明日の株式相場に向けて=「踏み上げ相場の扉」開く
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比344円高の2万7872円と大幅続伸した。今月1~2日に行われたFOMC前後に米国株市場は大きくバランスを崩したが、NYダウは75日移動平均線に接触することなく切り返しに転じた。しかも2営業日で800ドル強の上昇は、売り方の立場としては大いに焦りを感じる戻り足だ。
そして今週は米中間選挙と10月の米CPI発表がビッグイベントとして立ちはだかる。まず中間選挙は日本時間今晩から投票が行われるが、レームダック状態のバイデン米政権が中間選挙で勝利するシナリオは素人目にも考えづらく、下院は共和党が過半数を奪回する公算が大きいとみられている。ところが上院は接戦との見方が強い。場合によっては民主党が多数党の座を確保する可能性があるというから、政治の世界は面妖である。しかし、この中間選挙については下院を共和党が押さえてしまえば、上院の勝利者がどちらになってもバイデン政権の運営がやりづらくなるということに変わりはない。民主党が制すれば“ねじれ議会”となる。また、共和党が制して上下両院で多数党となってもバイデン民主党政権とは、ねじれの関係が生じる。この場合、株式市場はバイデン政権の打ち出す政策が通りにくくなることを“好感”するという論調が大手を振っている。バイデン政権が今後打ち出す政策は、その内容を見る以前に株式市場にはネガティブという位置づけであり、レッドウェーブでそれを防御できるから“株高”という摩訶不思議な論法である。
では、10日に発表予定の米CPIはどうか。前日の当欄でも触れたがコア指数で前年比6.5%上昇がコンセンサスで、9月からは若干減速する見通しだ。しかし、市場関係者に聞くと「今回のCPIはともかく、11月以降は伸び率が急速に鈍化するという見方がにわかに強まっている」(ネット証券アナリスト)という。この背景にあるのは、まず海運の運賃市況が急速に冷え込んでいることに加え、原油などのエネルギー価格もひと頃から見れば大きく水準を切り下げたこと。加えて、米国では足もとクリスマス商戦がサッパリの状態にあり、「早晩、在庫処分セールが始まる」(同)との見立てだ。こうした事情から、来年年明けにはCPIの伸び率は大幅沈静化に向かうという。これはいうまでもなく、FRBによる金融引き締めの終着点を想起させるもので、株式市場にはプラス材料となる。
中間選挙と言い、CPIと言い、ここまで劇的な「いいとこ取り」の論調が幅を利かせているのには違和感も禁じ得ないが、その答えは株式需給にある。「水面下では大量に積み上がったショートポジションを踏み上げに誘導しようという力が働いている。日米ともに先物主導の上昇相場はその証左だ」(国内投資顧問ストラテジスト)とする。来年の逆業績相場を先取りし過ぎた売り方を、いったん全面撤退に追い込む流れともいえる。おそらくこの潮流を起こしている大きな資金の存在を、機関投資家に近い筋は感じているのだろう。
東京市場で「踏み上げ相場」の象徴となっているのがソフトバンクグループ<9984>とレーザーテック<6920>の2銘柄だ。ソフトバンクGは売り残急増で直近信用倍率が1.01倍、日証金では貸借倍率0.11倍で逆日歩がつく状況にある。株価は陽線連打で7000円台目前まで駆け上がった。先物絡みの裁定買いを考慮しても尋常ではない上げ足だ。
一方、レーザーテック<6920>も鮮烈な上昇波動を描いている。売買代金は常に首位候補できょうも2600億円以上をこなしソフトバンクGを凌ぎトップとなった。この売買代金で7.7%の株価上昇は刮目に値する。同社株は10月3日を底値にV字リターンをみせているが、上げ幅だけでなく、ソフトバンクGに負けない陽線の多さに目を奪われる。信用倍率は0.91倍、日証金では貸借倍率0.02倍で、やはり逆日歩がついた状態だ。両銘柄が直近1カ月で築き上げたチャートは決算内容や株価指標、あるいは成長性といったファンダメンタルズのアプローチからは決して答えが出てこない。需給のなせる業である。
あすのスケジュールでは、10月の景気ウォッチャー調査、6カ月物国庫短期証券の入札、30年物国債の入札など。海外では10月の中国消費者物価指数(CPI)、10月の中国卸売物価指数(PPI)、ポーランド中銀の政策金利発表、9月の米卸売在庫・売上高、米10年債の入札など。なお、ウィリアムズ・NY連銀総裁が講演を行う予定。また、国内主要企業の決算発表では、キリンホールディングス<2503>、住友大阪セメント<5232>、日産自動車<7201>、いすゞ自動車<7202>、三井不動産<8801>などが予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年11月08日 18時20分
そして今週は米中間選挙と10月の米CPI発表がビッグイベントとして立ちはだかる。まず中間選挙は日本時間今晩から投票が行われるが、レームダック状態のバイデン米政権が中間選挙で勝利するシナリオは素人目にも考えづらく、下院は共和党が過半数を奪回する公算が大きいとみられている。ところが上院は接戦との見方が強い。場合によっては民主党が多数党の座を確保する可能性があるというから、政治の世界は面妖である。しかし、この中間選挙については下院を共和党が押さえてしまえば、上院の勝利者がどちらになってもバイデン政権の運営がやりづらくなるということに変わりはない。民主党が制すれば“ねじれ議会”となる。また、共和党が制して上下両院で多数党となってもバイデン民主党政権とは、ねじれの関係が生じる。この場合、株式市場はバイデン政権の打ち出す政策が通りにくくなることを“好感”するという論調が大手を振っている。バイデン政権が今後打ち出す政策は、その内容を見る以前に株式市場にはネガティブという位置づけであり、レッドウェーブでそれを防御できるから“株高”という摩訶不思議な論法である。
では、10日に発表予定の米CPIはどうか。前日の当欄でも触れたがコア指数で前年比6.5%上昇がコンセンサスで、9月からは若干減速する見通しだ。しかし、市場関係者に聞くと「今回のCPIはともかく、11月以降は伸び率が急速に鈍化するという見方がにわかに強まっている」(ネット証券アナリスト)という。この背景にあるのは、まず海運の運賃市況が急速に冷え込んでいることに加え、原油などのエネルギー価格もひと頃から見れば大きく水準を切り下げたこと。加えて、米国では足もとクリスマス商戦がサッパリの状態にあり、「早晩、在庫処分セールが始まる」(同)との見立てだ。こうした事情から、来年年明けにはCPIの伸び率は大幅沈静化に向かうという。これはいうまでもなく、FRBによる金融引き締めの終着点を想起させるもので、株式市場にはプラス材料となる。
中間選挙と言い、CPIと言い、ここまで劇的な「いいとこ取り」の論調が幅を利かせているのには違和感も禁じ得ないが、その答えは株式需給にある。「水面下では大量に積み上がったショートポジションを踏み上げに誘導しようという力が働いている。日米ともに先物主導の上昇相場はその証左だ」(国内投資顧問ストラテジスト)とする。来年の逆業績相場を先取りし過ぎた売り方を、いったん全面撤退に追い込む流れともいえる。おそらくこの潮流を起こしている大きな資金の存在を、機関投資家に近い筋は感じているのだろう。
東京市場で「踏み上げ相場」の象徴となっているのがソフトバンクグループ<9984>とレーザーテック<6920>の2銘柄だ。ソフトバンクGは売り残急増で直近信用倍率が1.01倍、日証金では貸借倍率0.11倍で逆日歩がつく状況にある。株価は陽線連打で7000円台目前まで駆け上がった。先物絡みの裁定買いを考慮しても尋常ではない上げ足だ。
一方、レーザーテック<6920>も鮮烈な上昇波動を描いている。売買代金は常に首位候補できょうも2600億円以上をこなしソフトバンクGを凌ぎトップとなった。この売買代金で7.7%の株価上昇は刮目に値する。同社株は10月3日を底値にV字リターンをみせているが、上げ幅だけでなく、ソフトバンクGに負けない陽線の多さに目を奪われる。信用倍率は0.91倍、日証金では貸借倍率0.02倍で、やはり逆日歩がついた状態だ。両銘柄が直近1カ月で築き上げたチャートは決算内容や株価指標、あるいは成長性といったファンダメンタルズのアプローチからは決して答えが出てこない。需給のなせる業である。
あすのスケジュールでは、10月の景気ウォッチャー調査、6カ月物国庫短期証券の入札、30年物国債の入札など。海外では10月の中国消費者物価指数(CPI)、10月の中国卸売物価指数(PPI)、ポーランド中銀の政策金利発表、9月の米卸売在庫・売上高、米10年債の入札など。なお、ウィリアムズ・NY連銀総裁が講演を行う予定。また、国内主要企業の決算発表では、キリンホールディングス<2503>、住友大阪セメント<5232>、日産自動車<7201>、いすゞ自動車<7202>、三井不動産<8801>などが予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年11月08日 18時20分