エコモット Research Memo(2):IoT×AIを活用し社会課題を解決するIoTリーディングカンパニーを目指す
■会社概要
1. 会社概要
エコモット<3987>は創業以来、一貫してIoTインテグレーション専業プロバイダーとしてソリューションを提供している。IoTという言葉が広まる以前から、Iot×AIを活用することで社会の課題を解決するリーディングカンパニーを目指している。「未来の常識を創る」をミッションに、IoTを通じてより安心な社会の実現に貢献するため、「あなたの『見える』を、みんなの安心に。」というコーポレートスローガンを掲げている。
2. 沿革
同社は、2007年2月、現 代表取締役の入澤拓也(いりさわたくや)氏により設立された。北海道札幌市に本社を置く同社が創業時に手掛けたビジネスは、融雪装置遠隔制御代行サービスであった。2年目に「融雪装置遠隔制御システム」を開発し、特許を取得した。その後、遠隔でのカメラ監視によるモニタリングソリューションとして、融雪システム遠隔監視ソリューションを「ゆりもっと」の名称でパッケージ化した。なお、「ゆりもっと」は、降雪地域のなかでも特に気温が低くロードヒーティングが普及したエリアに限定されるため、札幌本社と2009年に開設した青森営業所が対応している。
2009年に建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」をリリースするなど、幅広い地域をターゲットにできるサービスを拡充したことにより、現在は北海道から九州までをカバーする全国9ヶ所に営業所を展開している。具体的には、北から本社・札幌営業所(札幌市中央区)、青森営業所(青森県青森市)、仙台営業所(宮城県仙台市)、北信越営業所(新潟県新潟市)、東京営業所(東京都千代田区)、東海営業所(愛知県名古屋市)、関西営業所(大阪府吹田市)、中四国営業所(広島県広島市)、九州営業所(福岡県久留米市)となる。
2014年にはデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」の提供を開始、2016年からはKDDI向けにカスタマイズして「KDDI IoTクラウド Standard」として提供されている。2016年3月には交通事故削減ソリューション「Pdrive」のOEM提供を開始した。
2019年1月にはKDDIと資本業務提携を行った。これにより、KDDIは同社株式の20.53%(2022年2月末現在)を所有する第2位の株主となった。法人向けIoTビジネスの拡大を目的としており、同社の「つなぐ力」と、KDDIの持つ通信、プラットフォーム、アプリケーションの強みを生かし、新たな業種業界に特化した新規パッケージの共同開発及び共同販売に取り組んでいる。また、2019年8月には、経済性に強みを持つ暖房設備機器の製造、販売、メンテナンス事業を行うストークを子会社化した。
2019年10月には、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格認証「JIS Q 27001:2014」を取得した。IoTインテグレータとして大量のデータを取り扱うことから、セキュリティ対策を継続し、常に安全なサービスを提供し続けられるよう業務運営体制を強化しており、大手協業先との共同開発や共同販売の拡大につながっている。
株式関係では、2017年6月に札幌証券取引所アンビシャス市場に株式を公開、2018年6月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。2022年4月の同新市場区分見直しに伴い、グロース市場へ移行している。
3. M&A戦略とグループ企業
同社は成長戦略として、1) 垂直統合領域の「拡大」、2) 既存ソリューション領域の「深化」、3) 事業領域の「拡大」を掲げている。このうち、3) 事業領域の「拡大」については、シナジー効果を有する企業への出資やM&Aは不可欠であると考えており、これまでも資本業務提携、合弁会社設立、事業譲受、企業買収を行ってきた。資本業務提携の代表例となるKDDIとの提携は、インテグレーションソリューションの持続的な拡大に貢献している。また、2021年7月には、電気自動車の充電スタンド(以下、EVスタンド)の販売・導入・運用管理を行うユアスタンドと資本業務提携した。「ゆりもっと」顧客への付加価値提案としてEVスタンドの販売を推進し、顧客満足度の向上を図るとともに、ユアスタンドへデバイスを提供することでシナジー創出を図る。
2022年8月期末時点の連結子会社はストーク及び(株)フィットで、いずれも企業買収により子会社化した。このうちフィットは、電気・電子回路設計(E)、機械設計(M)、ソフトウェア開発設計(S)を主な事業領域とする。直近では、生体認証を活用したセキュリティ機器の販売・設置事業を開始している。電気・電子回路設計部門のなかでも画像及び通信(5G)分野を注力領域に掲げており、グループシナジーを見込んでいる。
4. 各種表彰
同社は、IoT/M2M※技術で各種表彰されている。一例を挙げると、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が開催する「MCPC award」において、過去3回受賞している。「MCPC award」は、モバイルシステムの導入により、IoT/M2M分野での「業務効率化」「業績向上」「顧客満足度向上」「社会貢献の推進」「先進的なモバイル活用」等の成果を上げた事例を顕彰し、モバイルソリューション、IoT/M2Mシステムのさらなる普及促進を図るものである。2015年12月には、データコレクトプラットフォーム「FASTIO」がプロバイダー部門のグランプリ及び優秀賞を受賞した。
※M2M:Machine to Machine(マシーン・ツー・マシーン)の略で、機器同士が人間の介在なしにコミュニケーションをし、動作するシステムのこと。
2008年3月には、業界初のエコロードヒーティング遠隔操作システム「ゆりもっと」がモバイル中小企業賞、2011年4月には建設現場の見える化システム「現場ロイド」が特別賞、2019年11月には飲食店向け自動応対サービス「AITELL」がサービス&ソリューション部門奨励賞を受賞している。直近では、2022年1月に、札幌商工会議所より令和3年SDGs経営表彰「気候変動アクション部門」を受賞した。「ゆりもっと」でロードヒーティングをIoT技術で24時間遠隔監視することで、年間9億円の燃料コストと25,000トンのCO2削減に貢献したことが評価された。また、同年4月には、「札幌DX推進方針」を打ち出している札幌市より、同社代表取締役の入澤氏がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のアドバイザーとして、北海道大学の山本強名誉教授とともにCDO(最高デジタル責任者)補佐官に任命された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
《NS》
提供:フィスコ