市場ニュース

戻る
 

【特集】フォーカス企業研究① REVOLUTION、買収事業加速で収益倍増へ

 米大統領選でトランプ元大統領が勝利し、その政策への期待と不安を背景に一進一退の動きを続ける日米の株式相場。そんなマクロ経済の動きの中で、変革を進め、個性の光る企業は少なくない。この連載では、気鋭のジャーナリスト・山中遼三郎が投資家から注目されつつある上場企業を取り上げていく。

新藤弘章社長
 第1回で取り上げるのは、マンション開発などを主力とする東証スタンダード市場上場のREVOLUTION<8894>。2023年12月に経済産業省出身の新藤弘章氏が社長に就任し、経営刷新を進めたことで耳目を集めつつある。同社は24年に不動産のクラウドファンディングなどをグループで手掛けるWeCapital(東京・港区、松田悠介社長)を子会社化し、金融取引のセキュリティー技術を開発するGVE(東京・中央区)とも提携。「不動産テック」に乗り出し、24年10月期の売上高は前の期の2倍以上に膨らんだ。株主優待制度を導入するなど相次いで新たな施策を打ち出し、株価も上昇。東証プライム市場への移行を視野に入れ、売上高500億円超を目指すという新藤氏に、今後の見通しや戦略を聞いた。

(2025年1月9日取材)


―― 23年後半の経営陣刷新後、REVOLUTIONの業績が大幅に改善し、低い水準だった株価も上昇しました。背景を教えて下さい。

新藤弘章社長(以下、新藤):経営刷新後に株式市場で評価していただいた背景には、3つの要因があると考えています。1つ目は23年12月に私が社長に就任後、赤字会社を黒字転換させたことです。24年10月期の販売費及び一般管理費(販管費)を前の期に比べて6割削減した一方、売上高も2.3倍に拡大したことで収益構造が大幅に改善しました。

 2つ目はM&A戦略を導入したことです。その一環として成長期待の高いWeCapitalを子会社化するなど不動産テック事業を取り入れたことで、将来の収益拡大への期待が高まりました。想定通りに業績が上昇しなかった場合、買収対価を売り手に返還させる「逆アーンアウト条項」を含む契約の内容も投資家に評価されているようです。

 最後に、情報開示を積極的に行っていることです。以前は経営陣が情報開示に消極的で、情報開示が少なかった印象でした。新経営陣になってからは、週1回は取締役会を開き、経営戦略の実行が早くなりました。適時開示などで情報を迅速に出すようにもなりました。順調であれば、今期中に東証プライム市場への移行を申請したいと考えています。

―― 株高の背景には、御社が24年10月に発表した株主優待の新設もあると思います。基準日の時点で2000株以上を保有し、かつ2回以上連続で株主名簿に記載または記録された株主に「QUOカードPay」6万円分(年間で12万円分)を贈呈するという内容でしたが、継続性はあるのでしょうか。

新藤:継続する予定です。旧経営陣の経営から脱却し、無駄な販管費を大幅に削減しました。今期以降はM&Aを軸に積極的に売上高を拡大する方向です。利益もさらに伸ばせるとみており、十分に株主優待の原資を確保できます。

―― 24年12月20日に発表した決算では、25年10月期の売上高見通しは前の期の9倍以上に当たる514億円超でした。これは上場企業の増収見通しの中でもトップクラスの増益率です。一方で最終損益は9億円超の赤字になる見通しです。

新藤:WeCapitalの買収や不動産事業の拡大などにより、売上高は大幅に増加する見通しです。一方でM&Aの積極化で「のれん代」の償却費用を15億円計上するため、最終損益は赤字になる見通しです。のれん償却費控除前の営業損益は黒字を確保しており、本業の収益力は引き続き健全です。例えば、WeCapital社単体では今期(WeCapital社の決算期は25年9月期)の営業利益は約12億3000万円となる見通しで、引き続き堅調な成長が期待されます。

 日本の会計基準では企業を買収する際、買収額が純資産額を上回る分を「のれん代」として計上する必要があります。国際会計基準(IFRS)など海外の会計基準では「のれん代」の定期償却の義務はありません。このため、当社でも27年10月期からIFRS適用を目指しています。また、26年10月には並行開示としてのれん代の償却が無い状態でのIFRSの決算書を開示できる見込みです。

●2025年10月期の「のれん償却費控除前の営業損益」は黒字を確保
[百万円]24年10月期25年10月期増減額増減率
売上高5,56651,47245,906824.8%
販管費6834,9794,296629.0%
 うち、のれん償却費31,5001,49749900.0%
営業利益33342-291-
のれん償却費控除前
営業利益
3361,5421,206358.9%
親会社株主に帰属する
当期純利益
296-984-1,280-

―― 株価上昇の理由の1つにM&A戦略を挙げていました。背景や目的を教えて下さい。

新藤:旧経営陣下での事業内容は、不動産の買い取り転売のみでした。これでは良い案件があるかどうかが収益動向を左右し、安定性に欠けます。M&A事業を取り入れることで収益源を増やすことができ、市場関係者からの評価も高まっていると考えています。M&Aは、私が経産省やマッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンなどで培ったノウハウや人脈を生かせる面もあり、成功の確率を高められます。

―― M&A戦略の一環であるWeCapitalの買収は、今期以降の収益にどんな影響を与えますか。

新藤:WeCapitalが連結対象になることで、25年10月期以降の売上高の押し上げが見込めます。同社は23年9月のサービス開始から24年11月末までで案件数は141件、償還数は45件、調達金額は368億円。会員数は2万7961人にのぼりました。今後も高成長が見込まれており、当社の収益拡大に寄与する見通しです。

 事業面でも相乗効果が出ています。銀行融資だけでは足りないような大規模な資金が必要な不動産事業でも、WeCapitalグループのクラウドファンディングを通じて資金を調達できるようになりました。一方、当社の専門知識を活用して不動産クラウドファンディングの対象物件の正確な目利きや出口戦略を策定できるようになります。

●WeCapitalはグループで手掛けるクラウドファンディングでリゾート開発などを支援(沖縄・水納島)
【タイトル】

―― 24年12月に93億円の資金を投じて、不動産賃貸サービスのREVO GINZA1とREVO GINZA2(東京・渋谷)を買収すると発表しました。買収の狙いは。

新藤:GINZA1とGINZA2は、ともに都心一等地に複数の優良物件を持っている不動産SPC(特別目的会社)です。特に銀座の不動産に関しては銀座の大通りに近い角地となっており、昨今の不動産市況を考えると大幅なバリューアップを望める状況です。これらの不動産を売却して、純利益を積み上げていくのが狙いです。

―― 24年11月には金融取引のセキュリティー技術を開発するGVEとの業務提携を発表しました。GVEは「デカコーン」(企業価値が100億ドル以上の未上場企業)と言われています。 

新藤:GVEの技術を使うことで、当社がグループで展開するクラウドファンディングのセキュリティーを強化できます。デジタル通貨関連など新たな事業にもつなげられ、当社の収益拡大に貢献すると考えています。もともとGVEには発行済み株式の4%を出資していましたが、今後は出資拡大も検討しています。仮にGVEが上場すれば、含み益の拡大や株式譲渡益も見込めます。

―― M&Aが自社の収益拡大や企業価値向上につながるというわけですね。今後は具体的にどんな案件を対象にしていきますか。また、御社の買収についての考え方を教えて下さい。

新藤:不動産に関わる法人向けの債権回収業と銀行に注目しています。WeCapitalの事業に関連するデジタル通貨などフィンテック関連の企業にも関心を持っています。買収した企業は、当社のグループのクラウドファンディングで資金調達し、成長を加速させることもできます。

 当社のM&Aの基本方針は、互いの経営の独立性を尊重し、相乗効果を出すために協力していくことです。経営陣も基本的には継続してもらうことにしています。

―― 米国ではトランプ政権が誕生し、日本国内では日銀が金融引き締めの方向に舵を切り始めています。今後の金利動向の見通しと、それが収益に与える影響をどう考えていますか。

新藤:日銀の植田和男総裁は、金融政策の変更について国内賃金や米国の経済政策などを見極めた上で慎重に判断する考えを示しています。このため日本国内では緩やかな金利上昇はあるものの、急激な変化はないと考えています。

 金利上昇による当社の業績への影響は大きくないとみています。利回りが小さく、長期間かけて利益を回収する不動産賃貸業の場合は借入金の金利が上がると大きく利益が減ってしまいますが、当社の事業は利幅の大きい不動産の短期の買い取り転売が中心です。また、グループのWeCapitalが携わるクラウドファンディング事業は金利が上がれば収益がむしろ拡大します。こうした意味で当社は金利が変動した場合もリスクヘッジができていると考えています。

【記者・山中の視点】新社長の元官僚・コンサルの経験が飛躍の糧に

 東京大学工学部を卒業し、経済産業省、ハーバード大学、マッキンゼーを経てREVOLUTION社長に就任した新藤氏。官僚時代には電力システム改革の法令改正などに従事。コンサル時代には製薬関連のクロスボーダーM&Aや、その後の統合作業であるPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)にも携わった。

 企業価値の推移の予測や競合比較、M&Aの契約書の逆アーンアウト条項の設定――。社長就任後、赤字会社の収益構造を変革して黒字転換させ、新たな成長戦略を急速に進める手腕は、これまでの経験で培われてきた。

 実は官僚時代、出身地である栃木県の知事に立候補しようと考えた時期もある。そんな新藤氏が民間企業の経営者に転じたのは「国や周りの人たちの生活を良くしたいと思っても、政治だけでは限界がある。ビジネス界から規制緩和などを働きかけて社会変革や貢献をする方が現実的だ」と思ったからだ。

 「2025年10月期は売上高500億円超、株価1000円を目指す」「東証プライム市場移行を目指す」。新藤氏はインタビューで力を込めた。24年11月にX(旧ツイッター)の個人アカウントを立ち上げたところ、フォロワー数が1日で1000人を超えるなど、個人投資家の同氏への注目度は高い。経済官僚やコンサル時のノウハウを企業経営という実践で生かしたことで、さらにスキルを磨いた34歳が、赤字会社の黒字転換に続く新たな目標を達成できるのか。市場関係者は目を凝らしている。

●筆者略歴
山中遼三郎(やまなか・りょうざぶろう)
慶応義塾大学卒。大手新聞社で経済記者としてマーケットや政治、省庁担当を歴任し、現在はジャーナリスト。


※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。


株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均