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【市況】小型株シフトと非M7底値拾いで上昇堅持 (4) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】


●個別銘柄

 ○電気自動車EVメーカーのテスラ<TSLA>は、納車台数の減少率が低下したと発表しました。テスラの株価は7月に24.5%上昇し、年初来でもプラスに転じて3.8%上昇となりました。マグニフィセント・セブン のすべての銘柄が年初来で上昇しています。

 ○航空機メーカーのボーイング<BA>は、墜落事故により合計で346人が死亡した前737MAXの刑事事件(2018年と2019年)において有罪を認め、2億4400万ドルの罰金を支払い、今後3年間で4億5500万ドルを安全性とコンプライアンスプログラムの改善に充てることで合意しました。

 ○エネルギー企業のシェル<SHEL>は、シンガポールの製油所売却とオランダのバイオ燃料プラントに関連し、最大20億ドルの税引後減損を見込んでいると発表しました。

 ○アマゾン<AMZN>のプライムデー(2日間)は、売上高が2023年のプライムデー比で11%増加し、過去最高の142億ドルを記録しました。

●配当金

 ○米国の銀行は、米連邦準備制度理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)での良好な結果を受けて、配当を増額し、自社株買いプログラムの期間と規模を拡大しました。

  ⇒主だったところでは、バンク・オブ・アメリカ<BAC>、シティグループ<C>、ゴールドマン・サックス・グループ<GS>、JPモルガン・チェース<JPM>、モルガン・スタンレー<MS>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>などが配当金を増額しました。

 ○2024年7月の配当支払額は前年同月比9.0%増となりました。6月は同15.1%増、5月は同1.5%増でした。年初来では5.3%増加しています。

  ⇒7月の配当支払金は前年同月の1株当たり4.29ドルから4.68ドルに増加し、支払総額も前年同月の358億1000万ドルから392億6000万ドルに増加しました。

 ○2024年7月は、増配が32件、配当開始が1件、減配が0件で、配当停止は0件でした。2023年7月は、増配が32件、配当開始が2件で、減配が3件、配当停止は0件でした。

  ⇒年初来では、増配が214件、配当開始が6件、減配が9件、配当停止が0件となっています。2023年の同期間は、増配が221件、配当開始が7件、減配が15件で、配当停止は4件でした。

  ⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。

 ○7月の増配率の中央値は、6月の2.62%から5.66%に上昇しました(5月は6.12%でした)。年初来では6.67%(6月末時点は6.78%、5月末時点は6.78%)となっています。7月の平均増配率は6月の8.46%から9.24%に上昇し(5月末時点は7.05%)、年初来では8.48%(6月末時点は8.32%。いずれも2倍以上になった銘柄を除く)となりました。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年の配当に関して、予想は増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%を上回る見通しです。この予想では、アルファベット<GOOG>による新たな配当(年間配当額を86億6000万ドル押し上げ)、米銀による最近の増配(FRBがストレステストを通じて認可)、米連邦公開市場委員会(FOMC)による2024年第3四半期末時点での利下げ開始に加えて(注:9月18日のFOMCによる政策決定までに、第3四半期の配当の全てが発表され、ほとんどが支払い済みとなるうえ、第4四半期の配当支払いへの影響は限られる見通し)、景気の大幅な減速は回避され、インフレ再燃への懸念は限定的(だが高まりつつある)で、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)ことを織り込んでおり、2024年の実際の1株当たり配当支払額は、2023年から約6%増加すると予想しています(2023年は前年比5.05%増、2022年は同10.80%増)。これにより2024年の現金配当は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。

  ⇒注目すべき点として、2024年第3四半期と2024年第4四半期の配当支払い額は、過去最高の更新が予想されます(現在の過去最高は2023年第4四半期)。

●インデックス・レビュー
◇S&P 500指数

 7月のS&P500指数 は月初に日中と終値での史上最高値を更新し、5500と5600の大台を突破しました。しかし、経済指標から消費支出がなお好調なこととならんでインフレの鈍化が示され、9月の0.25%の利下げの予想確率が100%に近づく中でも、下落基調に転じました。市場では資金を大型株から小型株に移す動きが生じました。背景には、小型株は利下げと支出動向の継続からより大きな恩恵を受けるとの認識に加え、時価総額の大きいパフォーマンス上位銘柄のリスク/リターンのトレードオフには大きく偏りがあるとの見方がありました(こうした見方からパフォーマンス上位銘柄は下落)。その後、S&P500指数は月初からの上昇分を失い(小型株は上昇)、前月比の騰落率はマイナス圏に落ち込みましたが、最終的に、「その他493銘柄」に対する底値拾いの動きが広がり、株価は値を戻しました。S&P500指数は月の最終日に、FRB(の利下げ予想)を材料に1.58%上昇しました。結論としてS&P500指数は7月に1.13%の上昇を記録しましたが、相場の変動が大きくなり、短期トレーダー(とデイトレーダー)にとって大きな損益を生じる機会となりました。

 S&P500指数は7月前半に終値での史上最高値を7回更新しました(年初来では38回、2023年はゼロ)。最高値を最後に更新したのは7月16日(5667.20。日中の史上最高値は5669.67)で、S&P500指数は同日末時点で、月初来3.79%、年初来18.90%上昇していました。しかし7月17日以降、市場の認識と経済の状況が変化し、大型株から小型株へと投資先を移す動きが、特に情報技術セクター(マグニフィセント・セブンを含む)で顕著となりました。その後、S&P500指数は4.72%下落し、月初からの騰落率はマイナス圏に落ち込見ました(1.12%下落)。しかし、再び買い戻す動きが強まり(底値買いも見られました)、市場は押し上げられました。S&P500指数は月の最終日に1.58%の力強い上昇を記録しました(市場に優しいFRBに対する期待感も一役買いました)。最終的に7月のS&P500指数は1.13%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス1.22%)となり、2024年に入って2度目の月間騰落率がマイナスとなる事態を回避しました(4月の騰落率は4.16%の下落、配当込みのトータルリターンはマイナス4.08%)。なお、6月は3.47%上昇(同プラス3.59%)、5月は4.80%上昇(同プラス4.96%)で、過去3ヵ月間の騰落率は9.66%上昇となりました(同プラス10.05%)。

 年初来では15.78%上昇となり(同プラス16.70%)、年率換算では28.26%上昇(同プラス29.99%)に相当します。また、年初来で値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差が広がり、値上がり銘柄数が363銘柄、値下がり銘柄数が137銘柄となりました(6月末時点の年初来では、値上がり銘柄数が301銘柄、値下がり銘柄数が200銘柄)。

 7月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は6月の0.77%から0.95%に上昇しました。年初来では0.84%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。7月の出来高は、6月の前月比1%増加の後に、同9%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では3%減少となりました。2024年7月までの12ヵ月間では前年同期比7%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。

 7月は1%以上変動した日数は22営業日中6日(上昇が4日、下落が2日)となりました。S&P500指数は2022年12月以来となる1日で2%以上の下落(7月24日に2.32%下落)を記録しました。6月は1%以上変動した日数は19営業日中1日(上昇が1日、下落はなし)でした。年初来では、1%以上変動した日数は27日(上昇が18日、下落が9日)で、2%以上変動した日数は2日(上昇は1日[2月22日の2.11%上昇]、下落は1日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。7月は22営業日中9日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。対して6月は1%以上の変動が19営業日中4日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、42日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は2日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

 7月は値上がり銘柄数が増加し、値下がり銘柄数を上回りました。7月の値上がり銘柄数は364銘柄(平均上昇率は8.19%)と、6月の201銘柄(同5.20%)から増加しました。7月の10%以上上昇した銘柄数は116銘柄(同14.89%)と、6月の29銘柄(同15.67%)から増加し、6銘柄(6月はゼロ)が25%以上上昇しました。一方、7月の値下がり銘柄数は139銘柄(平均下落率は5.63%)と、6月の301銘柄(同4.28%)から減少しました。7月の10%以上下落した銘柄数は22名柄(同16.58%)と6月の21銘柄(同15.76%)から増加し、4銘柄が25%以上下落しました(6月は1銘柄)。

年初来では、値上がり銘柄数は363銘柄(平均上昇率は17.32%)で、238銘柄(同23.75%)が10%以上上昇し、79銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は137銘柄(平均下落率は11.69%)で、64銘柄(同19.54%)が10%以上下落し、12銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト


※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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