚札システム」を開発したと発表しており、同分野での展開にも期待が掛かる。

 サムコ <6387> [東証P]は半導体など電子部品製造装置の製造販売などを手掛けるが、21年5月には京都大にペロブスカイト太陽電池向けALD装置を納入したと発表。以来、関連株の一角として注目を集める存在となった。納入した同装置は、容積を小さくしガス消費を抑えた効率的な反応室構造を採用。また、オープンロード(反応室開閉)式の装置にグローブボックスを装備しており、大気にさらすことなく試料の出し入れが可能だという。

●ヨウ素でカギ握るK&Oエナジ、伊勢化

 ペロブスカイト太陽電池の量産化を推進するうえで、重要なポイントとして挙げられるのが、主原料となるヨウ素は世界産出量の約30%が国内産であるという点だ。まさに日本は“ヨウ素大国”ともいえるわけだが、これにより海外からの輸入に頼らず安定供給が期待される純国産の太陽電池が製造できるという大きな利点を持っている。

 K&Oエナジーグループ <1663> [東証P]は昨年1月、連結子会社内のヨウ素事業を統合し、ヨウ素及びヨウ素化合物の製造・販売を行うK&Oヨウ素(旧・日本天然ガス、千葉県白子町)として新たにスタートさせた。K&Oヨウ素には豊田通商 <8015> [東証P]も出資しており、ヨウ素の年間生産量約1600トン(世界のヨウ素シェアの約5%)となる世界有数のサプライヤーとして、新たなブランド価値を創造する方針だ。世界のヨウ素メジャーを目指す同社だが、ペロブスカイト太陽電池の量産化が進むと予想されるなかで、飛躍への期待が一層高まりそうだ。株価は、2000円手前で上値の重い展開が続くが注目は怠れない。

 ヨウ素生産大手の伊勢化学工業 <4107> [東証S]は、株式市場でも注目度が高く折に触れ投資家の視線が向かう。株式流動性に乏しいものの、“ペロブスカイト”という強力材料を内包するだけに目が離せない存在だ。同社は前週末3日の取引終了後、23年12月期業績予想を発表。堅調なヨウ素の国際市況を背景に、売上高は前期比13.4%増の290億円、営業利益は同19.8%増の45億円と、2期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。これを受け、きょうの株価は大幅反発となっている。

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