【特集】日本が主導権握る、次世代エネルギー「レーザー核融合」で輝く妙味株6選 <株探トップ特集>
日本の得意分野であるレーザー技術を使う「レーザー核融合」は、CO2を発生させない夢のエネルギーである「核融合発電」を実現させることができる。
―夢の「核融合発電」実現に向けて邁進、産学からの技術開発が活発化へ―
未来の社会を支えるエネルギー、その担い手は太陽光や風力といった再生可能エネルギーだけではない。「レーザー核融合」は、超高出力レーザーを用いて燃料を圧縮し、一瞬の閃光から莫大なエネルギーを生み出す夢の技術だ。次世代エネルギーとして期待されており、人類が挑むカーボンニュートラル社会実現の切り札とみる向きもある。実はこの分野において、日本が主導的立場にいることを知らない人々も少なくないだろう。「レーザー核融合」の実力を探った。
●レーザーを活用し瞬時に核融合反応を引き起こす
2025年に大きく飛躍する可能性が指摘されている領域の一つがやはり「人工知能(AI)」だ。テスラ<TSLA>を率いるイーロン・マスク氏やオープンAIのサム・アルトマン氏をはじめとして、早ければ25年にも人間並みの能力を持つ「汎用人工知能(AGI)」が出現すると予測されている。一方で、こうしたAI領域で日本勢はやや後塵を拝している感も否めない。ただし、日本には世界的に期待されている技術がある。それが「レーザー核融合」だ。
レーザー核融合は、球状の燃料ペレットを高出力レーザーで圧縮し、瞬時に核融合反応を引き起こす技術である。この方法により、莫大なエネルギーを生み出し、これを用いて発電につなげる。主な特徴は、炉の設計自由度が高く材料面での不安が少ないほか、放射性物質であるトリチウムの使用量が少ないため、安全性や効率性で優れているとされる。また、ピーク電力に柔軟に対応できる点も強みで、次世代エネルギー源として期待されている。
●ノーベル賞受賞者の中村修二氏が開発に注力
この技術で日本が注目されている大きな理由の一つが、核融合の研究開発を手掛ける米ブルー・レーザー・フュージョン(Blue Laser Fusion)の中村修二氏の存在だ。同氏は、青色発光ダイオード(LED)の開発に関する功績で14年にノーベル物理学賞を受賞した人物であり、その名を記憶している投資家は多いだろう。その彼が今まさにレーザー核融合の実用化に向けてまい進している。24年末に掲載された日本経済新聞の記事で、同氏は「レーザー分野は日米だけで50%のマーケットシェアがある。日米が組めば世界最強だ」と述べている。また、昔から核融合について研究を続けてきたのが大阪大学だ。同大学から誕生したスタートアップのエクスフュージョン(EX―Fusion、大阪府吹田市)も既に実証実験に向けて、プロジェクトチームを発足。24年度内に大気中でレーザーを当てる実験、25年度には真空中で高出力レーザーを当てる実験へと段階を進める計画のようだ。24年11月には、浜松ホトニクス <6965> [東証P]がレーザー核融合向けでは世界最高輝度となる励起用半導体レーザー(LD)モジュールの開発に成功したと発表した。産学の両面から技術開発が進展中である。
●CO2をほとんど排出しないエネルギー源として期待
AIを中心とした技術や社会の進化に伴い、データ量は増大し、電力需要もますます肥大化していくことが予想されている。一方、既にもはや後戻りができないティッピングポイント(分岐点)を超えているという見方もある地球環境のために、経済成長を止めてでも環境対策を推進しなければならない危険な状況に今や人類は直面しているとの指摘も聞かれる。近年、急速に目にすることが多くなった脱成長論(主義)もそうした大きな文脈が影響しているだろう。ただ、レーザー核融合が実用化されれば、二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないエネルギー源として、既存の化石燃料ベースの発電からの大規模な置き換えが期待される。レーザー核融合では、レーザーに強みを持つ日本が世界を救う可能性があるのだ。以下では有力銘柄を取り上げた。
●ホトニクスやJテック・C、東洋炭素などに注目
浜松ホトニクス <6965> [東証P]~光電子増倍管など光技術を応用した各種製品を手掛ける。24年11月には半導体レーザー(LD)モジュールの製造精度を飛躍的に高める独自技術を確立し、レーザー核融合向けでは世界最高輝度のLDモジュールを開発した。これにより、世界中で進められているレーザー核融合の研究が加速すると見込んでいる。
神島化学工業 <4026> [東証S]~窯業系外装材・内装材を主体に化成品(酸化マグネシウムなど)や透明セラミックスを手掛ける。23年12月には大阪大学レーザー科学研究所と「神島化学工業先端レーザーセラミックス共同研究部門」を設立。レーザー核融合などに利用されるパワーレーザーの開発でカギとなる次世代のレーザーセラミックスの研究開発が進められている。
ジェイテックコーポレーション <3446> [東証P]~大阪大学と理化学研究所の研究成果を実用化した放射光施設用X線集光ミラーを手掛けている。高精度形状のX線ミラーで必要とされる技術は、レーザー核融合商用炉の実現に向けた技術の研究・開発に不可欠である。22年には核融合スタートアップのEX―Fusionとの間で技術提携を行った。
東洋炭素 <5310> [東証P]~黒鉛の持つ耐熱性に加えて、高強度などの特長を持つ等方性黒鉛を手掛ける高機能カーボンの専業。核融合炉における重要機器であるダイバータをターゲットに開発したCCコンポジット材や高密度、高強度、高熱伝導を追求して開発された等方性黒鉛は、核融合エネルギーの早期実用化に貢献できる材料である。
日本ゼオン <4205> [東証P]~24年11月に、スタートアップ企業への投資活動を行う米子会社のZeon Venturesを通して、高温超伝導マグネットを用いた次世代エネルギー「核融合発電開発」を手掛ける米スタートアップのType One Energyに投資した。
TOWA <6315> [東証P]~子会社TOWAレーザーフロントは、レーザー溶接機・ファイバーレーザー加工機・レーザー発振器などを手掛けている。レーザー核融合研究の支援と関連技術の産業応用、産業の技術協力を推進するための会員組織「レーザー核融合技術振興会」の幹事会社の1社であり、ホトニクスも幹事を務める。
なお、伊藤忠商事 <8001> [東証P]とソフトバンク <9434> [東証P]は24年3月、米スタートアップのBlue Laser Fusionに出資。フジクラ <5803> [東証P]は同年10月に同社初の5キロワット超シングルモード・ファイバーレーザーの実運用を開始し、EX―Fusionへ提供する予定である。
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