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【特集】桂畑誠治氏【強気になり切れない東京市場、9月相場の展望は】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―日経平均3万9000円台回復後に軟化、上昇一服ムードも―

 週明け2日の東京株式市場は日経平均株価が朝方は大きく買い優勢で始まったものの、その後は伸び悩む展開となり、後場に入るとマイナス圏に沈んだ。しかし、取引終盤に切り返し再び上昇に転じた。寄り付きでフシ目の3万9000円台を回復したのだが、目先達成感からの売りに押し戻されるなど強気相場入りにはまだ若干の距離があるようだ。果たして9月相場はどういう展開となるのか。株式市場や日本経済についての分析・予想で定評のある市場関係者2人に今後のマーケットの展望を聞いた。

●「米株主導で強調展開、4万円台乗せも視野」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京市場は目先やや上値の重い展開となっているが、9月相場は総じて強い動きが期待できそうだ。今週はスケジュール的には週末6日に発表予定の8月の米雇用統計にマーケットの関心が集まる。この内容次第で来週以降の相場の方向性が決まる可能性もあり、注意が必要だが、比較的堅調な内容になるとみている。最近は米経済の失速懸念が相場の重荷となっていただけに、強い指標が出た方が株価にはポジティブに働く。非農業部門の雇用者数の伸びについては、7月がハリケーンの影響などで低迷を余儀なくされたが8月は持ち直す公算が大きく、雇用者数の増加は加速しそうだ。一方、失業率については、若干の改善が事前コンセンサスとなっているが、個人的には横ばいとみている。更に平均時給についてはやや増加基調が強まるとの見方で、総括して米経済のソフトランディング期待を高める結果となることが予想される。株式市場には強気を促す材料となりそうだ。

 一方、金融政策については9月の0.25%利下げはほぼ確実視されている状況にある。FOMCでは年内に9月を含めあと2回の利下げが行われるとの見方がメインシナリオでその場合は年内に0.5%の引き下げ、また利下げ3回となる可能性も十分にあり、その場合は0.75%となる。また、米経済の失速懸念が再燃した場合は一会合で0.5%幅の利下げを決定するケースも考えられ、最大で年内1.0%の可能性も残されている。

 基本的には米経済の底堅さが意識される一方、FRBによる金融政策の緩和路線は続くことで米国株市場にも強い追い風が意識されることになろう。また日銀が利上げにやや慎重となっている現状で、為替のドル安・円高進行はそれほど進まないと考えている。そうしたなか、日本株も9月は米株市場に追随する形で上値を指向しそうだ。向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては3万6800~4万1000円のレンジを想定するが、可能性としては4万円台乗せからもう一段の上値をうかがうような強調展開を想定する。

 物色対象としては、まず半導体製造装置半導体素材関連などの銘柄群は押し目買いで対処できると考えている。また、小売りや飲食などのインバウンド関連株も継続的に追い風が期待できる環境にあり、継続注目しておきたい。このほか、企業のデジタルシフトが進むなか、システム開発などを手掛けるデジタルトランスフォーメーション(DX)関連にも上値余地がありそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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