【特集】ADワークスグループ Research Memo(2):収益不動産販売事業とストック型フィービジネスを両輪として展開
ADWG <日足> 「株探」多機能チャートより
■事業概要
ADワークスグループ<2982>の事業セグメントは収益不動産販売事業、ストック型フィービジネスの2つのセグメントに区分されている。また、連結子会社は国内5社、米国8社の計13社で構成されている。国内には収益不動産販売事業等を展開する(株)エー・ディー・ワークス、PM業務を行う(株)エー・ディー・パートナーズ、リノベーション工事や改修工事を行う(株)スミカワADD、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)事業やFA(ファイナンシャル・アレンジメント)事業を行う(株)エンジェル・トーチ、クラウドファンディングを活用した資金調達等を行う(株)ジュピター・ファンディングがあり、米国には収益不動産販売事業、PM事業、不動産開発販売事業を行う子会社及びそれらを統括する事業統括会社がある。
収益不動産販売事業とは、中古賃貸マンションやオフィス・商業ビル等を仕入れ、法的・物的コンディションを整えたうえで、リノベーションなどのバリューアップを施してから販売する事業で、同社の主力事業である。仕入物件の対象エリアは中古マンションやオフィス等の賃貸需要が旺盛な大都市圏が中心となる。1棟当たり10億円前後の中小規模のマンションやオフィスビルを仕入れ、バリューアップ後に事業法人や個人富裕層等に販売している。こうした物件は入居率が高く賃料収入が安定しているほか値下がりリスクも相対的に低いため、投資運用対象として手掛けるのに手頃である。また、2018年から不動産小口化商品「ARISTO」シリーズの販売を開始しており、顧客層の拡大にも取り組んでいる。ここ最近は、商業ビルを仕入れる機会も増え、取り扱う物件も大型化しているほか、京阪神や名古屋、博多など地方の主要都市部にもエリアを広げつつある。また、米国ではロサンゼルス市内の物件を対象に収益不動産販売事業を行っているほか、2020年にはハワイにも子会社を新設し、賃貸不動産物件の開発販売事業に着手している。
ストック型フィービジネスは、販売用不動産を売却するまでに得られる賃料収入のほか、同社が保有・売却した物件に関するPM収入(建物の維持・管理受託、賃料・管理料徴収、テナント誘致等によるフィー)、既存顧客に対する売買サポートフィー、不動産に関する相続対策等のコンサルティング収入、受託不動産の保守・修繕工事等で構成されている。同セグメントの利益の大半を占める賃料収入は、収益不動産残高が積み上がれば連動して増えるため、同社にとって安定収益源となっている。
そのほか、新規事業として子会社のエンジェル・トーチでCVC事業を2021年から、FA事業を2022年からそれぞれ立ち上げている。同社では、グループの成長を加速度的に進めるため、新規事業の育成に取り組んでおり、先進的な技術を持つベンチャー企業などへの投資を行っている(2024年6月までに合計8社に出資)。また、FA事業では、先進的なファイナンスサービスに取り組む複数のベンチャー企業に出資し、これら企業が提供するサービスや同社が自社で行ってきたライツ・オファリング※による資金調達ノウハウ等を組み合わせることで、資金調達面で課題を抱えているスタートアップ企業や未上場企業、上場企業に対して最適な資本政策の提案を行う資金調達支援サービスを行っている。
※ ライツ・オファリングとは、発行会社以外のすべての株主に対して、その保有する株式数に応じて新株予約権を無償で割当て、株主が当該新株予約権を行使することで資金を調達する手法。
これまでの実績として、地域新聞社<2164>に対する株式取得及び資本政策助言(ライツ・オファリング)、及びポエック<9264>に対する資本政策助言(ライツ・オファリング)がある。今後、専門人材を増強しながらFA事業を育成する考えである。2千兆円とも言われている個人金融資産のうち、現預金の占める比率が5割以上と言われており、優良な投資運用先を求めている個人投資家のニーズは大きい。これらニーズと企業の資金調達ニーズを先進的なファイナンスサービスでつなげていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
提供:フィスコ