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3661 エムアップ

東証P
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エムアップ Research Memo(7):課金会員数増加やEC事業の拡大、電子チケット事業の成長等により大幅増収増益


■決算動向

2. 2023年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2023年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比23.0%増の7,764百万円、営業利益が同53.0%増の1,187百万円、経常利益が同43.3%増の1,200百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同23.8%増の639百万円と、コロナ禍からの一定の回復とともに大幅な増収増益を実現した。また、通期計画(特に利益面)に対しても順調に進捗している。

「コンテンツ事業」のうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」は、コロナ禍により減少していた課金会員数が増加に転じたことで増収を確保したほか、「EC事業」についても、ライブやコンサートの再開と歩調を合わせた取り組みや、ECポータルでのプレイガイドとの連携により好調に推移した。また、「電子チケット事業」については、有観客でのライブ、イベントが増加していくなかで、電子チケットの強み(感染予防対策など)を生かした取扱枚数の伸びに加え、周辺サービス(オンラインくじ等)を付加した顧客単価の向上により順調に拡大した。

利益面でも、引き続き電子チケットや新規事業等(VRやNFTを含む)への先行費用が発生したものの、収益性の高い電子チケット※の伸びなどにより大幅な増益を実現し、営業利益率も15.3%(前年同期は12.3%)に大きく改善した。

※「電子チケット事業」は手数料ビジネスとなるため、チケット1枚当たりの売上規模は小さいものの、粗利益率は極めて高くなるところに特徴がある。


財政状態については、資産合計が前期末比0.8%増の14,296百万円とほぼ横ばいで推移した一方、自己資本については内部留保の積み増しにより同10.9%増の5,653百万円に拡大したことから、自己資本比率は39.5%(前期末は35.9%)に改善した。また、有利子負債はゼロの状態が続いているうえ、流動比率も121.3%を確保していることから、財務の安全性に懸念はない。

主なセグメント別の業績は以下のとおりである。

(1) コンテンツ事業
売上高は前年同期比22.9%増の6,431百万円、セグメント利益は同34.1%増の1,172百万円と増収増益となった。そのうち、主力の「ファンクラブ・ファンサイト事業等」については、コロナ禍により減少していた課金会員数が増加に転じたことで同19.2%増の5,756百万円に伸長した。2022年9月末の課金会員数は、新規案件の獲得等により前期末比約7%増に拡大し過去最大となった。また、「EC事業」についても、再開の進むライブやコンサートと歩調を合わせ商品の取扱高を増加させたことや、ECポータルでのプレイガイドとの連携を進めたことにより同67.3%増の674百万円と大きく拡大した。利益面でも、新規事業等への先行費用を継続しながらも、増収による収益の押し上げにより大幅な増益を実現した。特に収益性の高い「EC事業」の伸びによりセグメント利益率も18.2%(前年同期は16.7%)に改善している。

活動面に目を向けると、「ファンクラブ・ファンサイト事業等」では新規約10サイトを開設したほか、「FanplaKit」※1による新たなアーティストの獲得も順調に拡大してきた。また、ファンクラブのアプリ化(アーティストアプリの展開)に加え、生配信視聴アプリ「FanStream」※2やVRでのライブ配信もコロナ禍をきっかけに好評を博している。特に、アーティストアプリ内でのECサイト連携や「FanStream」の配信など、様々な機能の集約により、利便性やファンコミュニケーションの強化を図っている。また、「EC事業」についても、新規ストアの立ち上げに取り組んだほか、事前販売・会場受取や会員限定販売などファンニーズに寄り添ったサービスを展開し、ツアーグッズ・配信ライブグッズなどを幅広く販売した。

※1 アーティストの規模にかかわらず、初期・導入費用不要でファンクラブの立ち上げができ、会員管理はもちろんファンクラブ運営に必要な機能がパッケージされているSaaS型プラットフォーム。2022年9月末時点で新人アーティストを中心に306組(前年同期比112.5%増)が登録している。
※2 生配信を観ながらコメントやギフティング(投げ銭)によってアーティストの応援ができる機能を搭載した視聴専用アプリ。


(2) 電子チケット事業
売上高は前年同期比28.9%増の1,325百万円、セグメント利益は同111.5%増の338百万円と大きく拡大した。引き続きコロナ禍の影響(動員制限等)を一部受けているものの、有観客でのライブ、イベントが増加していくなかで、電子チケットの強み(感染症対策等※1)を生かしたシェア拡大により、電子チケット取扱枚数、チケットトレード成立枚数ともに大きく拡大した。電子チケット取扱枚数は238万枚(前年同期は113万枚)に倍増し、通期目標の344万枚に向けて順調に伸びてきた。また、チケットトレード成立枚数についても、大手プレイガイドとの連携による成果もあり12.6万枚(前年同期は約6万枚)に倍増しており、今後もさらに拡大する勢いである。電子チケットに付随した周辺サービス(「メモコレ」「メモコレくじ」等)※2も順調に伸び、チケット1枚当たりの単価向上にも寄与している。また、電子チケットに加え、オンライン配信事業等※3も堅調に推移したほか、プロ野球等のカードコレクションアプリについても、球団間のコラボ企画や球場との連携などにより着実に伸ばすことができた。利益面でも、大幅な増収により「のれん」の償却や先行費用(「チケットぴあ」とのシステム連携を含む)をカバーするとともに、セグメント利益率も25.5%(前年同期は15.6%)と大きく改善した。

※1 非接触の促進につながるとともに、スマートフォン顔認証・体温感知の導入も図っている。
※2 「メモコレ」とは、ライブの思い出をスマートフォンでずっと楽しめるデジタルコンテンツパック(メンバーからのウエルカムメッセージ、公演当日のスペシャルフォト、終演直後に収録したメンバーからのメッセージ、メンバー直筆サイン入りグッズが当たるくじなどが含まれる)のことである。また、「メモコレくじ」は、「メモコレ」内で提供している、豪華賞品が当たるハズレなしのオンラインくじを切り出したサービスである。
※3 ライブの生配信やオンライン配信の視聴パスを販売するプラットフォーム「StreamPass」や「MeetPass」(1対1オンライントーク)など。


3. 2023年3月期上期の総括
以上から、2023年3月期上期を総括すると、コロナ禍からの一定の回復とともに大幅な増収増益を確保し、通期計画に対しても順調に進捗していることから、総じて好調に推移したと評価することができる。特に、コロナ禍の影響が徐々に解消されてきたことに加え、コロナ禍に伴う環境変化やDX化の動きを新たなサービス(価値)の創出に結び付けてきたことが業績の伸びにつながっているところは、今後に向けてもプラスの材料と言えるだろう。業界環境に目を向けると、ライブやコンサートの公演回数がコロナ禍前の約80%にまで回復した一方、動員数に至っては収容人数制限による影響が残り約45%にとどまっていることから、依然として回復の余地は大きい。したがって、このような環境下でも増収増益を継続してきたところは、改めて同社の事業モデルの強さや各取り組みの妥当性を実証するものとして評価したい。また活動面についても、後述のとおり、ポテンシャルの大きなNFTマーケットプレイスの提供開始や、「チケットぴあ」とのシステム連携(電子チケット)など、今後の事業拡大に向けて注目すべき成果を残すことができた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《NS》

 提供:フィスコ

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